11 / 23
10章
覚悟
しおりを挟む
ハヤト達4人は、マリアの処遇とファルハン王国への引き渡しに付いて話し合った後、全員でマリアが寝ている部屋へと向かった。
エリーヌが部屋の扉をそっと開けると、フワッとした風がエリーヌの髪を撫で、月明かりがベッドを照らす。
「……いない……大変! まだ、歩けるような状態ではありませんのに……」
エリーヌが空のベッドを見てから、開いたままの窓を見つめる。
「くっ……すぐに追跡隊を向かわせ……」
ランジが言い終わる前に、ロムがランジの前に手を出し言葉を止める。
「誰を向かわせるのですか? 手負いとは言え、人外と言われる黒衣の執行者ですよ? 今、この町の動ける冒険者で1番高いランクはシルバーランクです。オリハルコンランク以下の冒険者など、返討ちに会うのが関の山です」
ランジは悔しそうに唇を噛み、俯く。
しかし、すぐにハッと何かに気づいたようにハヤトの顔を見る。
「では、ハヤトさんに頼みましょう! 報酬はギルドがお出します。お願いします」
「…………すいませんが、お断りします」
ロムとランジは驚いた様子でハヤトの顔を見ながら、ランジが強い口調で理由を聞いてきた。
「何故ですか!? 例え手負いでも、今この町に黒衣の執行者を捕らえられるのは、あなたしかいません」
「オレは……(頭では分かっている。この世界が日本とは違う『残酷で容赦の無い世界』である事は……世界が違えば、常識も違う……いや、同じ世界でも、時代や文化、国や地域、宗教など例え現代の地球でも理解出来ない事もる………………だが、どうしても受け入れる事が出来ない。公正な裁判など無く、捕まえれば拷問を受けた後、確実に死刑にされる。そう分かっていて捕まえる事など出来るはずがない……オレの背中で泣いていた彼女を……)」
「分かりました。貴方が引き受けて下さらないのであれば、私がこの町の冒険者全員を招集し捕らえます。 私はこう見えても、元々はオリハルコランクの冒険者です。1人では無理でも、他の冒険者と連携すれば、何とかなると思いますので」
ロムがハヤトの目を真っ直ぐに見ながら言う。
「ロム様! ギルドマスターである貴方が、この様な危険なことを……」
「もちろん、危険である事は承知しています。ですが、あの者のを放っておけば、傷が癒え魔力が回復した頃に、また新たな犠牲者が出るかも知れません。それはギルドマスターとしても、ファルハンに生きる者としても感化出来ません。
それに、あの者がレギオンとやらに精神支配を受けて殺戮を行ったのであれば、望まぬ殺戮だったのかも知れません。ならば、それこそ深い悲しみと後悔に苛まれながら、したくも無い殺戮をしていた事になります。此処から逃げた理由は分かりませんが、また精神支配を受け、同じ事をさせられる可能性もあるでしょう。ハヤトさん……それでも良いのですか?」
ハヤトは、ロムの話しを聞いて大きく深呼吸をすると、椅子から立ち上がって皆に伝えた。
「分かりました。オレが行きます」
「私も、ご一緒しましょうか?」
エリーヌが言うが、ハヤトは首を横に振る。
「いえ、大丈夫です。他のパーティーに所属するエリーヌさんを危険な目に合わせる訳にはいかない。それに、これはギルドからのオレに対する正式な依頼……ですよね?」
ランジの方を見ると、ランジは頷く。
「その通りです」
「では、行ってきます」
「ハヤトさん、これを持って行って下さい」
そう言うと、ロムは自分のポケットの中から、ポーションを2個取り出しハヤトに渡す。
「これは?」
「ハイポーションです。念のために持って行って下さい」
ハヤトが聞くと、ロムはニコっと笑みを浮かべた。
「ありがとうございます」
ハヤトは丁寧にお礼を言う。
『ハイポーション』ロムはハヤトに念のためと言って渡したが、実はかなり高価な物である。冒険者でもこのポーションを気安く使えるのはオリハルコンランク若くはミスリルランク以上の冒険者だろう。それ以下のランクの冒険者では、御守り代りと言っていい。
回復効果もかなりの物で、骨折や重度の火傷、切断された箇所の止血や切断面が綺麗であれば、時間は掛かるが接合まで可能だ。
値段の相場は金貨10枚と言ったところで、普通のポーションは銀貨2枚から4枚なので、ランクの低い冒険者はなかなか気軽に使えないのである。
だが、そのハイポーションを易々と渡すところなどは、流石ギルドマスターである。
と、感心しつつもハヤトは、マリアを追う為に部屋を後にする。
ーーーー
ハヤトはギルドを出てすぐに、マリアの行方を探す。
だが、すでに陽は落ち辺りは暗くなっているため、探すにしても何処を探せばいいか見当がつかない。
「まだ体力も完全に戻っていないようだから、そう遠くへは行けないだろうけど……」
そう呟いたと同時にセラの声が頭に聞こえる。
「モニターを角膜へ投写します。対象者の魔力パターンをレーダーにて捜索……ヒット、対象者を発見。誘導を開始しますか?」
「うおっ! ビックリした。セラはそんなこともできるのか」
「はい、現状この世界の魔素と対象者の魔力パターンさえ分れば半径2㎞の範囲内で捜索が可能です」
「助かった。しかし、いつの間に……」
いつの間に解析したんだ?と聞こうと思えば、聞かれる事が分かっているかのように、瞬時に答えが返ってくる。
「隼人様が、触れた事のある物であれば人間以外の生物も含めて、すべて解析・登録可能です」
「AI凄いな……」
「ありがとうございます」
「よし、誘導を頼む」
「了解です。ではルート表示と身体強化を行います」
「ハハッ、カーナビかよ……けどサンキュー」
この世界では、全ての生物が多かれ少なかれ魔力を持っており、指紋や声紋のように魔力も個人や個体によって判別出来る。セラはそれを独自の判断でやってのけたようである。そして、ハヤトが角膜に投射されているマップを確認すると、すでにマリアは町の東側から出て、一番近い所からラグラの森へ入っている。
セラの誘導と身体強化の影響で、考えられない位の速さで移動する。捕まえると言う事も勿論だが、それ以上にマリア身体が心配であった。
ーーーー
「いた!」
ハヤトは森の木にもたれて、辛そうに座り込んでいるマリアを発見した。そして、マリアの視線の先に巨大な何かがうっすらと見える。
傷は塞がっていても、魔力、体力共に殆ど回復していない状態のマリアは『グランチュラ』に遭遇してしまった自分の不運さに笑いがこみ上げてくる。
「ふふ……お父様、お母様……私は仇を打つ事が出来そうに有りません……申し訳ございません……ごめんね……ユーリ……」
マリアは大粒の涙を流し自分の人生を振り返っていた。だが、思い出すのは家族が殺されてからの辛い日々ばかり。
精神支配から解放され、今までした事の罪の意識に苛まれた、そしてどうせ死ぬなら家族の仇を討ってからと考えて逃げたのに、こんな所で魔物に襲われて最後を迎える事が悔しくてならなかった。
「こんな所で死にたくない! 私はまだ何も出来ていない! 仇討ちも、罪滅ぼしも…………誰か……助けて……」
そんなマリアの気持ちなど露知らず、この目の前の体が大きいくせ異常にすばしっこい大蜘蛛は警戒しながら、マリアを観察している。
もし、マリアが万全の状態ならば、問題なく討伐できるが、歩く事もままならない今の状態ならばとても敵わない。
そして、この大蜘蛛も目の前の餌が弱っていると知っているので、無理はせずじっくりと隙が出来るのを待っているのだろう。だが、それがマリアと大蜘蛛の命運を分けた。
大蜘蛛は何かが近づいてくるのを感じ取って後ろに下がり、近づいてくるハヤトを見つけると、陰から注意深く観察する。そして、マリアはハヤトに気づくと縋るような目でハヤトを見つめ懇願する。
「助け……て……うっ……私は……こんな所で死ねないの……お願い……」
マリアの悲痛な願いがハヤトの心を刺す。
「果たさなければならない事があるの! 仇討ちも…今までした事の罪滅ぼしも……お願い!……助けてくれるのなら……私の全てを貴方に捧げてもいい! お願い……」
「分かった。安心して休むといい、オレが必ず助ける」
ハヤトの言葉を聞届け、マリアは安心したように気を失った。
「と言う事だ、諦めろよ…………うわっ、デカ!気持ちわる…」
ハヤトは何かがいると言う事は分かっていたが、こんな大きさの蜘蛛だとは思ってもみなかった。
「隼人様、戦いは私がサポートを行いますが、よろしいですか?」
セラが問いかけて来たので任せることにした。
「……よろしく」
「了解です」
大蜘蛛は急に現れた生物に対して口からクモの糸を噴射する。ハヤト(セラ)は手を前に出すと突風が発生しクモの糸は飛んできた方向へ吹き飛ぶ、だがクモの糸が吹き飛んだ瞬間に大蜘蛛の姿が見えなくなる。
「後方の頭上約5メートルに敵影。サーチモードを魔力感知から暗視モードに切り替えます」
セラの言う方向を見ると、ハヤトの目には、姿を隠した大蜘蛛がハッキリと見えた。
「そこか……くそっ届かないぞ……森の中じゃ炎系の魔法は使えないし……」
と言いながらハヤトが悔しそうに大蜘蛛を見上げると、体が勝手に剣を振る。
大蜘蛛は、木の上に隠れてこちらの様子を伺っていたが、その木ごと真っ二つになり落ちてきた。
「任務完了。通常モードに移行します」
大蜘蛛が死んだのを確認すると、ハヤトは気を失っているマリアの口に少しずつ、ゆっくりとハイポーションを流し込んで行く。
「セラ、どうかな?」
「スキャン……ハイポーションの効果により、危険な状態からは脱しましたが、依然、身体的・精神的疲労が激しく休息が必要です」
「そうか……なら、すぐに町へ戻る」
ハヤトはマリアを背中に抱え身体強化を発動し、エルマの街まで戻るとギルドには行かずに宿屋に入り、マリアをベッドへ寝かせ、少し様子を見て、自分も床に座り込むとそのまま寝込んだ。
ーーーー
「ピピピピ……αCore稼働率75%・βCore稼働率20%…深刻なerrorのため、修復には時間が必要・γCore稼働率12%」
朝日の眩しい光に晒され、ハヤトが目を覚ますと、ベッドが空になっており、自分に毛布が掛けられていた。
「……逃げたか……それでもいいさ。捕まれば拷問されて死刑になるんだ。やりたい事も有ると言っていたし……ランジさんとロムさんには申し訳ないけど、探したけど見つけられなかったって報告するか…………さて朝飯でも食べに行くか」
ハヤトは、どこか心のつっかえ取れた様に、スッキリとした気持ちで立ち上がって部屋の扉に手を掛けようとしたその時、コンコンとノックの音が聞こえた。
「うん? 誰だ……」
ハヤトは、不信に思いながらも返事をする。
「はい」
すると扉の向こうから女性の声がする。
「失礼致します。朝食をお持ちしました」
「うん? この宿屋に朝食を部屋まで持って来るサービスなんてあったかな?」
ハヤトは独り言を呟きながら扉を開けて、とんでもなく驚く。
「あ……あんた……何をやってんだよ……」
そこに立っていたのは、食事を持ったマリアだった。
「はい?」
驚いている、ハヤトを横目にマリアは、食事を机の上に置く。
「逃げたんじゃ……」
「何故ですか? お約束したじゃないですか? 助けてくれたら、私の全てを貴方に捧げると」
「いや……まぁ、確かに言ってたけど……」
「さぁどうぞ、お召し上がりください」
マリアは、昨日までとは別人のように振舞っている。
ハイポーションが効いたのか顔色も少し良くなり、両目の下に描かれていた赤い筋の模様も消されていて、胸の辺りまで伸びた金色の髪の毛は、無造作に1つに束ねられているものの、流れるように美しい。
しかも、女性にしては背も高く、痩せ過ぎていない体型に、膨よかな胸がローブの上からでも分かる。誰もが見惚れるような女性だろう。そして、ハヤトもそんな1人でマリアに見惚れている。
だが突然、グゥーとお腹の音が部屋に響くと、マリアが顔を真っ赤にして俯いた。
「し……失礼しました……」
「えっ…………あっ、いや……けど、あんたの分は?」
「私は、お金を持っていませんので、ご主人様の分のみ宿屋の主人から頂いて来ました。それから今後、私の事は『マリア』とお呼びください」
「ど……どうしたんだ……?」
ハヤトは、しどろもどろになりながらもマリアに問いかける。
「私はご主人様に全てを捧げた身、言うならば『下僕』です。ですので、その様に接して下さって構いません」
ハヤトは、マリアの態度に圧倒され、何も言えず気の無い返事をする。
「……あぁ」
マリアはニコッと微笑み、ハヤトに会釈する。
「ご主人様、これから宜しくお願い致します。それからこれを」
そう言うと、マリアは服のポケットから、1枚の羊皮紙を取り出した。
「ご主人様、この羊皮紙をご存じですか?」
「……いや、知らない……それとご主人様は止めてくれ、名前で呼んでくれて構わない」
「承知致しました。ではこれより『ハヤト様』とお呼び致します。それと、この羊皮紙に書いている模様の真ん中に魔力を注いで頂けますか」
ハヤトは、言われた通りに羊皮紙の真ん中にに魔力を込めると、模様の色が青から、赤に変色した。
「では、それを私に」
ハヤトは、意味が分からないまま言う通りに羊皮紙を渡すとマリアはローブから、豊な胸の上部を裸けさせると、左側の胸に羊皮紙に書かれた模様を押し付けた。
「うっ……あぁぁぁ………………ハァハァ……」
マリアは苦悶の表情を浮かべ、苦痛に耐えている。
「お……おい……何を」
「……ハァハァ……大丈夫です……これは、この胸に付いた模様は、『魂縛紋(こんばくもん)』と言うもので、これで私は、ハヤト様の命令に逆らう事が出来なくなりました」
「なっ……なぜそんな事を……」
「ハヤト様に信じて戴く為、そして私の覚悟の為です」
毅然とした態度で答えるマリアに、ハヤトは戸惑ったが、あれこれ考えても仕方がないので、まずはマリアの言う事を信じる事にした。
「ところで、オレの命令に逆らえばどうなるんだ?」
ハヤトは一応聞いてみる。もし、「命令に逆らえば死にます」なんて言われたら大変だと考えたからである。
「慣れる事のない激痛が身体を襲います」
「慣れる事のない?」
「はい。痛みと言うのは、鍛えればある程度我慢が出来るようになります。しかし、この魂縛紋の痛みは慣れる事が出来ない様になっているそうです」
「物騒な物だな……けど、本当にそれで良いのか?」
「先ほども申し上げましたが、これは私の覚悟です」
ハヤトは、彼女の決意にこれ以上あれこれ言うのは、逆に失礼だと感じ疑問に思っていた言葉を飲み込んだ。
「わかった、これからよろしくな。それから、えっと……これはマリアさんが食べるといい。オレは下で食べて来るよ」
「ハヤト様、『マリア』です! それに、ハヤト様だけお召し上がり下さい」
「あっ……ゴメン……」
「ハヤト様!! どこの世界に『下僕』に謝る主がいるのですか!」
「ごめんなさい……あっ……」
「もう…………」
マリアは頭を抱え、首を振る。そして、ハヤトは革の巾着袋から、銀貨1枚を取り出して渡し、下僕となったマリアに初めての命令をする。
「なぁマリア、その銀貨で同じ食事をもう一つ買って来てくれないか?」
「……畏まりました」
マリアは恭しく頭を下げ部屋を出て行く。
しばらくして、マリアは同じ食事を持って来た。
「さあ、一緒に食べよう」
「私は、下僕です。主と同じ机に座る事など許されません」
そう言って、マリアは一礼する。
「マリア、命令だ。そこに座って一緒に食べよう」
「……命令と仰るならば……畏まりました」
やたらと態度と考えの固いマリアに戸惑いながらもハヤトと、マリアは朝食を一緒に摂るのであった。
エリーヌが部屋の扉をそっと開けると、フワッとした風がエリーヌの髪を撫で、月明かりがベッドを照らす。
「……いない……大変! まだ、歩けるような状態ではありませんのに……」
エリーヌが空のベッドを見てから、開いたままの窓を見つめる。
「くっ……すぐに追跡隊を向かわせ……」
ランジが言い終わる前に、ロムがランジの前に手を出し言葉を止める。
「誰を向かわせるのですか? 手負いとは言え、人外と言われる黒衣の執行者ですよ? 今、この町の動ける冒険者で1番高いランクはシルバーランクです。オリハルコンランク以下の冒険者など、返討ちに会うのが関の山です」
ランジは悔しそうに唇を噛み、俯く。
しかし、すぐにハッと何かに気づいたようにハヤトの顔を見る。
「では、ハヤトさんに頼みましょう! 報酬はギルドがお出します。お願いします」
「…………すいませんが、お断りします」
ロムとランジは驚いた様子でハヤトの顔を見ながら、ランジが強い口調で理由を聞いてきた。
「何故ですか!? 例え手負いでも、今この町に黒衣の執行者を捕らえられるのは、あなたしかいません」
「オレは……(頭では分かっている。この世界が日本とは違う『残酷で容赦の無い世界』である事は……世界が違えば、常識も違う……いや、同じ世界でも、時代や文化、国や地域、宗教など例え現代の地球でも理解出来ない事もる………………だが、どうしても受け入れる事が出来ない。公正な裁判など無く、捕まえれば拷問を受けた後、確実に死刑にされる。そう分かっていて捕まえる事など出来るはずがない……オレの背中で泣いていた彼女を……)」
「分かりました。貴方が引き受けて下さらないのであれば、私がこの町の冒険者全員を招集し捕らえます。 私はこう見えても、元々はオリハルコランクの冒険者です。1人では無理でも、他の冒険者と連携すれば、何とかなると思いますので」
ロムがハヤトの目を真っ直ぐに見ながら言う。
「ロム様! ギルドマスターである貴方が、この様な危険なことを……」
「もちろん、危険である事は承知しています。ですが、あの者のを放っておけば、傷が癒え魔力が回復した頃に、また新たな犠牲者が出るかも知れません。それはギルドマスターとしても、ファルハンに生きる者としても感化出来ません。
それに、あの者がレギオンとやらに精神支配を受けて殺戮を行ったのであれば、望まぬ殺戮だったのかも知れません。ならば、それこそ深い悲しみと後悔に苛まれながら、したくも無い殺戮をしていた事になります。此処から逃げた理由は分かりませんが、また精神支配を受け、同じ事をさせられる可能性もあるでしょう。ハヤトさん……それでも良いのですか?」
ハヤトは、ロムの話しを聞いて大きく深呼吸をすると、椅子から立ち上がって皆に伝えた。
「分かりました。オレが行きます」
「私も、ご一緒しましょうか?」
エリーヌが言うが、ハヤトは首を横に振る。
「いえ、大丈夫です。他のパーティーに所属するエリーヌさんを危険な目に合わせる訳にはいかない。それに、これはギルドからのオレに対する正式な依頼……ですよね?」
ランジの方を見ると、ランジは頷く。
「その通りです」
「では、行ってきます」
「ハヤトさん、これを持って行って下さい」
そう言うと、ロムは自分のポケットの中から、ポーションを2個取り出しハヤトに渡す。
「これは?」
「ハイポーションです。念のために持って行って下さい」
ハヤトが聞くと、ロムはニコっと笑みを浮かべた。
「ありがとうございます」
ハヤトは丁寧にお礼を言う。
『ハイポーション』ロムはハヤトに念のためと言って渡したが、実はかなり高価な物である。冒険者でもこのポーションを気安く使えるのはオリハルコンランク若くはミスリルランク以上の冒険者だろう。それ以下のランクの冒険者では、御守り代りと言っていい。
回復効果もかなりの物で、骨折や重度の火傷、切断された箇所の止血や切断面が綺麗であれば、時間は掛かるが接合まで可能だ。
値段の相場は金貨10枚と言ったところで、普通のポーションは銀貨2枚から4枚なので、ランクの低い冒険者はなかなか気軽に使えないのである。
だが、そのハイポーションを易々と渡すところなどは、流石ギルドマスターである。
と、感心しつつもハヤトは、マリアを追う為に部屋を後にする。
ーーーー
ハヤトはギルドを出てすぐに、マリアの行方を探す。
だが、すでに陽は落ち辺りは暗くなっているため、探すにしても何処を探せばいいか見当がつかない。
「まだ体力も完全に戻っていないようだから、そう遠くへは行けないだろうけど……」
そう呟いたと同時にセラの声が頭に聞こえる。
「モニターを角膜へ投写します。対象者の魔力パターンをレーダーにて捜索……ヒット、対象者を発見。誘導を開始しますか?」
「うおっ! ビックリした。セラはそんなこともできるのか」
「はい、現状この世界の魔素と対象者の魔力パターンさえ分れば半径2㎞の範囲内で捜索が可能です」
「助かった。しかし、いつの間に……」
いつの間に解析したんだ?と聞こうと思えば、聞かれる事が分かっているかのように、瞬時に答えが返ってくる。
「隼人様が、触れた事のある物であれば人間以外の生物も含めて、すべて解析・登録可能です」
「AI凄いな……」
「ありがとうございます」
「よし、誘導を頼む」
「了解です。ではルート表示と身体強化を行います」
「ハハッ、カーナビかよ……けどサンキュー」
この世界では、全ての生物が多かれ少なかれ魔力を持っており、指紋や声紋のように魔力も個人や個体によって判別出来る。セラはそれを独自の判断でやってのけたようである。そして、ハヤトが角膜に投射されているマップを確認すると、すでにマリアは町の東側から出て、一番近い所からラグラの森へ入っている。
セラの誘導と身体強化の影響で、考えられない位の速さで移動する。捕まえると言う事も勿論だが、それ以上にマリア身体が心配であった。
ーーーー
「いた!」
ハヤトは森の木にもたれて、辛そうに座り込んでいるマリアを発見した。そして、マリアの視線の先に巨大な何かがうっすらと見える。
傷は塞がっていても、魔力、体力共に殆ど回復していない状態のマリアは『グランチュラ』に遭遇してしまった自分の不運さに笑いがこみ上げてくる。
「ふふ……お父様、お母様……私は仇を打つ事が出来そうに有りません……申し訳ございません……ごめんね……ユーリ……」
マリアは大粒の涙を流し自分の人生を振り返っていた。だが、思い出すのは家族が殺されてからの辛い日々ばかり。
精神支配から解放され、今までした事の罪の意識に苛まれた、そしてどうせ死ぬなら家族の仇を討ってからと考えて逃げたのに、こんな所で魔物に襲われて最後を迎える事が悔しくてならなかった。
「こんな所で死にたくない! 私はまだ何も出来ていない! 仇討ちも、罪滅ぼしも…………誰か……助けて……」
そんなマリアの気持ちなど露知らず、この目の前の体が大きいくせ異常にすばしっこい大蜘蛛は警戒しながら、マリアを観察している。
もし、マリアが万全の状態ならば、問題なく討伐できるが、歩く事もままならない今の状態ならばとても敵わない。
そして、この大蜘蛛も目の前の餌が弱っていると知っているので、無理はせずじっくりと隙が出来るのを待っているのだろう。だが、それがマリアと大蜘蛛の命運を分けた。
大蜘蛛は何かが近づいてくるのを感じ取って後ろに下がり、近づいてくるハヤトを見つけると、陰から注意深く観察する。そして、マリアはハヤトに気づくと縋るような目でハヤトを見つめ懇願する。
「助け……て……うっ……私は……こんな所で死ねないの……お願い……」
マリアの悲痛な願いがハヤトの心を刺す。
「果たさなければならない事があるの! 仇討ちも…今までした事の罪滅ぼしも……お願い!……助けてくれるのなら……私の全てを貴方に捧げてもいい! お願い……」
「分かった。安心して休むといい、オレが必ず助ける」
ハヤトの言葉を聞届け、マリアは安心したように気を失った。
「と言う事だ、諦めろよ…………うわっ、デカ!気持ちわる…」
ハヤトは何かがいると言う事は分かっていたが、こんな大きさの蜘蛛だとは思ってもみなかった。
「隼人様、戦いは私がサポートを行いますが、よろしいですか?」
セラが問いかけて来たので任せることにした。
「……よろしく」
「了解です」
大蜘蛛は急に現れた生物に対して口からクモの糸を噴射する。ハヤト(セラ)は手を前に出すと突風が発生しクモの糸は飛んできた方向へ吹き飛ぶ、だがクモの糸が吹き飛んだ瞬間に大蜘蛛の姿が見えなくなる。
「後方の頭上約5メートルに敵影。サーチモードを魔力感知から暗視モードに切り替えます」
セラの言う方向を見ると、ハヤトの目には、姿を隠した大蜘蛛がハッキリと見えた。
「そこか……くそっ届かないぞ……森の中じゃ炎系の魔法は使えないし……」
と言いながらハヤトが悔しそうに大蜘蛛を見上げると、体が勝手に剣を振る。
大蜘蛛は、木の上に隠れてこちらの様子を伺っていたが、その木ごと真っ二つになり落ちてきた。
「任務完了。通常モードに移行します」
大蜘蛛が死んだのを確認すると、ハヤトは気を失っているマリアの口に少しずつ、ゆっくりとハイポーションを流し込んで行く。
「セラ、どうかな?」
「スキャン……ハイポーションの効果により、危険な状態からは脱しましたが、依然、身体的・精神的疲労が激しく休息が必要です」
「そうか……なら、すぐに町へ戻る」
ハヤトはマリアを背中に抱え身体強化を発動し、エルマの街まで戻るとギルドには行かずに宿屋に入り、マリアをベッドへ寝かせ、少し様子を見て、自分も床に座り込むとそのまま寝込んだ。
ーーーー
「ピピピピ……αCore稼働率75%・βCore稼働率20%…深刻なerrorのため、修復には時間が必要・γCore稼働率12%」
朝日の眩しい光に晒され、ハヤトが目を覚ますと、ベッドが空になっており、自分に毛布が掛けられていた。
「……逃げたか……それでもいいさ。捕まれば拷問されて死刑になるんだ。やりたい事も有ると言っていたし……ランジさんとロムさんには申し訳ないけど、探したけど見つけられなかったって報告するか…………さて朝飯でも食べに行くか」
ハヤトは、どこか心のつっかえ取れた様に、スッキリとした気持ちで立ち上がって部屋の扉に手を掛けようとしたその時、コンコンとノックの音が聞こえた。
「うん? 誰だ……」
ハヤトは、不信に思いながらも返事をする。
「はい」
すると扉の向こうから女性の声がする。
「失礼致します。朝食をお持ちしました」
「うん? この宿屋に朝食を部屋まで持って来るサービスなんてあったかな?」
ハヤトは独り言を呟きながら扉を開けて、とんでもなく驚く。
「あ……あんた……何をやってんだよ……」
そこに立っていたのは、食事を持ったマリアだった。
「はい?」
驚いている、ハヤトを横目にマリアは、食事を机の上に置く。
「逃げたんじゃ……」
「何故ですか? お約束したじゃないですか? 助けてくれたら、私の全てを貴方に捧げると」
「いや……まぁ、確かに言ってたけど……」
「さぁどうぞ、お召し上がりください」
マリアは、昨日までとは別人のように振舞っている。
ハイポーションが効いたのか顔色も少し良くなり、両目の下に描かれていた赤い筋の模様も消されていて、胸の辺りまで伸びた金色の髪の毛は、無造作に1つに束ねられているものの、流れるように美しい。
しかも、女性にしては背も高く、痩せ過ぎていない体型に、膨よかな胸がローブの上からでも分かる。誰もが見惚れるような女性だろう。そして、ハヤトもそんな1人でマリアに見惚れている。
だが突然、グゥーとお腹の音が部屋に響くと、マリアが顔を真っ赤にして俯いた。
「し……失礼しました……」
「えっ…………あっ、いや……けど、あんたの分は?」
「私は、お金を持っていませんので、ご主人様の分のみ宿屋の主人から頂いて来ました。それから今後、私の事は『マリア』とお呼びください」
「ど……どうしたんだ……?」
ハヤトは、しどろもどろになりながらもマリアに問いかける。
「私はご主人様に全てを捧げた身、言うならば『下僕』です。ですので、その様に接して下さって構いません」
ハヤトは、マリアの態度に圧倒され、何も言えず気の無い返事をする。
「……あぁ」
マリアはニコッと微笑み、ハヤトに会釈する。
「ご主人様、これから宜しくお願い致します。それからこれを」
そう言うと、マリアは服のポケットから、1枚の羊皮紙を取り出した。
「ご主人様、この羊皮紙をご存じですか?」
「……いや、知らない……それとご主人様は止めてくれ、名前で呼んでくれて構わない」
「承知致しました。ではこれより『ハヤト様』とお呼び致します。それと、この羊皮紙に書いている模様の真ん中に魔力を注いで頂けますか」
ハヤトは、言われた通りに羊皮紙の真ん中にに魔力を込めると、模様の色が青から、赤に変色した。
「では、それを私に」
ハヤトは、意味が分からないまま言う通りに羊皮紙を渡すとマリアはローブから、豊な胸の上部を裸けさせると、左側の胸に羊皮紙に書かれた模様を押し付けた。
「うっ……あぁぁぁ………………ハァハァ……」
マリアは苦悶の表情を浮かべ、苦痛に耐えている。
「お……おい……何を」
「……ハァハァ……大丈夫です……これは、この胸に付いた模様は、『魂縛紋(こんばくもん)』と言うもので、これで私は、ハヤト様の命令に逆らう事が出来なくなりました」
「なっ……なぜそんな事を……」
「ハヤト様に信じて戴く為、そして私の覚悟の為です」
毅然とした態度で答えるマリアに、ハヤトは戸惑ったが、あれこれ考えても仕方がないので、まずはマリアの言う事を信じる事にした。
「ところで、オレの命令に逆らえばどうなるんだ?」
ハヤトは一応聞いてみる。もし、「命令に逆らえば死にます」なんて言われたら大変だと考えたからである。
「慣れる事のない激痛が身体を襲います」
「慣れる事のない?」
「はい。痛みと言うのは、鍛えればある程度我慢が出来るようになります。しかし、この魂縛紋の痛みは慣れる事が出来ない様になっているそうです」
「物騒な物だな……けど、本当にそれで良いのか?」
「先ほども申し上げましたが、これは私の覚悟です」
ハヤトは、彼女の決意にこれ以上あれこれ言うのは、逆に失礼だと感じ疑問に思っていた言葉を飲み込んだ。
「わかった、これからよろしくな。それから、えっと……これはマリアさんが食べるといい。オレは下で食べて来るよ」
「ハヤト様、『マリア』です! それに、ハヤト様だけお召し上がり下さい」
「あっ……ゴメン……」
「ハヤト様!! どこの世界に『下僕』に謝る主がいるのですか!」
「ごめんなさい……あっ……」
「もう…………」
マリアは頭を抱え、首を振る。そして、ハヤトは革の巾着袋から、銀貨1枚を取り出して渡し、下僕となったマリアに初めての命令をする。
「なぁマリア、その銀貨で同じ食事をもう一つ買って来てくれないか?」
「……畏まりました」
マリアは恭しく頭を下げ部屋を出て行く。
しばらくして、マリアは同じ食事を持って来た。
「さあ、一緒に食べよう」
「私は、下僕です。主と同じ机に座る事など許されません」
そう言って、マリアは一礼する。
「マリア、命令だ。そこに座って一緒に食べよう」
「……命令と仰るならば……畏まりました」
やたらと態度と考えの固いマリアに戸惑いながらもハヤトと、マリアは朝食を一緒に摂るのであった。
20
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる