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002 ドキドキお天気お姉さん

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「ヤダッ、こわいんだから、やめてよッ!」

愛理にはそうした免疫への耐性は無かったようで、この事から予想以上に怯えさせることとなった。

愛理の足はすぐにガクガクと震えだして、いまや立っていることもやっとのようだ。



理香はオロオロとして、植木鉢もヘロヘロと彷徨うばかりとなってしまい、愛理は知らずに、体をよろけて膝を折るカタチとなった。

「キャアァーッ!」

《パッッシャーン!》

ジョウロに入った水が床へと落ちて、大きな音をたてて響かせた。



愛理がその音を聞いて我を取り戻すと、心を取り乱していた理香は、胸をひと撫ですることになった。



「はー良かったぁ。ちょっぴりかるく驚かそうとしただけなのに、少しやり過ぎちゃったようね。でも愛理も悪いんだから、、、ごめんね、怖かったでしょ?」

「理香ひどいよ。私がこーゆーのに弱いことを知っていたじゃない。それなのにこんなイジワルをし、、、って、植木鉢!」



愛理がアタフタと慌てながら指を差した方向には、すでに自由落下に入っていた植木鉢があった。

理香がこれまでコントロールしていたドローン、もとい植木鉢は、もはや制御不能となっていたのだーー



「あマズい! コラ、まちなさーーアアッ!」



理香が気がついたときには、植木鉢はもうすでにテラスの外へと、その姿を消してしまっていた。







家を出てから8分ほど歩いていくと、建設前には日照権とかなんやらで、当時は反対運動の声が猛々しかった、地上21階建ての高級マンションがある前を通ることになる。

この辺りは閑静な生活道路になっていて、ふだんの高校で通学に使われている、バス停のある表通りとはだいぶ離れていた。

車で通勤する人も多く、歩く人もたまにしか見なくて、通学路でここを使っているのは俺くらいのものだった。



「早く出るとやっぱねみーわ。フアァ」

俺は本日2度目になる大あくびをして歩いていた。



「ああっ、そこの君、危なーいッ! 避けてぇー!」

突然に女性の悲鳴が上空から聞こえてきた。



朝から一体なんの悲鳴だろう?

俺は呑気に立ち止まると、ポケットに手を突っ込んだままの状態で上を振り向いた。だがその悲鳴の警告は、やがて俺自身に向けられたものだと知ることになった。



それは何とーーー?????

はっ鉢植え??? 

それが急激な速度で俺に迫ってきているッ!!



この時、全身をアドレナリンがブワッと駆け巡り、死への直感をダイレクトに感じた俺は、思わずにバンザイの姿勢をとりながら、これを命懸けで且つ緊急的に躱すことに成功していた。



ガチャーーーンンン!



こ、こえぇッ!



やッ、ヤバかった。

ホントに危なかったぁッッ!!!



落ちてきた鉢植えは地面に叩きつけられて、それは無惨なほどに粉々と飛散していた。



人はこのように突発的なパニックに出会ってしまうと、目の前にある現実から一旦目を背けようとして気持ちを落ち着かせるために、普段何気のないことを思い出してなぞろうとする傾向が強くある。



かくいう俺も、心臓がバクンバクンと大きな鼓動をおこしていて、ドキンドキンと動悸が激しく最高調に苦しい最中だというのに、

(そういえば今朝の出かけに見ていたテレビの天気予報は何だったかな。お天気お姉さんは今朝も刺激的なエロい格好だった。でもいくらなんでもあそこまで肌を露出してないと、視聴率が厳しいなんていかがなものか。とはいってもそれを毎朝楽しみに見ているのは俺もなんだ。今日もきわどくエロかったし、ウエヘヘ)

などと、どうでもよくくだらないことを考えていたのが実にいけなかった。



「よかったあ。、、(ポロリ)、、、って、えっ? 、、、キャアァーーーーッ! よけて!よけて! ヤダッ2回目ー!」



ヒューーー   、、、ゥウンーーー



ズコーンッ!



なんの警戒もしていなかった俺の頭にそれは当たった。それは水がなみなみたっぷりと入ったプラスチック製のジョウロだったのだ。
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