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1章 なんだかんだで城へ
★お仕事覚えましょう。~エルオリント・サルシュファー~
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コンコン
私は今、三つ子の部屋のドアをノックしている。起きているかの確認と、朝食へ案内しようと思ったからだ。
「はーい!あ、エルさん!おはようございます」
出たのは、レンだった。良かった。起きている。
「おはようございます。早いですね」
「いつもこのぐらいですよ。店の手伝いしてたので」
「なるほど。そういう事でしたか」
「あ、中へどうぞ!」
すすめられて、部屋の中に入る。すると、キッチンに、ランとロンの姿が見えた。何故キッチンに?
レンと私に気付いたランが、「エルさん、おはようございます」と言った。
「おはよう。みんな早いね。」
と言いながら近付くと...
「あれ?朝食作ってたの?」
「?はい」
あちゃー
「朝食のお誘いに来たんだけど...要らなかったかな?」
「なんかすみません...」
「いや、自分で作ってる人もいるからね。別に謝らなくても良いんだよ」
謝らせてしまった。慌てて弁解する。
すると、何か閃いたのかランがぱっと顔を上げた。
「エルさんも一緒に食べませんか?」
え?
「いいの?」
『はい!』
声を揃えて頷かれてしまった。
「じゃあ、お言葉に甘えようかな」
と言うと、3人は嬉しそうに準備を進めた。
「えー、それでは、これから仕事を覚えてもらおうと思います。なるべく早く覚えてね」
『はい!』
「よし、いい返事だ。まず、君たちがする仕事について、軽く説明しとくね。」
多分、これ聞いたらこの子達、絶対驚くよな…
「君たちがするのは、王子様方の身の回りのこと全般です。」
しばしの沈黙の後、
「あの、聞き間違えましたかね...?今、王子様方の身の回りのこと全般って聞こえたんですけど…」
「前にやってた人はどうなるんです?」
「新人にそれは...流石に大仕事過ぎないですかねー?」
やっぱりそうなるよね。
「聞き間違えてないよ?これは、王子様方からの御提案だから。今までは私がやってたけど、君たちの方が適任でしょ?」
『適任じゃないです!』
声を揃えて言われてもねぇ...
「まぁ、もう変更とか出来ないんだけど...あと、王子様方から、それぞれ誰に付いてほしいとかの要望があったから伝えとくね。イレーク王子にはラン、クラーク王子にはレン、タナーク王子にはロン。変更は受け付けないそうです。」
「はぁ...」
「そうですか...」
「頑張りますー...」
もう、何も言えないって顔してる。
「早速、ランから仕事を覚えてもらおうと思う。」
「あ、はい!」
お、元気になった。仕事となると元気になるのかな?
「レンとロンには、ここの廊下の掃除をお願いします。道具はそこにあるからね」
『分かりました』
「じゃあラン、行こうか」
「はい、頑張ります!」
という訳で、イレーク王子の部屋の前。
なんか、ランの顔が絶望的だなぁ…大丈夫か…?
でも、ここで止まってちゃ何も出来ないし、多少強引になっても良いかな...?
コンコン
「失礼します、イレーク王子様」
「し、失礼します!」
お、付いてきた。良かった。付いてこなかったらどうしようかと思った。
「あ、ラン!エルも、おはよう!」
「おはようございます」
「お、おはようございます!」
……
私はついでか!
まぁ、しょうがないか。王子様方は皆、初めての恋をしているからな。
っと、私も仕事をしなくては。
「ラン、部屋に入る時は、これから1人になると思うから、『失礼します』じゃなくて、『失礼します、イレーク王子様』って言うんだよ」
「あ、そっか!すみません!」
「いいよ、今日は私もいたし。次から気をつけてね」
「はい!」
そこから私は、ランに色んなことを教えた。
ランは覚えがよく、色んなことをすぐに吸収していった。その間、王子はずっと膨れっ面だった。嫉妬かな?
「…これで全部かな?それじゃ、戻ろうか」
「はい!ありがとうございました!」
一通りのことを教えたら、勢いよく頭を下げられた。大したことしてないけどなぁ。
「それでは、失礼します、イレーク王子様」
「失礼します、イレーク王子様」
お、
「さっき言ったこと、ちゃんと出来てる。偉い偉い」
ランの頭をポンポンと撫でた。と、
「なぁ、エル」
おっと、王子の我慢が限界か?
「はい、何でしょう?」
「ランを置いていくことは出来ないのか?」
「申し訳ありませんが、ランにはこれから、廊下の掃除を兄弟と交代でしてもらわなくてはなりません」
申し訳ないが、明日からの仕事に支障が出てしまう。
「そうか...無理を言って悪かった。」
あ、悲しそう。
「あ、あの!」
と、声をかけたのは、ランだった。
王子と私、2人同時にランを見る。
「イレーク王子様、また、お誘いして頂けませんか?その時は、その…一緒にお話しましょう」
ランの言葉に、王子は...
「あぁ!その時は頼む!」
あ、とっても嬉しそう。
今までにないくらいの笑顔だ。
しかし、いつまでもここにいる訳には行かない。
「さぁ、そろそろ御暇しましょうか」
すると、ランはハッ!として、
「失礼します!イレーク王子様」
と言うと、イレーク王子は、
「あぁ、また」
と、微笑んだ。
王子メッチャ嬉しそう。良かった良かった。
その後、レンとロンにも仕事を教えた。
そこで分かったのは、3人とも優秀ってこと。
言ったことをすぐ覚える覚えの良さ、見ただけでだいたい出来てしまう器用さ。これは、いつ抜かれてもおかしくないなと思いながら、自室へ戻った。
「…てことがあったんだよ」
私は、同室で友人のカルエット・テリーオルトに愚痴をこぼしていた。カルは騎士のため、私がしている仕事は知らない。
「へぇ、優秀なエルが言うってことは、相当なんだな」
「私が抜かれるのはいつになる事やら...」
「まぁまぁ、そう気を落とすなって」
「でも不安でっ...!」
ついついネガティブになってしまう私に、カルはいきなりキスをした。
言い忘れてた。カルは、私の恋人でもあります。
「ふぁる....ん!」
カルと言おうとした時、舌が口の中に侵入してきた。全体を舐め回すように動くカルの舌が気持ちよくて、思わず声が出そうになる。
「はっ.....んっ!ちょ、カル!?」
出たのは、驚きの声だった。カルの手が、股間に触れようとしてきた。それをすかさず止める。
「何してるの!?」
「え?いや、この流れはエッチかなーって」
「バッ!バカっ!明日も仕事だろ!」
「俺は休みだ」
「私は仕事だ!そんなことしたら、立てなくなる...って、何言わせてんだ!」
「いやいや、自分で勝手に言っただけじゃん」
「うるさいっ!とにかく、愚痴聞いてくれてありがと」
「どういたしまして。じゃあ、お礼にやらせ...」
「バ、バカなこと言ってないで早く寝るぞ!」
そう言って私は部屋の電気を消した。
私は今、三つ子の部屋のドアをノックしている。起きているかの確認と、朝食へ案内しようと思ったからだ。
「はーい!あ、エルさん!おはようございます」
出たのは、レンだった。良かった。起きている。
「おはようございます。早いですね」
「いつもこのぐらいですよ。店の手伝いしてたので」
「なるほど。そういう事でしたか」
「あ、中へどうぞ!」
すすめられて、部屋の中に入る。すると、キッチンに、ランとロンの姿が見えた。何故キッチンに?
レンと私に気付いたランが、「エルさん、おはようございます」と言った。
「おはよう。みんな早いね。」
と言いながら近付くと...
「あれ?朝食作ってたの?」
「?はい」
あちゃー
「朝食のお誘いに来たんだけど...要らなかったかな?」
「なんかすみません...」
「いや、自分で作ってる人もいるからね。別に謝らなくても良いんだよ」
謝らせてしまった。慌てて弁解する。
すると、何か閃いたのかランがぱっと顔を上げた。
「エルさんも一緒に食べませんか?」
え?
「いいの?」
『はい!』
声を揃えて頷かれてしまった。
「じゃあ、お言葉に甘えようかな」
と言うと、3人は嬉しそうに準備を進めた。
「えー、それでは、これから仕事を覚えてもらおうと思います。なるべく早く覚えてね」
『はい!』
「よし、いい返事だ。まず、君たちがする仕事について、軽く説明しとくね。」
多分、これ聞いたらこの子達、絶対驚くよな…
「君たちがするのは、王子様方の身の回りのこと全般です。」
しばしの沈黙の後、
「あの、聞き間違えましたかね...?今、王子様方の身の回りのこと全般って聞こえたんですけど…」
「前にやってた人はどうなるんです?」
「新人にそれは...流石に大仕事過ぎないですかねー?」
やっぱりそうなるよね。
「聞き間違えてないよ?これは、王子様方からの御提案だから。今までは私がやってたけど、君たちの方が適任でしょ?」
『適任じゃないです!』
声を揃えて言われてもねぇ...
「まぁ、もう変更とか出来ないんだけど...あと、王子様方から、それぞれ誰に付いてほしいとかの要望があったから伝えとくね。イレーク王子にはラン、クラーク王子にはレン、タナーク王子にはロン。変更は受け付けないそうです。」
「はぁ...」
「そうですか...」
「頑張りますー...」
もう、何も言えないって顔してる。
「早速、ランから仕事を覚えてもらおうと思う。」
「あ、はい!」
お、元気になった。仕事となると元気になるのかな?
「レンとロンには、ここの廊下の掃除をお願いします。道具はそこにあるからね」
『分かりました』
「じゃあラン、行こうか」
「はい、頑張ります!」
という訳で、イレーク王子の部屋の前。
なんか、ランの顔が絶望的だなぁ…大丈夫か…?
でも、ここで止まってちゃ何も出来ないし、多少強引になっても良いかな...?
コンコン
「失礼します、イレーク王子様」
「し、失礼します!」
お、付いてきた。良かった。付いてこなかったらどうしようかと思った。
「あ、ラン!エルも、おはよう!」
「おはようございます」
「お、おはようございます!」
……
私はついでか!
まぁ、しょうがないか。王子様方は皆、初めての恋をしているからな。
っと、私も仕事をしなくては。
「ラン、部屋に入る時は、これから1人になると思うから、『失礼します』じゃなくて、『失礼します、イレーク王子様』って言うんだよ」
「あ、そっか!すみません!」
「いいよ、今日は私もいたし。次から気をつけてね」
「はい!」
そこから私は、ランに色んなことを教えた。
ランは覚えがよく、色んなことをすぐに吸収していった。その間、王子はずっと膨れっ面だった。嫉妬かな?
「…これで全部かな?それじゃ、戻ろうか」
「はい!ありがとうございました!」
一通りのことを教えたら、勢いよく頭を下げられた。大したことしてないけどなぁ。
「それでは、失礼します、イレーク王子様」
「失礼します、イレーク王子様」
お、
「さっき言ったこと、ちゃんと出来てる。偉い偉い」
ランの頭をポンポンと撫でた。と、
「なぁ、エル」
おっと、王子の我慢が限界か?
「はい、何でしょう?」
「ランを置いていくことは出来ないのか?」
「申し訳ありませんが、ランにはこれから、廊下の掃除を兄弟と交代でしてもらわなくてはなりません」
申し訳ないが、明日からの仕事に支障が出てしまう。
「そうか...無理を言って悪かった。」
あ、悲しそう。
「あ、あの!」
と、声をかけたのは、ランだった。
王子と私、2人同時にランを見る。
「イレーク王子様、また、お誘いして頂けませんか?その時は、その…一緒にお話しましょう」
ランの言葉に、王子は...
「あぁ!その時は頼む!」
あ、とっても嬉しそう。
今までにないくらいの笑顔だ。
しかし、いつまでもここにいる訳には行かない。
「さぁ、そろそろ御暇しましょうか」
すると、ランはハッ!として、
「失礼します!イレーク王子様」
と言うと、イレーク王子は、
「あぁ、また」
と、微笑んだ。
王子メッチャ嬉しそう。良かった良かった。
その後、レンとロンにも仕事を教えた。
そこで分かったのは、3人とも優秀ってこと。
言ったことをすぐ覚える覚えの良さ、見ただけでだいたい出来てしまう器用さ。これは、いつ抜かれてもおかしくないなと思いながら、自室へ戻った。
「…てことがあったんだよ」
私は、同室で友人のカルエット・テリーオルトに愚痴をこぼしていた。カルは騎士のため、私がしている仕事は知らない。
「へぇ、優秀なエルが言うってことは、相当なんだな」
「私が抜かれるのはいつになる事やら...」
「まぁまぁ、そう気を落とすなって」
「でも不安でっ...!」
ついついネガティブになってしまう私に、カルはいきなりキスをした。
言い忘れてた。カルは、私の恋人でもあります。
「ふぁる....ん!」
カルと言おうとした時、舌が口の中に侵入してきた。全体を舐め回すように動くカルの舌が気持ちよくて、思わず声が出そうになる。
「はっ.....んっ!ちょ、カル!?」
出たのは、驚きの声だった。カルの手が、股間に触れようとしてきた。それをすかさず止める。
「何してるの!?」
「え?いや、この流れはエッチかなーって」
「バッ!バカっ!明日も仕事だろ!」
「俺は休みだ」
「私は仕事だ!そんなことしたら、立てなくなる...って、何言わせてんだ!」
「いやいや、自分で勝手に言っただけじゃん」
「うるさいっ!とにかく、愚痴聞いてくれてありがと」
「どういたしまして。じゃあ、お礼にやらせ...」
「バ、バカなこと言ってないで早く寝るぞ!」
そう言って私は部屋の電気を消した。
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