平凡な三つ子は平凡に暮らす...はずだった

月兎

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4章 涙の別れと笑顔の再会

聞いてしまった2〜ラン・アルテント〜

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 部屋に戻ると、既にレンとロンがいた。

「ただいま……」

「おかえり…ってラン!?どうした?」

「なにか辛いことあったー?」

 ひどい顔をしていたらしく、2人から心配の言葉がかけられる。

「いや、ちょっとね……」

 そう言って僕は、今日聞いた会話を2人に話した。





「あー、その話か…」

「え?レン、知ってたの?」

「僕も知ってたよー」

 2人も同じような会話を聞いたらしく、うんうんと頷いていた。

「俺達は悪いことをしてるわけじゃない。それは確かだ。恋をすることだって許されてる。でも、相手はそうじゃない。だってそうだろ?王族は大体、異性と結婚する。なのに、今回結婚する相手が同性なんて、あってはならない事って考える人たちが出てきてもおかしくはない」

「僕はねー、お城を出た方がいいんじゃないかなーって、ずーっと考えてたの」

「城を、出る…?」

 ロンの考えに、僕は思わず声が出ていた。

「うん、そうだよー。だって、僕達がいるから、好きな人の悪口が増えるんだよー?なら僕は、ここを離れてお家に帰る。そしたら、悪口も減って、王子様方にも、もーっとふさわしい相手ができるかもしれないでしょ?」

 その言葉に、レンは頷いていた。
 確かに、離れるのは辛い。
 でも、好きな人の悪口を聞くのは、もっと辛い。
 僕は頷いた。

「そうだね……僕達はもう、ここにいちゃいけない……一刻も早くここを離れないと」

 話し合いの結果、今日の夜……みんなが寝静まった頃にお城から出て行くことにした。

「今夜、ランってお呼ばれしてるよね?」

「うん。だから待って欲しいんだけど……」

 僕が言うと、2人は笑顔で言った。

「いいって!俺も、クリーク王子に言いたいことあるし」

「僕もー!」

「ありがとう。……じゃあ、始めようか」

 僕の言葉を合図に、僕達は荷物をまとめた。
 幸い、家から持ってきたものが少ないため、荷造りはすぐに終わった。
 僕達の私物がなくなった部屋は、どこか淋しかった。
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