平凡な三つ子は平凡に暮らす...はずだった

月兎

文字の大きさ
上 下
56 / 75
4章 涙の別れと笑顔の再会

再び訪問

しおりを挟む
「な、なんで、あなたがここに居るんですか……?」

 レインは、来客に目を向け、その人の名を口にした。

「エリオリック国王陛下」

 来客とは、この国の王、そして先日レインたちを助けてくれた救世主……エリオリックだった。
 レインの驚きの声に、エリオリックは頬を掻きながら、申し訳なさそうに言った。

「いやぁー、すまないね。事前に言おうとしたのだが、息子達がこちらに向かって言ったというのでね。私も急いで来たんだよ。あの子たちと鉢合わせしなくてよかったー……」

 そうほっと胸をなで下ろすエリオリックに、レインは聞いた。

「なぜ、急いで来たんですか?」

 レインの疑問に、エリオリックは真剣な面持ちで答えた。

「今はあの子たちを合わせるわけにはいかないからね。だって、いるんだろ?逃げてきた君の息子達が。この様子だと見つかってないみたいだけど」

 エリオリックの言葉に、レインは目を丸くした。
 その反応を肯定と取ったエリオリックは、目的を告げる。

「私を、3人に合わせてくれないかね?」

「え……?いや、でも……」

 渋るレインに、エリオリックは続けて言った。

「別に、3人を罰しようとか、釣れて帰ろうとか、そんなんじゃないんだ。ただ、話をしたいだけだ」

 国王にそこまで言われてしまったら、逆らうことはできない。
 レインは、「こちらへどうぞ」と言って、エリオリックを家に招き入れた。
 ソファーに座ってもらうと、3人のいるであろう方向を向いて、「おいで」と言った。
 先程までの話を聞いていた3人は、素直に姿を現した。

「ごめんね、いきなり来て。会うのは久しぶりだね」

 そう言って微笑むエリオリックに、3人は頭を下げた。

「ごめんなさい!」

「勝手に出て行ってしまって……」

「どんな罰でも受けますー……」

 そんな3人に、エリオリックは首を横に振る。

「いいんだよ、謝らなくて。罪もない。全部こちらが悪いんだ。エルから聞いたよ。君たち、王子の悪口が増えてきたから城を出たんだろ?」

 その言葉に、3人は頷く。

「それはこちらが悪い。公言もせずに放置していたからな」

「僕達は…戻った方がいいですか……?」

 その言葉に、エリオリックはまた首を横に振った。

「いや、君たちはここにいてくれ」

 意外な言葉に、3人とレインは目を丸くした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

王と宰相は妻達黙認の秘密の関係

ミクリ21 (新)
BL
王と宰相は、妻も子もいるけど秘密の関係。 でも妻達は黙認している。 だって妻達は………。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...