AIが最強すぎて異世界生活が楽勝です。

ジュウ ヤマト

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22章 

出兵

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 ハヤト達は、エルマの街のギルドで『ホルス山脈のモンスター調査・討伐依頼』の完了報告のため、受付けに並んでいた。

 そして、ハヤト達の番が来た。

「こんにちは、リエットさん、依頼の報告に来ました」

 馴染みのある受付嬢のリエットがハヤトに気付く。

「ハヤトさん、ホルス山脈はどうでしたか?」

「実は、 あそこで大規模なゴブリンコロニーを発見しました。数は凡そ150匹から200匹でゴブリンキングを始め、上位のゴブリン達が数十匹はいたんですが、討伐は済ましてきたので、この依頼に関しては完了です。証拠になるかと思って上位のゴブリン達の耳を切り取ってきました」

 そう言うと、ハヤトはゴブリンキングやレッドキャップの耳をマジックバックから出し、受付けテーブルに置いた。

 リエットは大きな声を上げて驚く。

「!! えっ!……ゴブリンキングのコロニーですか! そんな物が……ミスリルランク以上の冒険者パーティが複数で対応するほどの事案ですが……さすがです……」

 その話を聞いていた周りの冒険者達もざわつく

「ほんとかよ……あいつ、シルバーランクだろ……」

 リエットがゴブリンキング討伐に興奮して、大声で討伐と言ってしまったため、周りにいた他の冒険者たちがひそひそと話しながら、ハヤト達を見ている。

 リエットは、しまったと言うような顔をしながら「コホン」と咳ばらいをし、ハヤト達に言う。

「それでは今回の報酬です。 それと、そちらの女の子は……」

「え……あ……」

 ハヤトが言葉に詰まっていると、すかさずマリアが助け舟をだす。

「紹介が遅れました。この子は私の妹で、ミアと言います。故郷から私を追って来てしまって……申し訳ございませんが、この子は魔法使いですので、冒険者登録をお願いできますか?」

 ミアは、急なことに驚き、マリアの『妹』と言う言葉に感激している。

(マリア様……私を妹と……妹……妹……)

「分かりました。では、ハヤトさんのパーティーメンバーになるんでしたら、問題はありません。こちらで手続きをしておきますね。 えっと、ミアさんでいいんですよね? 一応年齢を教えてく下さい。冒険者としてギルドに登録できるのは12歳以上となっていますので」

 リエットがミアに確認のため声を掛ける。すると、ミアが満面の笑みで答える。

「はい! マリア姉様の妹のミアです!! 14歳です!」

 リエットはたじろきながらも、返事をする。

「は、はい、わかりました…… それでは登録手続きを行っておきますね。それから、ハヤトさんギルドマスターがお話があるとの事ですので二階の会議室までお願いできますか?」

 ハヤトとマリアは顔を見合わせ頷き、リエットと一緒に二階の会議室へ向かう。

「こちらでお待ちくださいね、ギルドマスターを呼んでまいります」

 そう言ってリエットは部屋を出ていく。

 そうして、少しして扉がノックされる。

「はい」

 ハヤトが返事をすると、リエットとロム、そしてランジが部屋に入ってきて、二人が笑顔で挨拶をし、ランジがハヤトに話し掛ける。

「ハヤトさん、お疲れ様です…… 精力的に依頼をこなしていっているみたいですね。今回もゴブリンキングの率いるコロニーを殲滅してきたとか…… さすがです」

 そんな話をしていると、次にギルドマスターのロムがハヤトに話し掛ける。

「ハヤトさん、実はお願いがあります……」

 もちろんハヤトはマリアの存在を隠し、パーティーに迎え入れる際の条件を忘れてはいないし、誠実なギルドの対応にも感謝しているので、断る理由はない。

「はい、どのような事ですか?」

「実は、近々セニア王国とイグニア帝国との間で戦争が始まります。その際、セニア王国からファルハン王国に対し援軍の要請がありました。 そして、本国は2万人の援軍を編成し、セニア王国へ向かう事を決定したのですが、ギルドに対しても、出兵に関する依頼が来ています。ハヤトさんにはこの依頼を受けて頂きたいのです。もちろん無理にとは言いませんが……」

 申し訳なさそうに言うロムに対し、ハヤトはその依頼を快諾する。

「分かりました。その依頼お受けします。それで、出発はいつですか?」

 少し表情が明るくなった、ロムはランジに出発についてハヤトに説明するよう促す。

「援軍の編成と出発は明日ですので、できればすぐにでも王都ファーランへ向かっていただきたいのです。馬車は此方で用意しますので、準備が出来次第、エルマの東門へ来てください」

「分かりました。では、すぐに用意して向かいます。行こう、マリア」

「はい。もちろんあなたも行きますわよ。ミア」

 一連の話を黙って聞いていたミアは、ハッとしてマリアに返事をする。

「はい、マリアお姉様」

 ハヤト、マリア、そして新たに加わったミアは、エルマのギルドから急いで宿に戻り、出発の準備を始めた。彼らは必要最低限の荷物をまとめ、武器や防具の点検をしながら、エルマの東門に向かう。

 東門の前には馬車が一台止まっており、御者が馬の世話をしている。

「あの、ギルドから依頼を受けたハヤトですが」

「あ! ハヤト様ですね。出発しますので準備が出来ているのであればお乗りください。」

 ハヤトは、マリアとミアの顔を見る。マリアは問題ない事をそっとお辞儀をしてハヤトに伝え、ミアはすっと眼を逸らした。

「…… じゃあ行こうか」

 そう言って、ハヤト達が馬車に乗り込むと、馬車は王都ファーランへ向かいゆっくりと進みだす。道中、ミアは窓から外の景色を眺めながら、マリアとの初めての冒険に心を踊らせていた。一方で、ハヤトとマリアはこれから始まる戦争について深く考えていた。

「セニア王国とイグニア帝国の戦争か……」

 ハヤトが呟き、マリアは不安そうな顔をしている。その顔を見たミアがマリアに言う。

「マリアお姉様、イグニア帝国の兵など私が蹴散らして見せます。安心してください!」

 そう、ミアはマリアと違いイーブス教と言う闇の組織で教育と戦闘訓練を受けている為、もともとおとなしい性格と言えど、人を殺すことに何の躊躇いもない。だが、マリアは精神支配を受けてから教会に入ったため、正気で人間相手に魔法を放ったことがない。魔物が相手ならば何の問題もないのだが、今のマリアでは不安に思うのは当然である。そして、その顔を見たハヤトもマリアに声を掛ける。

「マリア、オレも最初は人間相手に剣を振る事が怖くて、不安で仕方なかった…… オレの元居た所では戦争なんて起きなかったから…… けど、今は違う…… ありきたりだけど、戦わなければ守れない……なら、戦うしかないんだ。自分の命を…… そして、大切な人の命を守るために、それに、いくら戦争と言えど必ず敵軍を殺さなければならない訳じゃない、戦えないように無力化すればいいんだ」

 するとマリアが、ハッとしたようにハヤトの顔をみる。

「無力化ですか?」

「そう、例えば極端な話だけど、いきなり敵軍の大将を捕まえるとか、敵軍を罠に嵌めて戦えない状況を作るとか、マリアは、回復魔法が得意だから戦闘はオレに任せて回復だけを担当するとか……ね。それに、どちらかと言うとオレはマリアには傷ついた味方の回復を担当してほしいかな」

「ハヤト様…… お心遣いありがとうございます。 私は回復と支援を行ってまいります」

 そう言うと少し気が楽になったのか、いつものマリアに戻っていた。

 そして、周りが薄暗くなって来た頃、王都ファーランが見えてきた。人口10万人からなるその都は整然としており、中央にそびえたつ王城はとても威厳がある。城壁も高さが10mを優に超え警備も万全の体制である。

「…… さすが王都だな……すごい……」

 ハヤトは、ホルス村やエルマと違い、初めて見る王都の街並みに感動していた。もちろん、現代の日本の首都に住んでいたハヤトにとって人の多さと言う面では特に珍しくもないが、そのファンタジックな街並みに感動していたのである。

 完全に呆けているハヤトの顔を見てミアがため息をつき小声で呟く。

「ハァ…… 田舎者……マリア姉様はなぜこんな奴に……」

「何か言いましたか!」

 すかさずマリアが反応する。

「!! いえ……さ、さすがに人がおおいですね~……」

 ミアは冷や汗をかきながら誤魔化す。

 そうこうしているうちに、馬車は王城前広場に着く。

「着きましたよ」
    
 御者の言葉でハヤト達は馬車を降りる。

 すると薄明りの中、大勢のファルハン王国軍と依頼を引き受けたのであろう、多数の冒険者たちが集まっていた。

 ギルド事態、特定の国に肩入れする事はないが、あくまで依頼となればその依頼を受けるかどうかは冒険者に委ねられる。そして、指揮官らしき人物が声を上げる。

「皆の者、静まれーー! これよりセニア王国へ向け進軍を開始する! もうすぐ夜も更けるが、早急な行動が求められるため、一先ず東の交易都市ライブラードの直近まで進軍しそこで本日は夜を明かす! では!出発!!」

 夜襲でも掛けない限り、夜に軍を動かす事などありえないが、セニア王国を助ける為、国王オールスは夜の進軍を命じた。そして、白い旗に黄金の馬の絵が描かれた軍旗が掲げられ、ファルハン王国軍はセニア救援に向け進軍を開始したのである。


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