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ジュウ ヤマト

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14章

ホルス山脈の異変

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 次の日の朝、ハヤトとマリアは、起き上がる事の出来る様になった村長と一緒に朝食を摂ったあと、依頼を済ます為に村長や村人達から情報を集め、ホルス山脈へ出かけた。

「やっぱり、ホブゴブリンか……」

 ハヤトは小声で呟く。

 村人達から聞いた話では最近、村に程近い山道周辺で頻繁にホブゴブリンが出没するらしく、その為、薪集めや狩に行けないので討伐してほしいと言う内容であった。

 ホブゴブリンとは普通のゴブリンよりも知能が高く、戦闘能力も高い為、村の自警団や駆け出しの冒険者では、かなり危険な相手となる。

 だが、普通ホブゴブリンはゴブリンたちのリーダーとしてコロニーを形成しており、麓まで降りて来る事はほとんどない。なのに、ホブゴブリンが出没していると事は、かなりの規模のコロニーが形成されており、ホブゴブリン以上の上位種が存在していると言う可能性が高くなるのである。

 しかし、だからと言ってハヤトとマリアの敵とはなり得ない。だが、村人にとっては大問題である。

 それにゴブリンは繁殖力が強いため、放って置くとすぐに増える。そして、コロニーでゴブリンの数が増え過ぎれば、食糧不足となり、いつまた村へ向かって来るかも知れないと言う可能性と恐怖に村人は怯えなければならない為、その危険を前もって排除するため、ギルドへと依頼を出したのである。



------------------



 なんと無く昨日のやり取りから、ぎこちない2人は会話の無いまま、ホルス山脈のホブゴブリンが目撃されたと言う山道へ向かって出発した。

 少し遅れて、ホルト村に親子の様な旅人が訪れる。

 1人は壮年の男で、もう1人は見た目15歳にも満たない少女だ。

 親子にしても、いささか歳が離れすぎている様にも思えるが、村人が聞いた話では親子なのだそうだ。

「すみません。 あの山にはが自生していると聞いたのですが……」

 子連れの男が村長宅を訪れそんな事を言い出す。

 とは、高度な魔法薬に使用される希少価値の高い高価な薬草で、市場にはほとんど出回らない。

 当然、それには理由がある。1つはホルス山脈の奥地にしか自生していない事、もう1つは夜にしか採れないという事。

 ホルス山脈と言えど、奥地にまで行くと、そこそこ強力な魔物も生息している。そして、その魔物達の活動が活発化する夜でなければ、採取が出来ないとなると冒険者には、リスクが高過ぎるのである。

 そして何よりも採取を困難にしているのが、は月の光を浴びている間にだけ花を咲かし、その花の部分が必要となる箇所だからである。

 天気の変わりやすい山を何日もかけて探した挙句、月が出ていなければ、見つけても必要な部分を採取出来ないとくれば、釈薬草をターゲットとして依頼を受けるのではなく、何かの依頼でホルス山脈へ来て、運良く釈薬草を見つけた時に採取するという方が、冒険者にとっては低リスクで、現実的なのである。

「生えているには生えているが……そんな小さな子を連れて行くのかい?」

 村長は、子供の方へ目をやる。

すると、男は子供の頭をポンポンと優しく叩く。

「これでもこの子は、こういう山に慣れていますので。お気遣いありがとうございます」

 そこまで言われれば、流石に村長もそれ以上は何も言わず、一言だけ付け加える。

「最近あの山にはホブゴブリンが出没しておってな、先程ギルドの冒険者が討伐に向かってくれたんじゃ……腕のいい冒険者なんで問題無く討伐はしてくれるじゃろうが、お主らも山に入るなら十分に気を付けてな」

 そう言って、村長は親子を見送った。


----


 少し前、ハヤトとマリアは入山してすぐ、ゴブリン5匹と遭遇し4匹を討伐し1匹を意図的に逃した。

 もちろん逃げ帰るコロニーへの道案内をさせる為である。

(セラ、あのゴブリンをマーク)
(了解しました)
 こうして置けば、魔力探知でいつでも追跡出来る。

「しかし、まだ村を出てそんなに経っていないのに……」

 ゴブリンの死体を見下ろしながらハヤトは呟いていた。

「ハヤト様! ゴブリンはこちらから来たようです。 向こうに足跡が残っています」

 マリアが指差す方を見ると、確かにゴブリンらしき足跡が森の奥へと続いていた。

 そして、セラのナビゲートもマリアの指差す方向と同じだった。

「よし、そこから先へ進もう。
それとマリア、まだ言ってなかったけどオレは探索魔法も使えるから無理に敵を追いかけたりしなくても大丈夫だ」

 マリアは少し驚いた様な顔をし、ハヤトに質問してきた。

「探索魔法まで使えるのですか? おそれながらハヤト様の探索魔法の効果範囲はどれ程なのでしょうか?」 

「そうだなぁ……試したことはないけど、正確に探策出来るのは多分、半径2km位かな。けど、大凡ならば、その倍は大丈夫だと思うぞ」

「えっ! そんな広範囲を探索出来るのですか? 凄いです……私も探索魔法は得意な方ですが、それでも100mがやっとです。と言うか、どんな魔法使いでも精々150m位だと思いますが……」

 マリアが目を丸くして驚いている。

「そうなのか? まぁオレの場合は魔法と科学を融合しているからなぁ」

「科学とは凄い物なのですね……私もハヤト様の役に立てるようにもっともっと頑張ります」

「ああ、それは有り難いけど、『出来る事を出来る方がやる』いいんじゃないか? オレ達はパーティーなんだから」

「はい!」 

 ゴブリンと戦闘を行ったことで、先程までの気まずい雰囲気は無くなり、マリアは嬉しそうに返事をして2人はさらに森の奥へと進んで行く。
 

ーーーー


 ハヤト達が森の奥へ進んでから、暫く経った頃、同じ場所にあの親子の姿があった。

「ゼス様、コレを」

「ふむ……早速ゴブリンに出くわしたようだな……」

「魔法による討伐ですね」

「気付かれない様に後を追うぞ」

「はい」

 そう言って2人は山道を外れ奥に進んだ。

 ゼス達は、しばらく進んだところで、後ろに魔物の気配を感じ、木の上に姿を隠して様子を伺っていたところ、50匹程のゴブリンの集団を発見する。

「多いな……それにあれはゴブリンマジシャンか。ホブゴブリンだけてはなくゴブリンマジシャンまでいるとは……」

「ゼス様、あそこにレッドキャップが2匹います……」

「なに、レッドキャップまでいるのか。だがレッドキャップが2匹いると言うことは、これは……」

「はい。 確実にゴブリンキングがいますね」

「となると、100匹以上のコロニーが出来ているな…………しかし、あの集団……いったい何処へ向かっているのだ……まるで戦争にでも行くみたいだな……」

「まさか、あの二人を追っているのでは……」 

「可能性は十分にあるな。しかし、ゴブリンレッドキャップやゴブリンマジシャンまでいるあの集団に襲われればミスリルランクの冒険者パーティーでも厳しいぞ…………。
あの2人もかなりの使い手ではあるらしいが、どれ程の者か……」

 実は、ゼスとシーナは侯爵からハヤトとマリアの強さを詳しくは聞いておらず、「かなりの使い手ではある」とだけしか聞いていなかった。

「どうなさいますか? 私達の任務は、あの2人の調査……ゴブリンの集団と対象の2人が戦闘になれば、助けに行きますか?」

 ゼスは顎に拳を当てて考え込む……決して自信が無い訳では無い。

 シーナでもミスリルランクの冒険者と同等の実力がある。ゼスに至ってはオリハルコンランクにも引けを取らないだろう。

 だが、そんなゼスが慎重になるのだから、いくらゴブリンと言えど、レッドキャップやマジシャンがいれば、それだけ危険なのである。

「主からは『かなりの使い手』だと聞いてはいるが…………状況次第だな」

「わかりました」

 短く返事をするシーナ。彼女もまた、ゼスの表情を見て状況の厳しさを理解していた。

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