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第2章

【番外】ミヤハルside

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※格好良い魔王様はいません
 スパダリ魔王様がお好きな方は読まない方が良いと思われます(;^ω^)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「誰が無駄に年くってるて?」

 【ゲート】をくぐるとソコには怒りの形相の義姉がいた。

「姉上、デートプランの案を一緒に考えて欲しいのですが」

「無視かい!」

 リビングで優雅にお茶を飲んでいる姉の向かいに勝手に座り魔王は使用人にお茶を頼んむ。

「人ん家尋ねてきていきなりお茶を頼むとか図々しいで。そんな風に育てた覚えは無いんやけどな」

「それより姉上、今度リコリスと王都でデートをすることになったのですが!」

「だから無視かい!」

「姉上ならデートの知識も豊富でしょう。何せ長生きですから。その癖中身は子供なので情緒が育ちきっていない子供が喜ぶデートプランも思いつきますよね?」

 ミヤハルが顔を手で覆って大きなため息を吐く。
 魔王と同じ癖である。
 いや、魔王がミヤハルと同じ癖と言う方が正しい。

「あ~もうええわ。リコリスちゃんに夢中過ぎて暴走しとるな自分。で、誰の発言でウチのとこ来たんや?」

「オウマです」

「アレのせいかい。ホンマ皆して可愛げなく育ちよってからに。育ての親を何やと思うとるんや」

「あ、この茶菓子美味しいですね。シェフまた腕を上げたようですね。リコリスに手土産に貰って行って良いですか?」

「何処迄マイペースやねん自分!!」
 
 フォンダンショコラを食べながら魔王が使用人に後で菓子を包むよう指示を出している。
 ニコニコと承諾する使用人も使用人だ。
 この家で育った魔王にとっては使用人たちは親にも等しい。
 子供のころ随分とお世話されたのだ。
 実家に帰ってきた気分でくつろいでいるようなものだ。

「まぁええわ。んでリコリスちゃんとのデートやって?自分はどんなプラン考えてたんや?」

「王立図書館を回りドレスや装飾品を選び花束を渡して夜景が綺麗なレストランでディナーをしようかと」

「デートの発想が童〇やな。自分千年以上前に〇貞捨てとる筈やのに何で思考が童〇なんや…」

「筆おろしは十代の時に済んでいますが?」

「体や無くて思考の事を言うてるんや…まぁ自分にとってはリコリスちゃんが初恋みたいなもんやしな。デート経験0やし仕方もあらへんか……」

「デートなど時間の無駄と考えていた時期が我にもありました」

「そやな~自分、勉学と魔術と剣術大好きやったもんな。女の子には興味も示さずひたすらエントと鍛錬にはげんでいたなぁそう言えば」

「兄上は姉上を振り向かせたくて必死でしたからね。我も兄上に負けないよう励みましたが、どれも兄上には敵いませんでした」

「エントは規格外の天才やからな。その分感情面がごっそり抜けとるから人の上に立つには自分の方が向いとるわ。それに自分かて普通のもんからしたらかなりの天才やで。百余年で魔王になったもんなど今まで存在せえへんかったからな」

「ですが、恋人1人を満足させるデートプランも練れないなど男としては恥です」

 憂鬱そうに魔王はため息を吐く。
 これはかなり落ち込んでいるらしい。
 自分が考えたデートプランを2人から即却下を喰らったのが相当ダメージだったのだろう。

「そやな、リコリスちゃんは食べるのが好きやから美味しいもん食べさせるんはいい案やと思うで?」

「では高級ランチを出すレストランを!」

「高級な料理は王宮で食べれるやろが。そうやのうて今まで食べたことない美味しいもん食べさせてやれ、言うとんねん」

「美味しいもの……」

 魔王がゲンドウポーズで考え込む。
 魔王はエントビースドとオークションで売られたが、当時エントビースドは3歳。魔王に至っては乳飲み子だ。
 そしてすぐにミヤハルに買われているので食べ物で不自由をしたことが無い。
 不味いモノを食べたことが無い魔王にとって、美味しいものと言うのは上手く想像がつかないのだ。

「リコリスちゃんは家庭の味を知らんからなぁ。庶民的なレストランで子供が好きそうなランチとか喜ぶ思うで?お子様ランチでもええくらいや。自分が子供の頃たまに行くレストランあったやろ?自分もそこのお子様ランチ好きやったやないか。自分が美味しいと思えるもん食べさせてあげるほうが高級ランチよりリコリスちゃんは喜ぶはずやで?」

 確かに王宮では庶民的な料理は出てこない。
 
 オムレツ
 ハンバーグ
 スパゲッティ
 チキンライスに乗せられた小さな旗

 想像すると確かにリコリスが喜びそうだと思った。

「あとリコリスは本が好きなのですが王立図書館はダメなのですよね?」

「ん~確かリコリスちゃんは漫画好きなんやろ?漫画を多く扱ってる本屋なんて喜ぶんやないか?そう言えばタイミングよくリコリスちゃんが喜びそうなチケット手に入ったんや。ウチがリコリスちゃん誘おうか思ってたけど、なんやったら今回のデートで行ってみぃ」

「……これでリコリスが喜ぶんですか?」

「ウチの感では9割以上の確率で喜ぶで」

「謹んで拝借いたします」

「まぁウチがデートコース全部決めるのも違う気がするし、これでも読んで後は自分で考えてみ。あ、無駄に高い装飾品なんて買うたらあかんで。リコリスちゃん宝石に興味ないんやから」

「では何をプレゼントすれば…」

「それくらい自分で考え!ほら、もう用ないやろ?とっとと王宮戻って仕事片付けや」

「はい、お世話になりました。それでは帰ってからデートプランをしっかり練りたいと思います。これ以上ないくらいリコリスを楽しませてあげたいです」

「おん、その気持ちがあれば大丈夫や。変に格好つけず、まずは自分の楽しいと思うもの進めたったらええ。後当日はあんまり目立たない格好で行きや。2人とも目立つ容姿しとるんや。せめて髪と瞳の色は変えときや~」

 ひらひらと手を振って魔王を【ゲート】から追い払う。
 魔王はしっかりと【魔国王都ウォーカー】とフォンダンショコラを持って王宮へと帰って行った。
 その雑誌に端が折り込まれたページがある事に読んでいれば気づくだろう。
 ミヤハルがリコリスを連れて行ってやろうと思っていた店のページには目印をつけておいたのだ。

「それにしてもあの子があんな夢中になるやなんてなぁ。恋は人を変えるもんやわ♪」

 2人の初々しいデートを想像すると顔がにやける。
 ミヤハルは当然デートを尾行する気満々である。
 おそらくリコリスの御付のメイドも1人2人くらいは尾行する気でいるかもしれない。
 全く楽しい事になったものだとミヤハルは笑みを浮かべ、まだ食べている途中であったフォンダンショコラにフォークを突き刺した。
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