異世界、ゆるーくいきましょう。

月兎

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二章 パーティーって、こんなに強いものですか?

約束

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「で、何故お前は森をこのような火の海にした」

 ファルの問いかけに、竜はファルをまっすぐ見つめて言った。

「息子が、人間に攫われたのです」

「え?竜が?そんなことあるの?」

「ああ。竜とは、人間にとってはとてつもなく上等な素材になる。我らのような大きなものの方がいいのだが、警戒心が強い。そこで狙ったのが、子供だ」

「たとえ小さくても、強いんじゃないの?」

「強くても、警戒心がない。好物を目の前にぶら下げれば、たとえ人間だとしてもついていく」

「なるほど………でも、それが分かっているなら、どうして連れていかれたの?」

「知り合いに頼んでいたのだ。しかし、帰ってきたのは知り合いだけだった。知り合いもまた、助けようとしたのだが、相手の攻撃が思った以上に強く………」

「そうか……そうだったのか………」

 聞いてるだけでも嫌な気分になる。
 もしかしたら、僕が間違っているのかもしれない。
 ここは弱肉強食。騙された子供が悪いという人もいるかもしれない。
 でも、地球で生きていた僕にとって、その人間がしたことは許されないことで、許してはいけないこと。

「だったらさ」

 気付いたら、口が動いていた。

「僕があなたの子供を連れ戻すよ」

「なに?」

「そしたら、僕達に攻撃しなくていいんでしょ?」

「それはそうだが……攫われたのは昨日だ。命があるかどうか………」

「助けるよ。いざ殺されるとなったら、その子もじっとしてるわけが無い。可能性はあるよ」

「そうだな」

 ファルが僕の言葉を肯定した。

「いくら子供とはいえ、危機感くらいあるだろう。敵意を向けられたら、流石に気づく」

「今から行ってくるよ。探してくる」

「ボクも、がんばるよー!」

「………」

 竜は目を見開いて僕達を見た。

「お前のようなニンゲンがいるとはな………」

 そして頭を下げる。

「頼む。どうか私の息子を、救ってくれ。最悪死んでいたら、骨だけでも持ってきて欲しい。あいつがいるという証拠が欲しい」

「分かった」

 僕はミュイとルイのいる方へ声をかけた。

「ミュイ!ルイ!僕、これからファルとリフィと一緒に、街に戻るよ!」

「あ、ああ。わかった!」

「気をつけるんですのよー!怪我したら承知しませんわ!」

 そうして僕は、ファルの背中に乗って街に戻った。
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