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3章 騒動
プレゼント2
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「失礼します、タナーク王子様」
ロンが部屋に入ると、ドヨーンとした空気が漂っていた。
ロンの声に、椅子に座ったまま首を傾けたタナークの顔は、明らかに疲れていた。
「えっ!?タナーク王子!?だ、大丈夫………」
「大丈夫……多分………」
「ええーっ!多分じゃダメですよー!待っててください!リラックスできるお茶、入れてきますからー!」
そう言って部屋を出ようとしたロンを、タナークは呼び止めた。
「待って、ロン」
「え?なんですかー?急がないと………」
「いいから、こっち来て」
言われた通りに近づくと、いきなり腰に腕を回され、引き寄せられた。
「え?うわぁっ!」
ロンが驚きの声をあげるのにも構わず、すりすりとロンの身体に頬ずりをした。
「な、何してるんですかー………?」
「んー?ロン補充」
そう言って腕をずらすと、ポケットに何かが入っているのが分かった。
「ポケット、何入ってるの?」
「え?あっ!ちょっ!ダメですー!」
ロンの声は届かず、タナークはサッとポケットから何かを取り出した。
それを見た瞬間、タナークの周りの空気が変わった。
「ロン……?これ、なに……?贈り物?」
「うぅ…はい……」
ロンが肯定した瞬間、タナークのなんとも形容しがたい感情が、爆発しそうになる。
しかし、その感情はロンの次の言葉で無くなった。
「あーあ……もっとスマートに渡すはずだったのにー……作戦失敗だー……」
その言葉を聞いた途端、ばっと顔を上げた。
その先には、恥ずかしそうに頬をかくロンの姿があった。
「え…?これ、僕に……?」
タナークが尋ねると、ロンはこくりと頷いた。
「昨日、お出かけしたんですけどー、その時に、クリーク王子に似合いそうなのを見つけてしまいましてー……買わせていただきましたー……」
言いながらだんだんと顔を真っ赤にするロンに、タナークは満面の笑みを向けた。
「嬉しいな。ありがとう」
「いやー、今思うと、なんとも自分勝手な行動でー……申し訳ないですー………」
「ね、開けても?」
こくりと頷いたロンを見て、タナークは包みを開けた。
そこには、山吹色の花びらを持つ花のブローチがあった。
「これ、僕に?」
「はいー……」
「本当に、ありがとう」
そう言ってタナークは、ロンをいっそう強く抱きしめた。
「お、今日はお前のが早かったな」
部屋に戻ったカルエット・テリーオルトは、既に部屋に戻っていた同室のエルオリントに声を掛けた。
「ああ。今日は仕事が少なかったからな」
エルオリントはそう言いながら、タオルをカルエットに差し出した。
タオルに触れたカルエットは、不思議そうに首を傾けた。
「あれ?いつものタオルと、違くない?気のせい?」
思ったことを口にすると、エルオリントは「ちっ、気付いたか…」と呟いて顔を顰めた。
そして、諦めたようにため息を吐くと、話し始めた。
「そうだよ、違う。昨日、買ってきたんだ。カル、最近言ってたろ?新しいタオル欲しーって。だから、いつも頑張ってるカルに、プレゼント」
そう言って差し出すエルオリントの手を掴み、ぐいっと引き寄せる。
「えっ!?ちょっ!おいっ!カル!」
「大丈夫!風呂は入ってきたから、汗くさくはないはずだよ!」
「そういう問題じゃない!」
腕の中でもがくエルオリントの耳元に顔を近付け、囁く。
「ありがとう、エル。大切にする」
その言葉にエルオリントは、一瞬目を見開き、そしてぶっきらぼうに言った。
「ど、どういたしまして……」
ロンが部屋に入ると、ドヨーンとした空気が漂っていた。
ロンの声に、椅子に座ったまま首を傾けたタナークの顔は、明らかに疲れていた。
「えっ!?タナーク王子!?だ、大丈夫………」
「大丈夫……多分………」
「ええーっ!多分じゃダメですよー!待っててください!リラックスできるお茶、入れてきますからー!」
そう言って部屋を出ようとしたロンを、タナークは呼び止めた。
「待って、ロン」
「え?なんですかー?急がないと………」
「いいから、こっち来て」
言われた通りに近づくと、いきなり腰に腕を回され、引き寄せられた。
「え?うわぁっ!」
ロンが驚きの声をあげるのにも構わず、すりすりとロンの身体に頬ずりをした。
「な、何してるんですかー………?」
「んー?ロン補充」
そう言って腕をずらすと、ポケットに何かが入っているのが分かった。
「ポケット、何入ってるの?」
「え?あっ!ちょっ!ダメですー!」
ロンの声は届かず、タナークはサッとポケットから何かを取り出した。
それを見た瞬間、タナークの周りの空気が変わった。
「ロン……?これ、なに……?贈り物?」
「うぅ…はい……」
ロンが肯定した瞬間、タナークのなんとも形容しがたい感情が、爆発しそうになる。
しかし、その感情はロンの次の言葉で無くなった。
「あーあ……もっとスマートに渡すはずだったのにー……作戦失敗だー……」
その言葉を聞いた途端、ばっと顔を上げた。
その先には、恥ずかしそうに頬をかくロンの姿があった。
「え…?これ、僕に……?」
タナークが尋ねると、ロンはこくりと頷いた。
「昨日、お出かけしたんですけどー、その時に、クリーク王子に似合いそうなのを見つけてしまいましてー……買わせていただきましたー……」
言いながらだんだんと顔を真っ赤にするロンに、タナークは満面の笑みを向けた。
「嬉しいな。ありがとう」
「いやー、今思うと、なんとも自分勝手な行動でー……申し訳ないですー………」
「ね、開けても?」
こくりと頷いたロンを見て、タナークは包みを開けた。
そこには、山吹色の花びらを持つ花のブローチがあった。
「これ、僕に?」
「はいー……」
「本当に、ありがとう」
そう言ってタナークは、ロンをいっそう強く抱きしめた。
「お、今日はお前のが早かったな」
部屋に戻ったカルエット・テリーオルトは、既に部屋に戻っていた同室のエルオリントに声を掛けた。
「ああ。今日は仕事が少なかったからな」
エルオリントはそう言いながら、タオルをカルエットに差し出した。
タオルに触れたカルエットは、不思議そうに首を傾けた。
「あれ?いつものタオルと、違くない?気のせい?」
思ったことを口にすると、エルオリントは「ちっ、気付いたか…」と呟いて顔を顰めた。
そして、諦めたようにため息を吐くと、話し始めた。
「そうだよ、違う。昨日、買ってきたんだ。カル、最近言ってたろ?新しいタオル欲しーって。だから、いつも頑張ってるカルに、プレゼント」
そう言って差し出すエルオリントの手を掴み、ぐいっと引き寄せる。
「えっ!?ちょっ!おいっ!カル!」
「大丈夫!風呂は入ってきたから、汗くさくはないはずだよ!」
「そういう問題じゃない!」
腕の中でもがくエルオリントの耳元に顔を近付け、囁く。
「ありがとう、エル。大切にする」
その言葉にエルオリントは、一瞬目を見開き、そしてぶっきらぼうに言った。
「ど、どういたしまして……」
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