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第2章
35話
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「お茶会お招き有難うございます、サンネ令嬢」
魔法衣の裾を摘まんでドレスでするような礼をする。
今日の魔法衣は色とりどりの赤です。
薄い色合いの処もあれば濃い紅の色もあります。
法衣の下にはズボンも履いています。
下着を気にしていては足捌きもままならないですから。
赤の魔法衣。
《武神》として戦う決意の表れです。
舐めた真似してくれたこと。
私の大切なものに傷をつけようとしたこと。
許すつもりはありません。
「今日はドレスでは無いのですね?お茶会に法衣はどうかと思われますが?」
サンネ令嬢が扇で口元を隠しクスクス笑います。
「魔法衣は正装と魔国の法律でちゃんと認められています。魔法衣でお茶会に来るのは何のおかしい事でもないのでは?それとも動きにくいだけの防御力のないドレスで来ないと不味い理由でも存在しましたか?」
「ぐっ、い、いえ。魔法衣で構いませんわ」
扇の下で歯ぎしりをしているのかギリ、と小さな音が聞こえた。
すみませんね、私聴覚も並みの獣の数倍あるんですよ。
貴方たちの囁き声も嘲笑も歯軋りも、扇で隠しても全て聞こえるんですよね。
「今日はうちのメイドのシーナの妹であるラナ・フランシス子爵令嬢までお誘いくださったとか?」
「えぇ、偶々出かけた先のカフェで会いまして、お姉さんのシーナさんの話で盛り上がりまして。ラナさんはお話上手で是非お茶会に来ていただきたいと思いましたの」
「シーナも子爵でしかない自分の妹がサンネ公爵令嬢にお招き頂けるなんてと、気持ちを昂らせていました。生憎用事があったのでシーナは今回連れて来れなかったのですが。そのラナ嬢は今何処に?」
「今、御不浄ですわ」
「間に合わなかったら大変ですからね」
ベキィッ!
サンネ令嬢が扇をへし折った。
ビーズの言葉に激怒したようですね。
実際、サンネ令嬢は間に合わなくてとんでもない失態おかしていますからね。
額に青筋が浮いております。
目の瞳孔が縦長になっております。
そう言えばケスティング家は一応竜種何でしたっけ?
まぁ本来の竜種は古代種並みの希少種なので魔族にも敬まれられる存在です。
僅かとは言え竜種の血が入っているケスティング家が公爵の地位があるのは頷けます。
まぁ薄い血ですけどね。
見た分で竜種の血を引いているのが分かる特徴など興奮すると縦長になる瞳孔ぐらいです。
また言ったのがビーズだった事も怒りを買ったのでしょう。
何せサンネ令嬢が脱糞をする最後の一手間を加えたのはビーズですから。
ビーズのアルカイックスマイルが余計にサンネ令嬢を煽っている気がします。
と言うか、煽ってますよね確実に。
「それにしても意外でしたわ!もっと人を連れてくると思われましたのに!?」
「たかがお茶会に人をゾロゾロ連れて行くのは可笑しくないでしょうか?それとも私が大勢の者を連れてくるとお思いになった理由でも?」
「い、いえ。忙しい時期ですから……」
怯みましたね。
今、シーナ達が【隠密】の術で既に邸に入り、ラナ嬢を探しています。
では私は見つけて救い出したら本格的に暴れましょう。
それまでは口撃させて貰います。
私、本当に怒っているのですよ?
本当に、本当に今スケジュールがおしているのです!
こんな女に付き合っている暇なんて無いんですよ!
眠る時間削って式当日、目の下にクマ出来たらどうしてくれるつもりですか!!
「そう、忙しい時期なんです。明後日には私と魔王の結婚式がありますから。魔王もとても楽しみにしてくれているのです。嬉しい限りですね♪」
ニッコリ微笑んでやります。
えぇ、それは幸せそうに。
「そ、そうですの……ギリギリ」
歯軋り聞こえてますよ?
「私のウェディングドレス姿も楽しみだと毎夜寝る前に話すんですよ。魔王も可愛い所がありますよね♡」
「マイヨ…ネルマエ……ギリギリ」
片言になって来てますよサンネ令嬢。
「魔王は寝る前は必ず深いキスを求めてきて本当に困ったものです。そんなことしちゃったら、ねぇ…素直に寝れなくなっちゃうじゃないですか?」
「コチラノセキニ、オツキクダサイ…ギリギリギリギリィッ」
奥歯砕けていませんか?
歯並びは大切ですよサンネ令嬢。
歯のかみ合わせで運動能力変わってくるんですから。
歯並びが悪いものに良い騎士や冒険者は存在しないのですよ。
まぁ、勧められた席に着席します。
特に椅子に仕掛けは無い様なので。
【鑑定眼】を持つビーズが何の合図も送ってこないと言う事は安全なのでしょう。
「相変わらず美味しいお茶ですね。今日は”隠し味”も”スパイス”も”薬味”も入っていないのですね?あれ、刺激的で私は嫌いじゃありませんでしたよ、私は」
優雅にティーカップに口を付けて紅茶を飲みます。
そして「私は」を強調してやりました。
ガシャンッ!
折角の高いティーセットなのですから優雅に扱いましょうよ。
割れちゃいますよ?
しかも波打つ紅茶がテーブルクロスを汚していますし。
さて、ここまで時間を稼けば大丈夫ですね。
シーナ達が動きやすいよう、コチラに人を集めましょう。
「で、誰がバックに付いているのですかサンネ令嬢?面倒臭いやり取りは無しにしましょうね」
「ひぃっ!!」
ちょっと殺気を視線に籠めただけで、そんなに怯えられるのも不快ですね。
ようやく自分が”どんな生き物”を相手にしているか、ちょっとは理解できましたかね?
「思ったよりサバサバした小娘じゃねーか。まぁ俺は嫌いではないぜ?魔王から奪うならどうせなら上物がよいからなぁ!!」
部屋の奥に居た男が姿を現しました。
【隠遁】で隠れていたみたいですね。
いくら私が魔術を得意としないと言えど、こうも気配をうまく隠されるとは。
思った以上に実力者のようです。
だからと言って負けるつもりはありませんよ!
私は三日後、バージンロードを魔王と歩く約束をしているんですから!!
魔法衣の裾を摘まんでドレスでするような礼をする。
今日の魔法衣は色とりどりの赤です。
薄い色合いの処もあれば濃い紅の色もあります。
法衣の下にはズボンも履いています。
下着を気にしていては足捌きもままならないですから。
赤の魔法衣。
《武神》として戦う決意の表れです。
舐めた真似してくれたこと。
私の大切なものに傷をつけようとしたこと。
許すつもりはありません。
「今日はドレスでは無いのですね?お茶会に法衣はどうかと思われますが?」
サンネ令嬢が扇で口元を隠しクスクス笑います。
「魔法衣は正装と魔国の法律でちゃんと認められています。魔法衣でお茶会に来るのは何のおかしい事でもないのでは?それとも動きにくいだけの防御力のないドレスで来ないと不味い理由でも存在しましたか?」
「ぐっ、い、いえ。魔法衣で構いませんわ」
扇の下で歯ぎしりをしているのかギリ、と小さな音が聞こえた。
すみませんね、私聴覚も並みの獣の数倍あるんですよ。
貴方たちの囁き声も嘲笑も歯軋りも、扇で隠しても全て聞こえるんですよね。
「今日はうちのメイドのシーナの妹であるラナ・フランシス子爵令嬢までお誘いくださったとか?」
「えぇ、偶々出かけた先のカフェで会いまして、お姉さんのシーナさんの話で盛り上がりまして。ラナさんはお話上手で是非お茶会に来ていただきたいと思いましたの」
「シーナも子爵でしかない自分の妹がサンネ公爵令嬢にお招き頂けるなんてと、気持ちを昂らせていました。生憎用事があったのでシーナは今回連れて来れなかったのですが。そのラナ嬢は今何処に?」
「今、御不浄ですわ」
「間に合わなかったら大変ですからね」
ベキィッ!
サンネ令嬢が扇をへし折った。
ビーズの言葉に激怒したようですね。
実際、サンネ令嬢は間に合わなくてとんでもない失態おかしていますからね。
額に青筋が浮いております。
目の瞳孔が縦長になっております。
そう言えばケスティング家は一応竜種何でしたっけ?
まぁ本来の竜種は古代種並みの希少種なので魔族にも敬まれられる存在です。
僅かとは言え竜種の血が入っているケスティング家が公爵の地位があるのは頷けます。
まぁ薄い血ですけどね。
見た分で竜種の血を引いているのが分かる特徴など興奮すると縦長になる瞳孔ぐらいです。
また言ったのがビーズだった事も怒りを買ったのでしょう。
何せサンネ令嬢が脱糞をする最後の一手間を加えたのはビーズですから。
ビーズのアルカイックスマイルが余計にサンネ令嬢を煽っている気がします。
と言うか、煽ってますよね確実に。
「それにしても意外でしたわ!もっと人を連れてくると思われましたのに!?」
「たかがお茶会に人をゾロゾロ連れて行くのは可笑しくないでしょうか?それとも私が大勢の者を連れてくるとお思いになった理由でも?」
「い、いえ。忙しい時期ですから……」
怯みましたね。
今、シーナ達が【隠密】の術で既に邸に入り、ラナ嬢を探しています。
では私は見つけて救い出したら本格的に暴れましょう。
それまでは口撃させて貰います。
私、本当に怒っているのですよ?
本当に、本当に今スケジュールがおしているのです!
こんな女に付き合っている暇なんて無いんですよ!
眠る時間削って式当日、目の下にクマ出来たらどうしてくれるつもりですか!!
「そう、忙しい時期なんです。明後日には私と魔王の結婚式がありますから。魔王もとても楽しみにしてくれているのです。嬉しい限りですね♪」
ニッコリ微笑んでやります。
えぇ、それは幸せそうに。
「そ、そうですの……ギリギリ」
歯軋り聞こえてますよ?
「私のウェディングドレス姿も楽しみだと毎夜寝る前に話すんですよ。魔王も可愛い所がありますよね♡」
「マイヨ…ネルマエ……ギリギリ」
片言になって来てますよサンネ令嬢。
「魔王は寝る前は必ず深いキスを求めてきて本当に困ったものです。そんなことしちゃったら、ねぇ…素直に寝れなくなっちゃうじゃないですか?」
「コチラノセキニ、オツキクダサイ…ギリギリギリギリィッ」
奥歯砕けていませんか?
歯並びは大切ですよサンネ令嬢。
歯のかみ合わせで運動能力変わってくるんですから。
歯並びが悪いものに良い騎士や冒険者は存在しないのですよ。
まぁ、勧められた席に着席します。
特に椅子に仕掛けは無い様なので。
【鑑定眼】を持つビーズが何の合図も送ってこないと言う事は安全なのでしょう。
「相変わらず美味しいお茶ですね。今日は”隠し味”も”スパイス”も”薬味”も入っていないのですね?あれ、刺激的で私は嫌いじゃありませんでしたよ、私は」
優雅にティーカップに口を付けて紅茶を飲みます。
そして「私は」を強調してやりました。
ガシャンッ!
折角の高いティーセットなのですから優雅に扱いましょうよ。
割れちゃいますよ?
しかも波打つ紅茶がテーブルクロスを汚していますし。
さて、ここまで時間を稼けば大丈夫ですね。
シーナ達が動きやすいよう、コチラに人を集めましょう。
「で、誰がバックに付いているのですかサンネ令嬢?面倒臭いやり取りは無しにしましょうね」
「ひぃっ!!」
ちょっと殺気を視線に籠めただけで、そんなに怯えられるのも不快ですね。
ようやく自分が”どんな生き物”を相手にしているか、ちょっとは理解できましたかね?
「思ったよりサバサバした小娘じゃねーか。まぁ俺は嫌いではないぜ?魔王から奪うならどうせなら上物がよいからなぁ!!」
部屋の奥に居た男が姿を現しました。
【隠遁】で隠れていたみたいですね。
いくら私が魔術を得意としないと言えど、こうも気配をうまく隠されるとは。
思った以上に実力者のようです。
だからと言って負けるつもりはありませんよ!
私は三日後、バージンロードを魔王と歩く約束をしているんですから!!
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