平凡な三つ子は平凡に暮らす...はずだった

月兎

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0章 出会う前の物語

プロローグ・三つ子の日常

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 エリオントには、もう一組の三つ子がいた。

 長男のラン・アルテント

 次男のレン・アルテント

 三男のロン・アルテント

 彼らは男性にしては可愛い顔立ちをしており、髪が長いのも相まって、初対面の人に女性と間違えられるほど。

 そんな彼らの両親は、両方とも男性である。

 しかし、そんなに珍しいことではない。珍しいことを挙げるとするならば、子供がいることだ。
 すべての男性が妊娠出来る訳ではない。むしろ少ない方だ。三つ子の母親は、その数少ない妊娠出来る男性の中に入っているのである。

 しかし、妊娠出来る男性には、共通して普通の男性にはない症状が出る。


 発情期である。


 月に一度のペースでくるもので、発情期では、フェロモンが無意識のうちにでてしまい、男性を引き寄せてしまうのである。薬は未だに無く、専用集落などがあるだけだ。

 そんな妊娠出来る男性、レイン・アルテントは、息子たちと仕事をしていた。三つ子は皆優しく、働き者で、物心ついた時から家事の手伝いをしてくれるほどだった。

「母さーん、この箱ここに積んでいい?」

「あぁ、頼む」

「母さん、はい、水。喉乾いてるでしょ?」

「ありがと」

「後は僕達やっとくからー、母さんは休んでてー」

「いいの?」

『いいよー!』

 優しくて明るく、気の利く息子たちが、レインの自慢なのである。









 今日はいつもより街が静かだ。

 何故なら、三つ子の王子主催のパーティーが、城で開かれているからだ。

 王族のパーティーは普通、貴族だけが参加出来るものだ。それが何故市民も行けるのかというと、王子たちの結婚相手がなかなか決まらず、市民から王子たちの気に入る相手が出るかもしれないという、本人達の意見があったかららしい。

 そして、何故女性だけなのかというと、王族は基本的に異性と結婚するからである。そちらの方が、並んだ時に美しく見えるからである。決して同性がないという訳では無いが、異性というのが当たり前になっているのである。

 街の人たちは皆、今日は休みをとっている。

レインたちも例外ではなく、ゆっくりとした時間を過ごしている。
 三つ子はというと、長い髪を結いあっている。
 以前、気になったレインは3人に、

「なんで髪伸ばしてるんだ?」

と聞いたら、声を揃えて、

『結うのが楽しいから』

と笑顔で答えられた。いかにも3人らしい答えだなと、レインはその時、苦笑した。
 ちなみに、彼らには、妹のリン・アルテントと、幼馴染のリリィ・サンタルテがいるのだが、彼女らは今、パーティーに参加している。三つ子は、2人なら絶対に王子たちの心を掴んでくるだろうと信じていた。










 リンとリリィが帰ってくるなり、「大変だよ!」と大声で言った。

 あまりの大きさに、皆暫く放心状態だったが、一番早く我に返ったランが、「どうしたの?」と聞く。

 返ってきたのは、衝撃的な言葉だった。


「王子たちがここにに来るって!しかも今日!
今すぐ!」


 ……


『えぇーーーーーーーっ!』


 街中がパニックになった。今までにない慌てようだった。

「ど、どうしよう母さん!」 

「と、とりあえず外綺麗にしよう!箱もどけて!みんな!手伝って!」

『分かった!』

 街のみんなで協力して、道を綺麗にした。その間に三つ子は、パーティーに行ってきた2人に「どうだった?」と聞いた。すると、

「3人ともつまらなそうだったよ」

「うん。なんか、理想の相手がいなくてガッカリ!って感じだった」

「2人は?声かけられなかったの?」

「全っ然!とゆーか誰も声かけられてなかったよ。ね?」

「うんうん!」

 リリィの言ったことに激しく首を振って同意するリンだった。


 いつの間にか準備は終わり、後は王子たちが来るのを待つのみとなっていた。
 街のみんなが緊張する中、三つ子だけが、ワクワクしながら、

「王子たちって、どんな人なんだろ?」

「やっぱりかっこいいんじゃない?」

「顔立ち整ってそうだよねー」

 と、我慢出来ずヒソヒソと意見を言い合っていた。











 自分たちの身に何が起こるかも知らずに。
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