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第1章
【番外】皇帝side
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バンリウ帝国皇帝-サンボーム・ギューシュ・バンリウは溜息を吐いた。
そんな夫を皇妃-エリザベート・フュア・バンリウは呆れた目で見ていた。
サンボームの溜息の理由は自らの息子が勝手に決めてしまった婚約破棄についてだ。
決めてしまっただけではない。
多くの貴族の集まる場で婚約破棄迄し、それどころか聖女を新たな婚約者として宣言した。
サンボームが居たなら息子の首を刎ねてでもそんな事はさせなかった。
サンボームにとって息子は替えがきいても《武神》の替えはきかなかったからだ。
しかも現在の《武神》は歴代最強と呼ばれるほどの実力の持ち主。
更に巫女である母の血を引いていた為《武神》が苦手とする魔法も世界屈指の腕前であった。
光属性を使えはしないものの、聖女の張った結界の上から更に雷属性の魔物にしか反応しない結界の重ね掛け迄していたほどだ。
まさに《武神》リコリス・ロコニオ・クレーンカは国の宝であった。
当代の聖女は愛らしい少女で庇護欲を掻き立てる華奢な体つきをしていた。
男なら自分が護ってやりたいと思うようなそんな少女だ。
だが聖女は護られる存在ではない。
聖なる光属性の法力を操り、国一面に結界を張り王族、国民を護るのが聖女の存在だ。
だが今回の聖女はどうだ。
能力は下の下。
しかも自覚がない。
神殿で甘やかされて育ったせいだろう。
そして自分が愛される外見をしている事は自覚していた。
だから聖女-ディルバ・アーレンはコンジュにアプローチをした。
悔しかったのだろう。
ディルバは自分の外見にプライドを持っている。
そのディルバより美しいと言われていたのがクレーンカ家の”夕暮れの令嬢”リコリスであった。
だからリコリスの婚約者を奪う事で自分の方が美しく優れているのだと思い知らせたかったのだ。
その結果、リコリスはコンジュにより果ての塔へ幽閉された。
そして国は大混乱をきたした。
まずは王都の外で下級の魔物に襲われる人間が増えた。
次に中級の魔物が王都外の農村に現れ人を襲い田畑を荒らすようになった。
そして上級の魔物が王都に出没するようになった。
現在、神殿の神官も巫女も総出で結界魔法の補助に法力を注いでいる。
国軍も突然活性化した魔物の対処に睡眠を犠牲にして走り回っている。
聖女は相変わらずコンジュに引っ付いてばかりだ。
聖女に強く言うとコンジュが反抗する。
そろそろサンボームの忍耐は限界を迎えていた。
そう遠くない未来でコンジュは実の父であるサンボームの手で首を切られるかもしれない。
そんなサンボームを見ながらエリザベートは心の中で嘲笑う。
もうこんな国どうなっても良い。
今の夫にエリザベートは好意を抱いていなかった。
初めて会った日は金髪に碧眼の美しい顔をした皇帝に愛情を抱いていた。
正妃として召し抱えられた時は嬉しかった。
だがそれもサンボームの人柄を知るにつれ愛情は憎しみに変わっていった。
(もう私の愛した皇帝はいない…そろそろこの国ともお暇ね……)
扇子で口元を隠しエリザベートは艶やかに笑った。
そんな夫を皇妃-エリザベート・フュア・バンリウは呆れた目で見ていた。
サンボームの溜息の理由は自らの息子が勝手に決めてしまった婚約破棄についてだ。
決めてしまっただけではない。
多くの貴族の集まる場で婚約破棄迄し、それどころか聖女を新たな婚約者として宣言した。
サンボームが居たなら息子の首を刎ねてでもそんな事はさせなかった。
サンボームにとって息子は替えがきいても《武神》の替えはきかなかったからだ。
しかも現在の《武神》は歴代最強と呼ばれるほどの実力の持ち主。
更に巫女である母の血を引いていた為《武神》が苦手とする魔法も世界屈指の腕前であった。
光属性を使えはしないものの、聖女の張った結界の上から更に雷属性の魔物にしか反応しない結界の重ね掛け迄していたほどだ。
まさに《武神》リコリス・ロコニオ・クレーンカは国の宝であった。
当代の聖女は愛らしい少女で庇護欲を掻き立てる華奢な体つきをしていた。
男なら自分が護ってやりたいと思うようなそんな少女だ。
だが聖女は護られる存在ではない。
聖なる光属性の法力を操り、国一面に結界を張り王族、国民を護るのが聖女の存在だ。
だが今回の聖女はどうだ。
能力は下の下。
しかも自覚がない。
神殿で甘やかされて育ったせいだろう。
そして自分が愛される外見をしている事は自覚していた。
だから聖女-ディルバ・アーレンはコンジュにアプローチをした。
悔しかったのだろう。
ディルバは自分の外見にプライドを持っている。
そのディルバより美しいと言われていたのがクレーンカ家の”夕暮れの令嬢”リコリスであった。
だからリコリスの婚約者を奪う事で自分の方が美しく優れているのだと思い知らせたかったのだ。
その結果、リコリスはコンジュにより果ての塔へ幽閉された。
そして国は大混乱をきたした。
まずは王都の外で下級の魔物に襲われる人間が増えた。
次に中級の魔物が王都外の農村に現れ人を襲い田畑を荒らすようになった。
そして上級の魔物が王都に出没するようになった。
現在、神殿の神官も巫女も総出で結界魔法の補助に法力を注いでいる。
国軍も突然活性化した魔物の対処に睡眠を犠牲にして走り回っている。
聖女は相変わらずコンジュに引っ付いてばかりだ。
聖女に強く言うとコンジュが反抗する。
そろそろサンボームの忍耐は限界を迎えていた。
そう遠くない未来でコンジュは実の父であるサンボームの手で首を切られるかもしれない。
そんなサンボームを見ながらエリザベートは心の中で嘲笑う。
もうこんな国どうなっても良い。
今の夫にエリザベートは好意を抱いていなかった。
初めて会った日は金髪に碧眼の美しい顔をした皇帝に愛情を抱いていた。
正妃として召し抱えられた時は嬉しかった。
だがそれもサンボームの人柄を知るにつれ愛情は憎しみに変わっていった。
(もう私の愛した皇帝はいない…そろそろこの国ともお暇ね……)
扇子で口元を隠しエリザベートは艶やかに笑った。
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