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4章 涙の別れと笑顔の再会
話したい〜イレーク・エリオント〜
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「ちょ、イレーク王子!?」
ランが困惑しているけど、今はそれどころじゃない。
急いで自分の部屋に向かう。
ドアを開け放ち、ランが入ったのを確認した後にドアを閉め、後ろを振り返ってランを抱きしめた。
「!?え?えっと……」
いまいち状況が分かっていないらしく、ランは困った声を出す。
僕は自分の思っていた事を話した。
「怖かった」
「え……?」
ランが声を漏らす。
それに構わず、僕は続ける。
「あの時……城に帰ろうって言った時、ランに今はまだダメだと言われて、すごく怖かったんだ。もしかしたらもう、僕達の元に帰ってきてくれないんじゃないかって……」
「それは……!」
「分かってる。父上に聞いた。作戦だったんだろ?」
ランが首を振って肯定した。
「でも、拒絶された時は、本当に怖かった。絶対に戻ってきてくれるって、自信があったから」
ぎゅっとランを抱きしめる腕に力が入る。
すると、ランはぎゅっと抱き締め返してきた。
「あの、その……ごめんなさい。すごく心配かけて、そんなに悩ませてしまって……」
小さく、でもしっかりとした声が聞こえる。
あぁ、これだけで許してしまいたくなる。本当はもっと言いたいことがあったはずなのに。
頭を撫でると、すすり泣く声が聞こえてきた。
「今日は泣いてばっかだな」
「すみませ……涙腺が………一度緩むと、な、なかなか、治らなくって……」
そう言って顔を手で覆ってしまった。
もったいない。絶対に可愛いはずなのに、なぜ隠すのか。
「顔、隠さないで」
「へ?い、いや……」
「僕を心配させた罰だ。今夜はランの嫌がること、たくさんする。それを受け入れるなら、僕も今回のことは許す」
「もし、受け入れなかったら……?」
「今すぐ僕と婚約してもらう」
僕の言葉に、ランは目を見開いた。
「いや、それは………」
「分かってる。今回ランが出ていった理由だから、だろ?それとも、僕と婚約するのは嫌?」
「それは違う!けど……」
「良かった。まぁたしかに婚約は言い過ぎた。でも、もし受け入れないなら、僕は相談もなしに出ていったこと、ずっと許さない」
相談してくれなかったことへの怒りか、自然と声が低くなる。
そんな僕にランは怯え、そして頷いた。
「分かりました。それでいいのなら、僕は今夜だけ、イレーク王子の言う通りにします」
こうして僕達の交渉は成立したのである。
ランが困惑しているけど、今はそれどころじゃない。
急いで自分の部屋に向かう。
ドアを開け放ち、ランが入ったのを確認した後にドアを閉め、後ろを振り返ってランを抱きしめた。
「!?え?えっと……」
いまいち状況が分かっていないらしく、ランは困った声を出す。
僕は自分の思っていた事を話した。
「怖かった」
「え……?」
ランが声を漏らす。
それに構わず、僕は続ける。
「あの時……城に帰ろうって言った時、ランに今はまだダメだと言われて、すごく怖かったんだ。もしかしたらもう、僕達の元に帰ってきてくれないんじゃないかって……」
「それは……!」
「分かってる。父上に聞いた。作戦だったんだろ?」
ランが首を振って肯定した。
「でも、拒絶された時は、本当に怖かった。絶対に戻ってきてくれるって、自信があったから」
ぎゅっとランを抱きしめる腕に力が入る。
すると、ランはぎゅっと抱き締め返してきた。
「あの、その……ごめんなさい。すごく心配かけて、そんなに悩ませてしまって……」
小さく、でもしっかりとした声が聞こえる。
あぁ、これだけで許してしまいたくなる。本当はもっと言いたいことがあったはずなのに。
頭を撫でると、すすり泣く声が聞こえてきた。
「今日は泣いてばっかだな」
「すみませ……涙腺が………一度緩むと、な、なかなか、治らなくって……」
そう言って顔を手で覆ってしまった。
もったいない。絶対に可愛いはずなのに、なぜ隠すのか。
「顔、隠さないで」
「へ?い、いや……」
「僕を心配させた罰だ。今夜はランの嫌がること、たくさんする。それを受け入れるなら、僕も今回のことは許す」
「もし、受け入れなかったら……?」
「今すぐ僕と婚約してもらう」
僕の言葉に、ランは目を見開いた。
「いや、それは………」
「分かってる。今回ランが出ていった理由だから、だろ?それとも、僕と婚約するのは嫌?」
「それは違う!けど……」
「良かった。まぁたしかに婚約は言い過ぎた。でも、もし受け入れないなら、僕は相談もなしに出ていったこと、ずっと許さない」
相談してくれなかったことへの怒りか、自然と声が低くなる。
そんな僕にランは怯え、そして頷いた。
「分かりました。それでいいのなら、僕は今夜だけ、イレーク王子の言う通りにします」
こうして僕達の交渉は成立したのである。
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