平凡な三つ子は平凡に暮らす...はずだった

月兎

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1章 なんだかんだで城へ

再開〜イレーク・エリオント~

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「王子様方、御三方が到着致しました。」

 エルの声が聞こえた。
 やっと、やっとだ。僕達はそわそわし始めた。先程は見下ろす形でしか顔を見ることが出来なかったが、今度は同じ目線で見ることが出来る。

「入れ」

 僕の命令で、部屋の扉が開かれた。
 最初に入ってきたのは、予想通りエルだった。エルは後ろを見て、「ほら、入っておいで」と言っている。何かを話しているな...そんなに仲良くなったのか?
 モヤモヤしていると、僕達が待っていた人達が入ってきた。

『失礼します。』


    ドキン...


 あぁ、やっぱり好きだ。再度自覚する。僕はランが好きだと。僕達は、誰からともなく歩き出し、それぞれの前にー僕はランの前に、クリークはレンの前に、タナークはロンの前にー立っていた。

『待っていたよ。私のかわいいお姫様』

 僕達はそれぞれの姫の手の甲にキスをした。
 最初はポカーンとしていた彼らは、やがて何が起こったのかを悟り、赤面した。

「ひ、姫って、僕達は男ですし...」

「そ、そうそう!俺達より可愛い子は沢山いるし...」

「僕達には合ってないと思いますー...」

 どうやら「姫」という呼び方は嫌らしい。

「なら、どう呼べと?」

「普通に!普通にランでいいです!」

「俺も!レンで!」

「僕もー」

 いいのか?名前で呼んで。僕達は顔を見合わせた。

「いやしかし...」

「いいんですよ!王子様ですし!」

 そう言ってランは笑った。


   か、可愛いっ...!


 ふわっと笑った顔が可愛くて、暫く見とれていると、

「あのー…?」

 ハッ!

「あ、あぁすまん。」

「大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫だ。それより、僕達のことも名前で呼んでくれないか?」

『え!?』

「いやいや、いやいやいや」

「それは恐れ多いというか、なんというか...」

「僕達が呼んでいいとは思えない...」

 そんなにダメなのか?
 僕達は名前で呼ばれることがほとんどない。呼んでくれるのは、両親と親しくなったごく僅かな召使いだけだ。王室教師でさえ、「王子様方」と言う。しかし、彼らは違う。将来僕達の妻となる可能性が高い。呼んでほしいのだ。
 僕達の気持ちが沈んでいるのに気づいたのか、唐突に

「イ、イレーク…王子…?」

 と言った。


   呼んで…くれた…?


 とても、嬉しかった。
 気が付くと、僕はランを抱き締めていた。

「あ、あのぉ...?」

 我に返った僕は、「す、すまない!」といって、慌てて離れた。

「あ、いえ!別に嫌とかじゃなかったんですけど...いきなりでビックリして...」

 良かった。嫌われなかった。

「コホン。えー、そろそろよろしいでしょうか?」

 エルの方を見ると、

「もう時間も遅いですし、彼らには明日からバリバリ働いてもらうので、早く休ませたいのですが。」

 確かに、もう遅い。少し眠気が...。

「すまなかった。もう下がってくれて構わない」

「それでは、失礼します。ほら、みんなも」

「あ、失礼します!」

「失礼します~」

 レン、ロンの順に退出していった。そして最後にランが、

「失礼します、イレーク王子」

と、微笑みながら言って、退出していった。


「いいなぁー、イレーク。意中の相手に名前呼んで貰えて」

「僕も呼ばれたいー!」

「チャンスはこれから沢山あるじゃないか。いつか呼ばれる日が来るだろ」

 そんな話をしながら、僕はワクワクしていた。 


 あぁ、早く明日になって欲しい。明日になれば、また彼らの驚く顔が見れるだろうか?
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