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第2章
【番外】魔王side4~デート編中盤~
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お子様ランチの後にデザート代わりのクリームソーダ。
エメラルド色の液体をリコリスがキラキラした目で見ている。
「早く飲まないとアイスが溶けるぞ」
リコリスの微笑ましい行動に魔王も穏やかな笑みを浮かべる。
今日は理性さんが頑張ってくれているらしい。
ストローに口をつけ液体を吸い込む。
「ふわぁ、お口でシュワシュワします!それにとても甘いです!」
王宮では炭酸は出てこない。
普段リコリスが飲んでいるのは果実水だ。
ソーダほど甘く炭酸の刺激があるものは初体験だった。
少し溶けだしたバニラのアイスクリームをスプーンですくい、小さな口に入れる。
足をパたパタさせる。
「冷たくて甘い!」
「急いで食べると頭が痛くなるぞ?」
「うっ!」
言うが否やリコリスが頭を押さえる。
助言が遅かったようだ。
「頭が痛いです…」
「冷たいものを急に食べるとそうなる」
クスリと魔王が笑う。
その優しい笑みにリコリスも頬を赤くする。
「魔王も子供の頃同じ失敗しましたか?」
「よくなったな」
「じゃぁお揃いです。私だけかと思って少し恥ずかしかったです」
「あぁお揃いだな」
可愛い。
語彙が無いが可愛い。
むくりと本能が頭をもたげそになるが理性が見事な右フックで地に沈めてくれた。
「舌が緑色だな」
「えぇっ、本当ですか!?」
手鏡を取り出しリコリスがベェ、と舌を鏡で確認する。
何だその可愛い仕草は!
今度は理性が本能にジャーマンスープレックスをきめた。
有難う理性。
「魔王、残り飲みませんか?」
リコリスがソーダを見て魔王に尋ねる。
「口に合わなかったか?」
「いえ、とても美味しいです。でも私だけ舌が緑なのは嫌なので魔王の舌も緑にしちゃいたいと思いました」
クスクスと笑い魔王は残りのソーダを飲む。
舌が緑色に染まる。
「お揃いだな」
「お揃いです!」
ニコニコと笑いあう2人。
(甘酸っぱい!陛下も王妃さんもピュア過ぎじゃない~!?見てるこっちが恥ずかしくなるでしょーが!)
トレイで顔を隠しながらレストランの制服を着た青年が体を震わせていた。
ちなみにチェリーはリコリスが美味しく頂きました。
:::
「さて次なのだが姉上からチケットを貰ってな。興味があるなら行こうと思うのだが?」
魔王が胸ポケットからチケットを取り出しリコリスに見せる。
とたんリコリスの目がキラキラと輝いた。
「そ、それは奇妙な冒険の原画展じゃないですかっ!行きたいです!行きましょう魔王!!」
「では少し腹ごなしに歩きながら向かうか」
「はいっ!」
途轍もなく上機嫌なリコリスと手を繋ぐ魔王。
初めてリコリスから手を繋いでくれた。
魔王の心にも喜びが満ちる。
義姉、本当にありがとう。
本能は理性にローリングソバットを喰らって沈んでいた。
魔王はこの美術館には何度か来たことがある。
だがまさか漫画の原画展までしているとは知らなかった。
癖が強いが個性的で魅力のある絵だ。
ポージングが独特で、様々な色を使った原画は確かに芸術的価値がある。
リコリスが夢中になってキャラクターの話や物語の魅力を語ってくれる。
リコリスがこれほど饒舌になるのは珍しい。
本当に好きなのだろう。
今度から漫画も良く読むようにしようと魔王は決心した。
原画を見終えるとグッズが販売してある。
リコリスが目をキラキラさせていたので何度も手に取るTシャツを購入する。
小さな子供みたいなキャラクターが黒いシャツに白線で描かれている。
何でも漫画家のキャラクターの能力が具現化したものらしい。
それと一緒に犬のヌイグルミも購入する。
この辺りは原作未読の魔王には詳しく分からないが、そんなに好きなのだったら装飾品を送るより良いだろうと思いラッピングして貰いリコリス渡した。
「貰って良いんですか!?」
「今日のデートの記念だ」
グッズをギュッ、と胸に抱えリコリスが魔王の胸にポフリと頭を預ける。
「どうした?」
「嬉しいです。魔王大好きです!」
頑張れ理性。
コブラツイストから逃れようとする本能を何とか締め上げる理性を魔王は心の底から応援した。
「ハル、このカメは買うのか?」
「折角やからリコリスちゃんとお揃いのTシャツも買お。色違いがええなぁ。あ、エントともお揃いのTシャツかおうな~」
デートに夢中な魔王とリコリスの2人には聞きなれた声に気づくことは無かった。
:::
「あとはこのブックIFによろうと思うのだが?」
「漫画が、漫画がいっぱいあります!!」
荷物は魔王が持っている。
流石に手を繋いでウロウロはしない。
少し寂しくはあるがマナー的に仕方ない。
「欲しい本はあるのか?」
「ん~興味あるのはいっぱいあるんですけど、殆ど王宮の図書室に置いてるやつが多いです。ここでは買い物なくても大丈夫です」
「あ、お客様。最近は少女漫画も人気ありますよ。是非読んでみて下さいね」
長い髪をひっ詰めた、眼鏡とマスクの女性定員が声をかけてきた。
「少女漫画はあまり読んだことないです」
「恋愛もの良いですよ!デートの参考にもなりますよ!」
「じゃぁ次のデートのために今度読んでみます。有難うございます店員さん」
テトテトと魔王の処に行き報告するリコリス。
魔王は司書からリコリスは少年漫画しか読まないと聞いていたので、正直少女漫画で乙女心が育たないだろうかと考えていた所だったのだ。
どう切り出そうかと思っていたが良い仕事を店員がしてくれたみたいだ。
良い店だ。
またリコリスと来ることにしよう。
魔王の中でブックIFの好感度が上がった。
(リコリス様ちょろ過ぎます!でも可愛い、尊い…)
2人が出ていくのを見守って、女性店員は膝から崩れ落ちた。
(帰ったらⒷとⒸとⒹにも報告しないといけませんわ!)
:::
「ん~?」
「どうしたリコリス?」
「さっきの店員さんの声、聞き覚えがあるなぁと思いまして」
「世の中似ている顔が3人ほどいるそうだから声が似ているくらい良くあるのではないか?」
「そうですね。でも魔王に似ている人なんてエントビースドさんくらいしかいないと思いますよ。魔王みたいな格好良い人が3人も居たら大変です!」
ニパー、とリコリスが無邪気な笑顔を浮かべる。
魔王の理性の本日1番の極め技は三角締めであったとか無かったとか。
エメラルド色の液体をリコリスがキラキラした目で見ている。
「早く飲まないとアイスが溶けるぞ」
リコリスの微笑ましい行動に魔王も穏やかな笑みを浮かべる。
今日は理性さんが頑張ってくれているらしい。
ストローに口をつけ液体を吸い込む。
「ふわぁ、お口でシュワシュワします!それにとても甘いです!」
王宮では炭酸は出てこない。
普段リコリスが飲んでいるのは果実水だ。
ソーダほど甘く炭酸の刺激があるものは初体験だった。
少し溶けだしたバニラのアイスクリームをスプーンですくい、小さな口に入れる。
足をパたパタさせる。
「冷たくて甘い!」
「急いで食べると頭が痛くなるぞ?」
「うっ!」
言うが否やリコリスが頭を押さえる。
助言が遅かったようだ。
「頭が痛いです…」
「冷たいものを急に食べるとそうなる」
クスリと魔王が笑う。
その優しい笑みにリコリスも頬を赤くする。
「魔王も子供の頃同じ失敗しましたか?」
「よくなったな」
「じゃぁお揃いです。私だけかと思って少し恥ずかしかったです」
「あぁお揃いだな」
可愛い。
語彙が無いが可愛い。
むくりと本能が頭をもたげそになるが理性が見事な右フックで地に沈めてくれた。
「舌が緑色だな」
「えぇっ、本当ですか!?」
手鏡を取り出しリコリスがベェ、と舌を鏡で確認する。
何だその可愛い仕草は!
今度は理性が本能にジャーマンスープレックスをきめた。
有難う理性。
「魔王、残り飲みませんか?」
リコリスがソーダを見て魔王に尋ねる。
「口に合わなかったか?」
「いえ、とても美味しいです。でも私だけ舌が緑なのは嫌なので魔王の舌も緑にしちゃいたいと思いました」
クスクスと笑い魔王は残りのソーダを飲む。
舌が緑色に染まる。
「お揃いだな」
「お揃いです!」
ニコニコと笑いあう2人。
(甘酸っぱい!陛下も王妃さんもピュア過ぎじゃない~!?見てるこっちが恥ずかしくなるでしょーが!)
トレイで顔を隠しながらレストランの制服を着た青年が体を震わせていた。
ちなみにチェリーはリコリスが美味しく頂きました。
:::
「さて次なのだが姉上からチケットを貰ってな。興味があるなら行こうと思うのだが?」
魔王が胸ポケットからチケットを取り出しリコリスに見せる。
とたんリコリスの目がキラキラと輝いた。
「そ、それは奇妙な冒険の原画展じゃないですかっ!行きたいです!行きましょう魔王!!」
「では少し腹ごなしに歩きながら向かうか」
「はいっ!」
途轍もなく上機嫌なリコリスと手を繋ぐ魔王。
初めてリコリスから手を繋いでくれた。
魔王の心にも喜びが満ちる。
義姉、本当にありがとう。
本能は理性にローリングソバットを喰らって沈んでいた。
魔王はこの美術館には何度か来たことがある。
だがまさか漫画の原画展までしているとは知らなかった。
癖が強いが個性的で魅力のある絵だ。
ポージングが独特で、様々な色を使った原画は確かに芸術的価値がある。
リコリスが夢中になってキャラクターの話や物語の魅力を語ってくれる。
リコリスがこれほど饒舌になるのは珍しい。
本当に好きなのだろう。
今度から漫画も良く読むようにしようと魔王は決心した。
原画を見終えるとグッズが販売してある。
リコリスが目をキラキラさせていたので何度も手に取るTシャツを購入する。
小さな子供みたいなキャラクターが黒いシャツに白線で描かれている。
何でも漫画家のキャラクターの能力が具現化したものらしい。
それと一緒に犬のヌイグルミも購入する。
この辺りは原作未読の魔王には詳しく分からないが、そんなに好きなのだったら装飾品を送るより良いだろうと思いラッピングして貰いリコリス渡した。
「貰って良いんですか!?」
「今日のデートの記念だ」
グッズをギュッ、と胸に抱えリコリスが魔王の胸にポフリと頭を預ける。
「どうした?」
「嬉しいです。魔王大好きです!」
頑張れ理性。
コブラツイストから逃れようとする本能を何とか締め上げる理性を魔王は心の底から応援した。
「ハル、このカメは買うのか?」
「折角やからリコリスちゃんとお揃いのTシャツも買お。色違いがええなぁ。あ、エントともお揃いのTシャツかおうな~」
デートに夢中な魔王とリコリスの2人には聞きなれた声に気づくことは無かった。
:::
「あとはこのブックIFによろうと思うのだが?」
「漫画が、漫画がいっぱいあります!!」
荷物は魔王が持っている。
流石に手を繋いでウロウロはしない。
少し寂しくはあるがマナー的に仕方ない。
「欲しい本はあるのか?」
「ん~興味あるのはいっぱいあるんですけど、殆ど王宮の図書室に置いてるやつが多いです。ここでは買い物なくても大丈夫です」
「あ、お客様。最近は少女漫画も人気ありますよ。是非読んでみて下さいね」
長い髪をひっ詰めた、眼鏡とマスクの女性定員が声をかけてきた。
「少女漫画はあまり読んだことないです」
「恋愛もの良いですよ!デートの参考にもなりますよ!」
「じゃぁ次のデートのために今度読んでみます。有難うございます店員さん」
テトテトと魔王の処に行き報告するリコリス。
魔王は司書からリコリスは少年漫画しか読まないと聞いていたので、正直少女漫画で乙女心が育たないだろうかと考えていた所だったのだ。
どう切り出そうかと思っていたが良い仕事を店員がしてくれたみたいだ。
良い店だ。
またリコリスと来ることにしよう。
魔王の中でブックIFの好感度が上がった。
(リコリス様ちょろ過ぎます!でも可愛い、尊い…)
2人が出ていくのを見守って、女性店員は膝から崩れ落ちた。
(帰ったらⒷとⒸとⒹにも報告しないといけませんわ!)
:::
「ん~?」
「どうしたリコリス?」
「さっきの店員さんの声、聞き覚えがあるなぁと思いまして」
「世の中似ている顔が3人ほどいるそうだから声が似ているくらい良くあるのではないか?」
「そうですね。でも魔王に似ている人なんてエントビースドさんくらいしかいないと思いますよ。魔王みたいな格好良い人が3人も居たら大変です!」
ニパー、とリコリスが無邪気な笑顔を浮かべる。
魔王の理性の本日1番の極め技は三角締めであったとか無かったとか。
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