平凡な三つ子は平凡に暮らす...はずだった

月兎

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3章 騒動

お出掛け1

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 家族で近況報告をした後、レイン、ルオネット、リンは帰っていった。
 帰っていく家族を見送っていた3人の元に、エルオリントが駆け寄った。

「大丈夫?また大臣たちが君たちに危害を加えたって聞いたんだけど…」

「大丈夫です!父さんもいたし、リンが録音してくれていたので、あの大臣たちは法で裁かれるって国王様も言ってました」

「でも、お休みが増えちゃったのは残念です」

「明日暇ですー。退屈ですー」

 彼らにとっては、危害を加えられたことより、それによって休みが増えてしまったことの方が嫌だったらしい。
 それに苦笑いを返すエルオリントに、ランが問う。

「エルさんは、お休みっていつですか?もう終わっちゃいましたか?」

「私は明日休みだけど…それがどうしたの?」

 エルオリントの答えを聞いた途端、3人の目はキラキラと輝いた。

「じゃあじゃあ!明日、一緒にお出掛けしましょ!」

 ランの言葉に、他の二人が「うんうん」と言いながら首を縦に振った。

「明日かぁー…」

 明日は、カルエットとの約束もない。

「大丈夫だよ。特に予定もないし」

 エルオリントがそう答えると、3人は更に目を輝かせた。

「やったー!約束ですよ!」

 そう言って3人は、自分たちの部屋に戻っていった。





「あのぉー……エルさん?」

「ん?なに?」

「この馬車は、なんですか?」

 次の日、指定された時間に門に行くと、そこには馬車があった。
 どうして馬車があるのか分からず、エルオリントに聞くと、彼は不思議そうに首を傾げた。

「え?馬車がないと出掛けられないじゃないですか」

「いや、歩いても行けますよね?」

 そう言うと、エルオリントは「ああ!」と言い、3人に説明した。

「確かに徒歩でも行けるけど、君たちは王子様方に見初められた、言わば婚約者だ。そんな人たちを歩かせる訳にはいかないんなだよ」

 エルオリントの言葉に、3人は驚いた。

『こ、婚約者ぁー!?』

「え?うん」

「いやいや、いやいやいや」

「確かに王子様方に連れてこられたけど………」

「婚約者って………気が早いんじゃ……」

「でも、やれる所までやっちゃったんでしょ?」

『うっ…!』

エルオリントが言った言葉に反論出来ず、言葉が詰まる。
 それを肯定ととったエルオリントが、続けて言う。

「少なくとも王子様方は、君たちを婚約者だと思ってるんじゃないかな?そんな人たちを馬車に乗せるのは、普通のことだと思うけど?」

 エルオリントの言葉に、嬉しいような、恥ずかしいような、複雑な気持ちになりながら、3人はエルオリントに促され、馬車に乗った。
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