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第1章
【番外】愉快犯side
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ミヤハルは魔国国王の義姉ある。
魔王には3つ年上の兄がいるのだが、その兄の番がミヤハルだ。
そしてややこしいがミヤハルは魔王と兄の育ての親でもある。
兄は育ての親であるミヤハルを異性として愛し妻に娶った。
魔王にとってはミヤハルはあくまで育ての親なので家族愛以上の感情は持ち合わせていない。
それでも育てて貰った恩は忘れた事がない。
何時だって感謝はしているが、ミヤハルは基本的に”楽しければ良し”の性格なので国王となった今でも魔王はミヤハルに引っ掻き回される事も少なくない。
ミヤハルにとっては魔王は未だに護ってやらなくてはいけない存在なのだ。
事実、戦闘能力では魔王はミヤハルに劣る。
ミヤハルは次期魔王候補であったが面倒臭いと魔王に全てを押し付けて自由な身分で面白おかしく生きている。
そんなミヤハルの最近の趣味は魔王の観察だ。
ここ2カ月半、魔王の行動は今までの”絶対零度の君主”と呼ばれるには余りにも正反対だった。
何せ朝から自分で菓子を作る事を日課にしている。
午前中に仕事を終わらせ【ゲート】で何処かに出かけてしまう。
そうして夕餉時に帰宅しまた仕事をする。
ワーカーホリックが随分と改善された事は良いのだが、魔王の変わりっぷりに臣下たちは驚きを隠せない。
だがミヤハルは知っている。
今、魔王が何に夢中なのかを。
伊達に育ての親はしていないのだ。
そうなって来ると気になるのが魔王が夢中になっている者の存在である。
”血染めの戦姫”は高位魔族の中でも人気が高い。
歴史上初の《殺さずの武神》だからだ。
バトルジャンキーの魔族たちは《武神》が果ての塔に幽閉されるまで毎日のように戦闘を仕掛けに行っていた。
リコリスの寝不足の原因は自分の行動にも原因の一端はあった訳だ。
まぁそれは責められるものでは無いが。
そんな《武神》大好き高位魔族たちは己たちのアイドル(パンダ的な意味だ)を迫害したバンリウ帝国は許せないものになっている。
バンリウ国が魔物や魔族に攻め込まれているのはひとえにバンリウ帝国の王家と神殿のせいであった。
《武神》に頼り切りで自分たちは何もしてこなかったにもかかわらず、個人の都合で《武神》を蔑ろにした。
《武神》であるリコリスが”殺さず”を貫いていた為一般市民にはあまり被害を出さない様にしているが。
そんな魔国のアイドル(あくまでもパンダだ)は戦い以外でどんな性質を持っているのか?
養い子の魔王が夢中になっているのだ。
面白い事が大好きなミヤハルが興味を示さないはずがなかった。
魔王も育ての親であり義理の姉であるミヤハルには素直にリコリスの事を話す。
何ともまぁ甘酸っぱい青春を送っているモノだ。
魔王の余りののろけっぷりに、ミヤハルは本当にコレは自分が育てた存在と同一人物なのかを疑いたくもなった時期がある。
それにしても2人の進展は余りにも遅い。
魔族は寿命が長い分気長だがそれにしても魔王は10年も前からリコリスに好意を抱いているのだ。
それがキスの1つもままならないとは。
これでは面白さが半減してしまうではないか!
次の日から魔王が本を差し入れに持って行く日にはミヤハルは敢えて魔王が選ばないであろう本をこっそり忍ばせたりした。
暫くして魔王の様子が変わった。
見た限り普段通り冷徹な君主だ。
しかし何と言うかオーラがピンク色なのだ。
”絶対零度の君主”は何処に消えたのであろうか?
ミヤハルはこれは自分が忍び込ませた本で面白い方向に《武神》の情緒が成長してきているのだと感づいた。
魔王も誰かが要れた本の影響でリコリスが女としての情緒を芽生えさせてきていると兄とミヤハルにご機嫌で報告してきた。
ならばミヤハルがやる事は1つだけだ。
リコリスに恋情と言う感情を教え込む。
リコリスが魔王に絆されてきているとは言え、まだ恋愛感情では無い事は魔王の話からもうかがい知れる。
しかしミヤハルの目から見て余りにも2人はもどかしい。
可愛い養い子兼義弟だ。
ココで自分が一肌脱がなくてだれがする?
何よりこんな楽しそうな事、他の誰かに譲る気にはなれない。
そうと決まればミヤハルの行動は早かった。
まず家臣たちに明日、魔王がお菓子を作った後は仕事漬けにして外出する時間を作れないようにするよう指示を出した。
魔王が怒るのなら自分の名と兄の名を出しても良いと付け加えた後で。
次に王宮の料理長にも指示を出した。
ココでも自分の名を出してよい事を伝えておいた。
そして最後に自分の愛しい番に協力を仰ぐ。
ミヤハルは戦闘能力こそ高いものの出力特化型なので緻密な魔法は苦手としている。
果ての塔に【ゲート】を繋ぐような緻密な魔法構成を編むことは出来ない。
なのでミヤハルとは逆に緻密な魔法を得意とする番に【ゲート】の魔法を頼むことにした。
自分の弟で遊ぶ気満々の番を止めようとは兄は思わなかった。
兄は弟より番に利を置いている。
魔王も兄とリコリスを天秤にかけたらリコリスを選ぶだろう。
似たもの兄弟な訳である。
ミヤハルは明日、ようやく養い子の想い人をこの目で見れるのだと楽しそうに番に語る。
番である兄はそんなミヤハルを優しい目で見つめながらベッドの中で抱きしめた。
その瞳は弟である魔王とよく似ていた。
魔王には3つ年上の兄がいるのだが、その兄の番がミヤハルだ。
そしてややこしいがミヤハルは魔王と兄の育ての親でもある。
兄は育ての親であるミヤハルを異性として愛し妻に娶った。
魔王にとってはミヤハルはあくまで育ての親なので家族愛以上の感情は持ち合わせていない。
それでも育てて貰った恩は忘れた事がない。
何時だって感謝はしているが、ミヤハルは基本的に”楽しければ良し”の性格なので国王となった今でも魔王はミヤハルに引っ掻き回される事も少なくない。
ミヤハルにとっては魔王は未だに護ってやらなくてはいけない存在なのだ。
事実、戦闘能力では魔王はミヤハルに劣る。
ミヤハルは次期魔王候補であったが面倒臭いと魔王に全てを押し付けて自由な身分で面白おかしく生きている。
そんなミヤハルの最近の趣味は魔王の観察だ。
ここ2カ月半、魔王の行動は今までの”絶対零度の君主”と呼ばれるには余りにも正反対だった。
何せ朝から自分で菓子を作る事を日課にしている。
午前中に仕事を終わらせ【ゲート】で何処かに出かけてしまう。
そうして夕餉時に帰宅しまた仕事をする。
ワーカーホリックが随分と改善された事は良いのだが、魔王の変わりっぷりに臣下たちは驚きを隠せない。
だがミヤハルは知っている。
今、魔王が何に夢中なのかを。
伊達に育ての親はしていないのだ。
そうなって来ると気になるのが魔王が夢中になっている者の存在である。
”血染めの戦姫”は高位魔族の中でも人気が高い。
歴史上初の《殺さずの武神》だからだ。
バトルジャンキーの魔族たちは《武神》が果ての塔に幽閉されるまで毎日のように戦闘を仕掛けに行っていた。
リコリスの寝不足の原因は自分の行動にも原因の一端はあった訳だ。
まぁそれは責められるものでは無いが。
そんな《武神》大好き高位魔族たちは己たちのアイドル(パンダ的な意味だ)を迫害したバンリウ帝国は許せないものになっている。
バンリウ国が魔物や魔族に攻め込まれているのはひとえにバンリウ帝国の王家と神殿のせいであった。
《武神》に頼り切りで自分たちは何もしてこなかったにもかかわらず、個人の都合で《武神》を蔑ろにした。
《武神》であるリコリスが”殺さず”を貫いていた為一般市民にはあまり被害を出さない様にしているが。
そんな魔国のアイドル(あくまでもパンダだ)は戦い以外でどんな性質を持っているのか?
養い子の魔王が夢中になっているのだ。
面白い事が大好きなミヤハルが興味を示さないはずがなかった。
魔王も育ての親であり義理の姉であるミヤハルには素直にリコリスの事を話す。
何ともまぁ甘酸っぱい青春を送っているモノだ。
魔王の余りののろけっぷりに、ミヤハルは本当にコレは自分が育てた存在と同一人物なのかを疑いたくもなった時期がある。
それにしても2人の進展は余りにも遅い。
魔族は寿命が長い分気長だがそれにしても魔王は10年も前からリコリスに好意を抱いているのだ。
それがキスの1つもままならないとは。
これでは面白さが半減してしまうではないか!
次の日から魔王が本を差し入れに持って行く日にはミヤハルは敢えて魔王が選ばないであろう本をこっそり忍ばせたりした。
暫くして魔王の様子が変わった。
見た限り普段通り冷徹な君主だ。
しかし何と言うかオーラがピンク色なのだ。
”絶対零度の君主”は何処に消えたのであろうか?
ミヤハルはこれは自分が忍び込ませた本で面白い方向に《武神》の情緒が成長してきているのだと感づいた。
魔王も誰かが要れた本の影響でリコリスが女としての情緒を芽生えさせてきていると兄とミヤハルにご機嫌で報告してきた。
ならばミヤハルがやる事は1つだけだ。
リコリスに恋情と言う感情を教え込む。
リコリスが魔王に絆されてきているとは言え、まだ恋愛感情では無い事は魔王の話からもうかがい知れる。
しかしミヤハルの目から見て余りにも2人はもどかしい。
可愛い養い子兼義弟だ。
ココで自分が一肌脱がなくてだれがする?
何よりこんな楽しそうな事、他の誰かに譲る気にはなれない。
そうと決まればミヤハルの行動は早かった。
まず家臣たちに明日、魔王がお菓子を作った後は仕事漬けにして外出する時間を作れないようにするよう指示を出した。
魔王が怒るのなら自分の名と兄の名を出しても良いと付け加えた後で。
次に王宮の料理長にも指示を出した。
ココでも自分の名を出してよい事を伝えておいた。
そして最後に自分の愛しい番に協力を仰ぐ。
ミヤハルは戦闘能力こそ高いものの出力特化型なので緻密な魔法は苦手としている。
果ての塔に【ゲート】を繋ぐような緻密な魔法構成を編むことは出来ない。
なのでミヤハルとは逆に緻密な魔法を得意とする番に【ゲート】の魔法を頼むことにした。
自分の弟で遊ぶ気満々の番を止めようとは兄は思わなかった。
兄は弟より番に利を置いている。
魔王も兄とリコリスを天秤にかけたらリコリスを選ぶだろう。
似たもの兄弟な訳である。
ミヤハルは明日、ようやく養い子の想い人をこの目で見れるのだと楽しそうに番に語る。
番である兄はそんなミヤハルを優しい目で見つめながらベッドの中で抱きしめた。
その瞳は弟である魔王とよく似ていた。
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