38 / 75
3章 騒動
城へ行きましょう
しおりを挟む「郵便でーす」
家に向けて放たれた声に応えるように、パタパタと足音が近付いていく。
やがて玄関が開くと、一人の男性が出てくる。
「はい、ありがとうございます」
そう言って手紙を受け取ったのは、レイン・アルテント。三つ子の母親である。
「手紙…?誰からだ?」
裏を見ると、愛しい息子たちの名前が書いてあった。
その名前を見て、思わず笑みがこぼれる。
「お、どうしたんだ?そんな嬉しそうな顔しちゃって」
奥から出てきたのは、ルオネット・アルテント。レインの夫である。
「あの3人から手紙が来たんだ。忙しいだろうに…」
「手紙か!早く読もう!」
2人で笑みをたたえながら奥に入ると、末っ子のリンが絵を書いていた。
2人が部屋に入ってくるのを確認し、そしてレインの手に手紙が握られているのに気付き、途端に笑顔になる。
「わぁっ!お手紙?お手紙?ねぇ、リンにもある?」
期待に膨らんだ瞳でこちらを見るリンに頷いてみせると、リンの顔はぱぁっと明るくなった。
「ね、ね!早く読んで!」
リンの要望に応えるため、レインは椅子に座り、リン宛の封筒を開ける。
中には、綺麗な押し花と手紙が1枚入っていた。
手紙の内容を見ると、この押し花は先輩からの贈り物らしい。
「リン、これ。お兄ちゃんたちの先輩が、リンにプレゼントだって。お城の庭に咲いている花で作ったんだって。良かったね」
そう言って押し花を渡すと、リンは嬉しそうに受け取った。
そんなリンの様子を横目に、自分宛の手紙を開ける。中には手紙が2枚入っていた。
1枚目は、お仕事についてや、職場の先輩との交流についてだった。
もう1枚を見ると、恋のお悩み相談だった。
これにはどう反応すれば良いのか分からず、思わず苦笑してしまった。
ルオネット宛の封筒には、手紙が1枚入っていた。
その内容を読んでいくうちに、ルオネットの表情がどんどん険しくなる。
その様子に気付いたレインが、心配そうに尋ねた。
「おい、ルー…?どうした?」
「あいつら…誘拐されたって…」
「え!?誘拐!?」
「いや、無事だったらしいが、無理矢理発情させられたらしい。もしかしたら、あいつらの仕業じゃないか…?」
「そんな…!」
レインの顔がどんどん青ざめていく。
そんなレインの頭を引き寄せて、ポンポンと撫でた。
「大丈夫だ。俺が教えた通りに撃退したらしい」
「でも…!」
「それじゃ、明日城に行ってみるか?」
ルオネットの提案に、レインはぶんぶんと首を縦に振った。
「お父さん、お母さん、どうしたの?」
両親を心配して、リンが声をかける。
「あぁ、大丈夫。なんでもないよ。それよりリン、明日、お兄ちゃんたちのところに会いに行こっか」
その言葉に満面の笑みで頷くリンに、レインの表情も、幾分か柔らかくなる。
リンに本当のことは言わなかった。
言ったら多分、「お兄ちゃんたちはリンが守る!」と言って聞かないだろう。
だからあえて言わなかった。
ラン、レン、ロン…本当に大丈夫なんだろうか…
レインは心配しながら、明日城に行くことを改めて決意した。
0
お気に入りに追加
185
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)


初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる