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第2章

【番外】とある魔族の復讐者side

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 今の魔王が王の座について早1900年になる。
 100歳其処らで魔王の座に就いた気味の悪い餓鬼だ。
 だが俺も餓鬼なぞに負けるつもりは無かった。
 
 知力も武力も魔力も現魔王に俺は劣っていない。
 だが魔国の高位魔族と市民はあの餓鬼が魔王の座に座ることを選んだ。

 俺の何が餓鬼に劣っていたか?
 いや、何も劣っていない。
 ならば何故俺は魔王になれなかった?

 答えは簡単だ。

 餓鬼は”古代種”のミヤハルの養い子だったからだ。
 あのロリババアはやたらと民衆に人気がある。
 高位魔族からの信頼も厚い。
 絶世の美貌を誇りながらもソレを鼻にかける事は無い。
 気さくな所が良いらしい。

 俺から言わせればアレは化け物だ。
 いったい何億年も生きている奴が気さくで入れる時点でおかしいんだ。
 普通の精神では気が狂う。
 長寿の魔族でも億の年月を生きれば精神崩壊をはたすだろう。

 それをあのロリババアは何億年、いや何十億年かも知れない年月を生きて平常心を保っていられる。
 俺はあれ以上の化け物を見た事がない。

 あのババアの養い子と聞いた時、また化け物が現れたのかと思った。
 その心配は杞憂に終わった。

 餓鬼は普通の魔族だ。
 どちらかと言えば化け物に近いのは兄の方だろう。
 あの化け物を番に選ぶ時点で頭が可笑しいとしか言いようがない。

 だが化け物に近い兄は魔王選出に台頭しなかった。
 あくまで補佐で良いらしい。
 少しでもあの化け物と過ごす時間を長く取りたいらしい。
 やはり兄の方が化け物寄りだと思う。

 だが魔王選出で何名かが候補に上げられた時、多数のモノが餓鬼を指示した。

 餓鬼があの化け物の養い子だからだ。
 そして”穏健派”であったからだろう。

 正直俺には”穏健派”の心理が分からない。
 何故力あるものが世界を纏め上げてはいけないんだ?
 俺は俗にいう”過激派”だ。
 獣人族も人族も精霊も妖精も魔族には敵わない。
 弱いモノを強いモノが纏め上げて何が悪い?

 強者がトップに座る方が世界平和じゃないか?

 その為に一時起きる戦争など杞憂することでは無く、むしろ戦争を起こして魔族の力の強さを他の多種族に分からせるべきだろう?

 その考えは貴族連中も同じだ。
 尊い血ほど上に立つべきであり支配者であるべきだ。

 だから生まれも分からないようなオークションで売られていた餓鬼如きが魔王の座に座るのは間違っている。

 その点、俺は公爵の家に生まれついたエリートだ。
 貴族は高位魔族が居ないと言われるが、俺の母は高位魔族の父と結婚し俺を生んだ。
 高位魔族の父親の魔力と貴族の母の尊い血が俺には流れている。

 俺こそが魔国を収めるのに相応しい。

 貴族たちは皆そう言っている。
 俺が魔王になったら貴族たちの発言権ももっと取り立てよう。
 貴族中心の魔国にしよう。
 力が強いだけで下賤な血しか流れていない、高位魔族共が大きな顔をしていること自体がこの国の間違いだ。

 1900年待った。
 
 餓鬼は意外と隙が無く魔王の座を下すことが出来なかった。
 だがここに来て餓鬼は自ら弱点を曝け出した。

 人間の花嫁を迎えるのだと言う。

 《殺さずの武神》とか呼ばれて国民からの支持も厚いが、所詮は人間だろう?

 なら餓鬼の大切なものを奪ってやるとしよう。
 番も、魔王の座も。

 幸い貴族は俺の意見を聞くので人間の女を魔王から引き離す事もできる。
 まぁ令嬢たちがしかけた陳腐な罠には引っかからなかったらしいが。
 だが今回は気合の入れ方が違う。

 《脱糞令嬢》の一族が本気で人間の女の始末に乗り出したと言う。

 結婚式まで後4日だ。
 精々浮かれていれば良い。
 その日があの餓鬼にとって忘れられない地獄の日へと変えてやろう。

 度数の高いアルコールを喉の奥に流し込み、復讐者は暗い笑みを浮かべた。
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