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4章 涙の別れと笑顔の再会
狼狽え~タナーク・エリオント~
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ロンが気絶した。
「ロン…?………ロン!」
何度呼びかけても答えない。息はしているから、何も問題はない。ないはずだ。
しかし、先程のロンの様子は何かがおかしかった。その瞳には、恐怖が見えた。
何に恐怖したのだろう。僕?
確かに僕は、怒りが度を超えると、いつもの僕を保てなくなる。それが原因なのかもしれない。
僕の本気の怒りをロンにぶつけたのは、これが初めてだ。だから、驚いたのかも。
大丈夫。きっと明日になれば、また以前のように、良い関係に戻れる。
とりあえず今は、体を拭いてあげよう。風呂もまだのはずだ。
僕は脱衣所に用意してあるタオルをお湯で濡らし、ロンの体を丁寧に拭いた。
途中、ロンが可愛い声を出すのを聞いて、襲いそうになった。襲わなかったけど。
ロンが着ていた服をたたみ、僕の予備の寝間着を着せた。
そしてベッドに上がり、ロンの横に寝転がった。
「ロン、ごめんね。僕、怖かったよね。明日、謝らせて」
そう言って僕は、目を閉じた。
翌日、ロンは来なかった。代わりにエルが来た。
「どうして?どうしてロンは来ないの?」
「ロンが、あなたに怯えているからです。しばらくは兄弟の仕事の手伝いをしてもらっています」
怯えている。やっぱり、僕を見て、恐怖したんだ。
「イレークとクリークは大丈夫なの?僕たち、顔似てるけど……」
「さあ、どうでしょう。それはまだ分かりませんが、彼らは雰囲気であなたがたを見分けているそうです。なので、顔は同じでも雰囲気の違うお二人なら大丈夫ではないかと、言っておりました」
二人は良くて、僕はだめ。二人は会えるのに、僕は会えない。
好きな人と会えないのがこんなに悲しくて苦しいなんて、知らなかった。
「私では不満でしょうが、我慢してください」
「不満じゃない。けど………」
でも、できれば好きな人と、できるだけ長くいたい。
僕の表情を見て、エルが慰めるように言った。
「お二人に何があったのかは分かりませんが、少しの辛抱です。耐えてください」
「そう……だよな。すぐに、会えるよな」
そう思っていた。そうであって欲しかった。
僕が謝れたのは、それから2ヶ月後だった。
「ロン…?………ロン!」
何度呼びかけても答えない。息はしているから、何も問題はない。ないはずだ。
しかし、先程のロンの様子は何かがおかしかった。その瞳には、恐怖が見えた。
何に恐怖したのだろう。僕?
確かに僕は、怒りが度を超えると、いつもの僕を保てなくなる。それが原因なのかもしれない。
僕の本気の怒りをロンにぶつけたのは、これが初めてだ。だから、驚いたのかも。
大丈夫。きっと明日になれば、また以前のように、良い関係に戻れる。
とりあえず今は、体を拭いてあげよう。風呂もまだのはずだ。
僕は脱衣所に用意してあるタオルをお湯で濡らし、ロンの体を丁寧に拭いた。
途中、ロンが可愛い声を出すのを聞いて、襲いそうになった。襲わなかったけど。
ロンが着ていた服をたたみ、僕の予備の寝間着を着せた。
そしてベッドに上がり、ロンの横に寝転がった。
「ロン、ごめんね。僕、怖かったよね。明日、謝らせて」
そう言って僕は、目を閉じた。
翌日、ロンは来なかった。代わりにエルが来た。
「どうして?どうしてロンは来ないの?」
「ロンが、あなたに怯えているからです。しばらくは兄弟の仕事の手伝いをしてもらっています」
怯えている。やっぱり、僕を見て、恐怖したんだ。
「イレークとクリークは大丈夫なの?僕たち、顔似てるけど……」
「さあ、どうでしょう。それはまだ分かりませんが、彼らは雰囲気であなたがたを見分けているそうです。なので、顔は同じでも雰囲気の違うお二人なら大丈夫ではないかと、言っておりました」
二人は良くて、僕はだめ。二人は会えるのに、僕は会えない。
好きな人と会えないのがこんなに悲しくて苦しいなんて、知らなかった。
「私では不満でしょうが、我慢してください」
「不満じゃない。けど………」
でも、できれば好きな人と、できるだけ長くいたい。
僕の表情を見て、エルが慰めるように言った。
「お二人に何があったのかは分かりませんが、少しの辛抱です。耐えてください」
「そう……だよな。すぐに、会えるよな」
そう思っていた。そうであって欲しかった。
僕が謝れたのは、それから2ヶ月後だった。
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