平凡な三つ子は平凡に暮らす...はずだった

月兎

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2章 恋ってこんなに難しい。

次男の発情期1~レン・アルテント~

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   なんだ…?涼しくて、冷たくて、気持ちいい…

 目を開けると、クリーク王子がいた。ベッドの横に椅子を持ってきて、座っていた。
 片手を俺に向かってかざし、もう片方の手は俺の頭を撫でていた。そして、気になることが…

   クリーク王子の手が、薄緑色に淡く光っている。

「おう、じ…」

「あ、起きた…?大丈夫…じゃ、ないよね…」

「それ……光って…」

 俺が言うと、両手を俺からぱっと離し、申し訳なさそうに言った。

「ご、ごめんね…?いや、だったよね…もう、しないから…」

「なん、で…光って、た…?」

 俺が問うと、王子はぽつりぽつりと話し始めた。

「俺達兄弟はね、魔法が使えて…イレークもタナークも、魔法、嫌いみたいで…でも、俺だけこっそり練習してたんだ…いつか、役に立つかもしれないって、思って……それが、今日、だったみたい」

 そう言ってふわっと笑った。今朝のヘタレっぷりを感じさせない笑顔が綺麗で、思わず見とれていると

「あ、お水…喉、乾いたよね。今、持ってくるよ」

 と言って立ち上がり、遠ざかろうとする。

   まって…行かないで…

 俺はクリーク王子の服の袖を引っ張って止めた。
 王子は驚いた顔でこっちを振り返った。

「ど、どうしたの…?」

「いか、ないで…」

「でも、お水…」

「いい、から……離れ、ない…で…」

 クリーク王子は少し困ったような素振りを見せ、やがて諦めたように椅子に座り直した。
 そしておもむろに手をかざすと、手が淡く光だし、その光が何かを形作って…
 光が消えると、そこにはグラスのコップが握られていた。
 驚いたのもつかの間、クリーク王子の手が、今度は青白く光る。すると、どこからともなく水が現れ、コップに注がれた。

「なに、それ…?」

「これも、魔法…なんだよ。僕達は、魔法を使えば、大体のことが、できるんだ……それが、イレークも、クリークも、いや、らしくて…」

「すげぇ…綺麗…」

「え…?」

「ふわって…光って……すごく、おちつく…」

「あ、ありがとう。そんなこと言ってくれるの、レンが、初めて…だよ」

 あぁ、やっぱり笑顔が綺麗だ。いっつもそうしてればいいのに。

「はい、お水。その、毒とか、入ってないから…」

 そう言って俺の唇に優しくコップを当て、水を飲ませてくれた。相当喉が乾いていたらしい。水がめっちゃ美味い。

「あ、そうだ。これ、タオル…汗、凄いよ?自分で、拭ける…?」

 確かにベタベタしてる。俺は手を伸ばし、タオルを受け取ろうとする。しかし、力が入らず握れない。

「むり…持て、ない…」

「そっか…力、入らないのか…じゃあ、俺が拭くね」

 クリーク王子は片手でタオルを持って、もう片方の手で俺の腕を優しく掴んだ。

「うぁっ…!」

 なんだ、これ…?触れられたとこがすげぇ熱い…気持ちいい…
 触れられるだけで、感じるようになるのか…?発情期って。

「え!?あ、ごめんね…!痛かった…?」

「違う、けど…」

「触れちゃ、だめなのかな…じゃあ…」

 クリーク王子が目を閉じると、タオルが淡く光った。そしてふわふわと宙に浮き、俺の身体を拭き始めた。

「これなら、どう?大丈夫?」

「だいじょぶ、だけど…」

 なんか悲しい…寂しい…
 俺は王子の袖を掴んで頼んだ。

「クリーク王子、が…拭い、て…?」

「え…?でも…」

「いい、から…さっき、頭、撫でてもらったの…気持ち、良かった…から…」

 王子は心配そうに眉を下げ、「本当に、大丈夫?」と確認する。俺が頷くと、王子は宙に浮いたタオルを掴み、俺の身体を拭き始めた。
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