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本編〜出会い編〜
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しおりを挟む俺の番、ラウルは可愛い。
火が苦手な有翼種なのに火を怖がらずに美味い料理を俺に振る舞ってくれる。がつがつと食べる俺を見てはニコニコと嬉しそうに笑う。
どんなにくだらない話でも適当に流さずに相槌を打ちながら聞いてくれるし、細やかな気配りができる。
膝の上に乗せれば恥じらいながらも体を俺に預けてくれる。しかもその瞬間、安心したようにホッと息を吐くんだ。
可愛すぎるだろう。
出会って一ヶ月。短い間で俺に少なからず心を許してくれているようで、心は喜びに打ち震えている。
そんな可愛い俺の番は、羽の色で辛い思いをした過去を持つ。
話を聞いた当初は俺の番を傷つけた奴ら全員をぶちのめしたくなったが、ラウルがあまりにも穏やかな顔で話すから俺の怒りは徐々に落ち着いていった。たとえラウルが許しても、俺が許しはしないがな。
ラウルは警戒心が強いが、どこか抜けている。怪我した俺を自分の家にあげてしまうくらいだ。だから俺は心配が絶えない。
街に売りに行く時は悪い虫がつかないように、俺も着いて行く。少しでも不穏な気配があれば殺気を出して睨めば大抵の奴は逃げるように去っていく。
かつて友人から言われたが、俺は顔が整っているから真顔は余計に怖いんだと。それを聞いた当時は、確かに子供には泣き叫ばれるな……とどこか納得した。
マーキングはしているが、獣人にしか効果がないからな。虫除けは大事だろう?
あぁ、ほら。噂をすればなんとやらだ。
「お兄さんのご飯は美味しくていつも助かってるよ。どうだろう、今度一緒にご飯でも食べに行かないかい? 僕がご馳走するよ」
人間のお高く纏ったチャラそうな男がニヤニヤと声をかけてきた。下心丸出しの姿に腹の底がグツグツと煮え、頭が怒りで冷えていく感覚がする。
お前なんかに渡すわけねえだろ。
そう思って口を挟もうとした時、ラウルがいつもより張った声で言った。
「いつもありがとうございます。お誘いは嬉しいのですが、外食は得意ではなくて。ごめんなさい」
困った顔で断りを入れるラウルに気が付かないのか、往生際の悪い男はさらに言葉を重ねようとする。
その様子に堪忍ならなくなった俺は、ラウルの腰に手を回して引き寄せて、男に向けて言った。
「彼、俺のだから。諦めてくれるかな。それとも俺に勝てる自信があるのか? なァ、お貴族サマ?」
睨まれた男は顔を青白くさせて怯えた様子で何も言わずに去っていった。
「すまない、客足を遠のかせるようなことをして。お前からしてみれば大事な客なのに」
「いいえ、ありがとうございます。いつも断っても諦めてくれなくて困っていたんです。だから僕は感謝してます」
ありがとうございます、クロウスさん。
そう言って微笑む彼は、聖母のように優しい目をしていた。
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