皇太子から婚約破棄を言い渡されたので国の果ての塔で隠居生活を楽しもうと思っていたのですが…どうして私は魔王に口説かれているのでしょうか?

高井繭来

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第1章

11話

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 11話と魔王sideの話の掲載順番が逆になりました。
 しおり挟んでいてくれた方読みにくくなってすみませんm(__)m💦

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 最近贅沢になってきたと自分で思います。
 果ての塔に幽閉されて、好きなだけ寝て、ちゃんとした食事を取って、ゆっくりお風呂に入る。
 それだけで天にも昇る喜びだったのに今ではそれでは満足できません。

 私は何て強欲な人間だったのでしょう。

 今の私は魔王が作ってくれるお菓子が無いと満足できません。
 魔王にギュッ、と抱きしめられながら昼寝をしないと物足りません。
 魔王が帰ってしまうと寂しくてしょうがありません。

 おそらく現在のバンリウ帝国は《武神》が消えて大変なことになっているでしょう。
 聖女であるディルバさんの結界ではまともに魔物を抑え込むなんて出来るはずがありません。

 国中の兵士が命の危険を顧みず戦っているでしょう。
 国中の聖職者が結界強化のため力を奮っているでしょう。
 国民は突如活性化した魔物に怯えていることでしょう。

 それなのに私は《武神》の仕事を放り投げて悠々自適に今の幸せな暮らしに浸っているのです。

 私には幸せになる権利など無い筈なのに。

 それを言うと魔王は少し悲しそうな顔をしました。
 そして私を抱きしめ頭を撫でてくれるのです。

 それだけで又、私は幸せになってしまいます。

 魔王はお伽噺に出てくる魔法使いみたいです。
 簡単に私を幸せにします。

 私はこの幸せを享受してよいのでしょうか?

 魔王は幸せになって良いと言ってくれます。
 ”幸せにしてやる”と言ってくれます。

 もう十分幸せなのにこれ以上の幸せを与えられたら私はキャパシティオーバーでどうにかなってしまうんじゃないかと思います。

「また余計なことを考えているだろう?」

「余計な事じゃありません。大切な事です」

「では何を考えていた?」

「私はこんなに幸せで良いのかについてです」

「それが無駄な事だと言っておるのだ」

 魔王は溜息を吐きます。
 魔王が溜息を吐くと何故か物凄く申し訳ない気がします。
 折角会いに来てくれているのにつまらない思いをさせてしまったと。

「すみません魔王」

「それは何に対して謝っている?」

「魔王につまらない思いをさせてしまいました」

 魔王は再び溜息を吐きます。
 うぅ胸がズキズキ痛みます。

「我はお前といてつまらぬと思った事は無い」

 そう言うと魔王は私の前髪をかき分けて、露わになった額に唇を落とします。
 柔らかくて温かいその感触に私の胸はポカポカします。
 本当に困ります。
 魔王は何故もこうも簡単に私を幸せにするのでしょう?

 でも最近恐ろしくなるのです。

 こんなに幸せを与えられて、コレを無くした時私はどうなるのかと。
 
 魔王の気まぐれで始まったこの関係。
 魔王が飽きてしまったら終わってしまう関係。

 失いたくない。

 だってこんなにも幸せなんです。
 生まれてきて今が1番幸せなんです。
 
 魔王を失いたくないのです。

 魔王はもう私の心の底に居ついてしまって、無くすことなんて出来ないのです。

 なのに最近不安が付き纏います。
 自分の知らないところでこの幸せが壊される予感がするのです。

 そうなると私は自分を押さえる事が出来ないでしょう。

 今まで感情を爆発させた事は私の人生において殆どありません。
 お父様と《武神》のお仕事について行って泣き喚いたあの日が最後です。

 もし私から魔王を奪おうとする存在が現れたなら、私はその人物を許せないでしょう。
 初めて自分の手で他者の命を奪うかもしれません。

 だからどうか、この幸せを奪わないで下さい。

 私から魔王を奪わないで下さい。

 どうか、私に殺めさせないで下さい。

 私から魔王を奪うものが現れない事を私は必死に毎日1人の時間祈っているのです。

 あぁ出来ればこの不安が杞憂に終わりますように。
 魔王に抱きしめられながら私は今日も祈ります。


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 少しばかり話が不穏になってきております。
 嵐の前の静けさと言うべきか。
 早くリコリスと魔王様のイチャラブを書きたいのですが(;´∀`)
 少々展開がだれそうで怖いですが、宜しければリコリスと魔王様が結ばれるまで見守ってやって下さいorz
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