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その後

チビリコリスと一緒3

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 ホカホカと湯気を出したチビリコリスがバスローブに包まれて、魔王の寝室のベッドで寝落ちしていた。

「姉上が連れて帰ると思ったのだがな…気に入っていたし」

 目の前にはスヤスヤと寝こけている幼女。
 あどけない寝顔だ。
 これは大人になっても変わっていない。
 リコリスは魔王の隣では、全てを信じ切ってあどけない寝顔で眠るのだ。

 おかげで初めのうちは何度右手を恋人にした事か…。
 
 いや、例え己の右手でも恋人扱いはしたくない。
 愛人でも却下だ。
 デリバリーの金銭の遣り取りがある心の友わない関係位でも恐れ多い。

 魔王は自分の右手を眺めた。
 右手だ右手だ。
 自家発電は浮気じゃない。
 この手は恋人でも愛人でも金で買った女の物では無い。

 リコリスを守るために、触れるために存在する手だ。
 
「ならコレはリコリスの手と同意義だな」

 うんうん、と魔王は納得した。
 リコリスがチビになったので欲が発散できない。
 本当なら今日はリコリス(成人)と濃厚に愛し合う予定のはずだったのに…。
 育ての親兼義理の姉が恨めしい。

「う、ん…マオー、さま……」

 リコリスが魔王を寝言で呟くと、へにゃりと頬を緩ませた。
 正直物凄い愛らしい。
 知り合ったばかりで何も分からない所に来て不安だらけだろうに、リコリスは魔王の事を呼んで頬を緩ますのだ。
 庇護欲が高まったのも仕方ない。

 すっかり魔王の昂ぶりはなりを潜めていた。

 赤い髪をさらさらと梳く。
 夕食時にはパサつきがあった髪だが、ミヤハルに綺麗に手入れして貰った髪はサラサラのツヤツヤになっていた。
 何時ものリコリスの髪だ。
 夕日色の綺麗な赤い髪。
 
 肌はがさついていたが、こちらもしっかり磨かれて滑々の肌になっている。

 パサパサの髪にがさついた肌。
 魔王が初めてあった頃のリコリスと同じだ。
 一切手入れされていない、そんな時間が無かった髪と肌だ。
 初めてリコリスに出会ったことを思い出す。
 もう1年以上前だ。
 懐かしく感じるのも仕方が無いだろう。

 バスローブからちょい、と出てる手はぷくぷくしている。

 その手を握り締める。

「!」

 その手は見た目の通り柔らかく…なかった……。
 5歳の少女の手なのに指は節くれているし肌も荒れている。
 掌にもいっぱいの豆が出来ている。

 あぁそうだった。
 
 この子供はこの時期戦いに明け暮れていたのだ。
 そう思うと一気に心が熱くなった。

 幸せな思い出を与えてやりたい。
 
 今ここにいるリコリスは幼児化しているだけで、過去のリコリスが存在している訳では無い。
 それでもこの幼い少女を笑顔にしてあげたいと思った。

「また1から餌付けだな」

 誰を見るよりも、優しい目で。
 リコリス専用の優しい眼差しで、小さな子供の体が冷えないようそっとシーツを被せてやるのだった。
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