平凡な三つ子は平凡に暮らす...はずだった

月兎

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5章 三男の距離

複雑な気持ち

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「んん……」

 目を覚ましたロンは、昨日のことをブツブツと呟きながら、振り返った。

「たしか、お城に戻ってきてー、タナーク王子に連れられてー、部屋に入ったら、王子が………」

 そこまで言ってロンは、ベッドから素早く降り、未だに寝ているタナークの顔を見た。
 その顔は今まで何度も見てきた寝顔で、愛おしく感じるはずだった。
 でも、今日感じたのは恐怖だった。

「なんで?なんでー?」

 ロン自身も戸惑っていた。
 大好きな人の、無防備な寝顔。愛しくて堪らないはずなのに、見たくない。見ることが出来ない。
 もし開かれた目が昨日のあの目だったらと思うと、恐怖で体が震える。
 ロンは耐えられなくなって、綺麗に畳まれた服を掴み、そっと部屋を出た。






 部屋に戻ると、誰もいなかった。
 今までも何度か同じ状況があったが、この時のロンは心細かった。
 ロンはベッドに上がり、布団を頭からかぶり、2人の帰りを待った。



「ただいまー」

「ロン、いるかー?」

 数分後、二人は帰ってきた。
 二人の声を聞いたロンは、布団から出て、駆け寄った。

「ランー!レンー!」

 その目には涙がたまり、今にもこぼれ落ちそうだった。

「どうしたの!?」

「何があった?」

 ロンが昨夜のことを話すと、二人は悲しそうに顔を歪めた。

「タナーク王子が嫌いなわけじゃないの。でも、でもねー………怖いの………」

「とにかくエルさんに相談してみよう」

「そうだな。仕事も、俺たちの仕事の手伝いにしてもらおう」

 三人は早速、起きているであろうエルオリントの部屋に向かった。





「エルさん、起きてますか?」

 ドアをノックすると、既に支度を終えたエルオリントが出た。

「起きてるよ。どうしたの?」

「あの、相談なんですけど………」

 そう切り出し、三人はロンとタナークについて話した。
 それを聞いたエルオリントは、頷いた。

「事情は分かった。先輩に言って、しばらくタナーク王子の近侍は僕がするよ」

「え、あのー、いいんですかー?」

 ロンが申し訳なさそうに尋ねると、エルオリントは笑いながら言った。

「大丈夫。以前は三人全員の近侍をしていたんだ。一人に減るんだから、楽な方だよ」

 エルオリントの言葉にほっとしたロンは、頭を下げた。

「お願いしますー。僕も、早くお仕事に戻れるよう、頑張りますのでー………」

「精神的な問題だから、無理だけはしないようにね」

 エルオリントの言葉に、ロンは笑って頷いた。
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