世話焼きαの甘い罠

めっちゃ抹茶

文字の大きさ
上 下
33 / 39

僕は認める

しおりを挟む



僕は自宅の玄関であわあわと慌てていた。

皇会長が僕の家族に丁寧に挨拶をしてくれて、嬉しいなぁと思っていたら急に周りの温度がグンと下がった。
顔を上げれば、苦しむお兄ちゃんと眉間に皺を寄せた皇会長の姿。βの僕でも感じるほどの強い威圧がたぶん二人の間で放たれている。

どうしよう…早速、喧嘩しちゃうの…?

とあわあわしていたら急に空気が元に戻った。ほっと息をついていたら、

「すみません。急な威圧で思わず防衛手段に出てしまいました。大丈夫でしたか」

皇会長が申し訳なさそうな顔をしてそう言った。

「…強いんだね。流石、皇さんと言ったところか」

お兄ちゃんはまだ苦しそうにしながらひと息ついて言う。
その時、僕の頭は流石って何?ってなった。皇会長が素敵でかっこいい人っていうのは分かるけど、何か含みを持った言い方が僕はなぜか気になった。
隣を見上げれば、皇会長はまだ眉間に皺を寄せている。

二人の間に漂う不穏な気配を察知してお父さんが宥める様に言った。

「まぁ、まぁ。ひとまずはお上がりください。狭い家で申し訳ないんですが」

そうしてようやく、僕と皇会長は家に上がることが出来た。

皇会長をリビングに案内した後、お茶出しもそこそこに、顔合わせが始まった。
僕の隣には皇会長が座って、正面にはお父さん、斜め前にお兄ちゃんの順で席に着いて三人が話しているんだけど、僕はそわそわしてしまって落ち着かない。

皇会長が我が家にいる事もそうだけど、皇会長が側にいる時はずっとお膝の上だったからか、隣に居ることに不満を感じてしまう。恥ずかしがっていた僕の心とは裏腹に、身体は皇会長のお膝の上を定位置だと認識してしまったみたいだ。

でも流石に家族の前だし…と我慢しようとしても身体が疼いてしまう。

うぅ、とひとり唸っていると、

「雷、おいで」

皇会長が優しい顔と甘さを含んだ声で自分の膝を叩いて、おいでのポーズをしてきた。いつもなら強引にさせられるのに今は誘うだけ。
僕がしたい事だったと認めるのは未だ恥ずかしいのに身体は正直で。やっぱり僕はそこが好きなんだって。

僕は誘われるがままに、吸い寄せられるように皇会長のお膝の上に横向きに乗った。

定位置に着くとほっと安心してしまう。でもやっぱり恥ずかしくて、抗議の意味も兼ねて皇会長の胸元にグリグリと額を押し付けた。お昼ご飯の時はもう恥ずかしくないけど、家族の前は流石に羞恥心がある。

「ぐぅっ…!」

一瞬皇会長から唸り声がしたと思ったら、お兄ちゃんが突然言った。

「…完敗です。皇さん、雷をどうぞよろしくお願いします」

何か争っていたんだろうか…。そして皇会長が勝った…?

「私からも雷のこと、よろしくお願いします」

お父さんもにこやかに言う。
なんかよくわからないけど、認めてくれたってことで良いんだよね?

僕は嬉しくなって、皇会長に言った。

「僕もお願いしたいです。皇会長、これからも僕のこと、離さないでくださいね」

「あぁ、もちろんだ。ずっと一緒にいような、雷」

皇会長は力強く頷いて、僕の左手を取って薬指に唇を落としてそう言った。

その意味に気付いた僕はさらに嬉しくなってぎゅっと皇会長に抱きついた。
僕の知らない事はたくさんあるけど、皇会長とずっと一緒なんだって思ったら嬉しさがブワリと込み上げたんだ。嬉し涙も出てきたけど、皇会長の胸元にグリグリして隠した。

そうしてぎゅーぎゅー抱きついていたら、

「皇さん、今日は泊まっていってください。今後のお話も少し気になることがありますので。雷も離れたくないようですし…」

お父さんが急にそう言い始めた。
えっ、と驚く間もなく、皇会長が答えた。

「是非ともそうさせていただきます」

そして僕だけに聞こえる声で、

____一緒に寝ような。

そう甘く低く囁いた。

僕は一瞬にしてボンって音を立てる勢いで顔を真っ赤にした。そして、

「ひえぇ…!」

喉からよく分からない悲鳴が出た。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

孤独を癒して

星屑
BL
運命の番として出会った2人。 「運命」という言葉がピッタリの出会い方をした、 デロデロに甘やかしたいアルファと、守られるだけじゃないオメガの話。 *不定期更新。 *感想などいただけると励みになります。 *完結は絶対させます!

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

アルファとアルファの結婚準備

金剛@キット
BL
名家、鳥羽家の分家出身のアルファ十和(トワ)は、憧れのアルファ鳥羽家当主の冬騎(トウキ)に命令され… 十和は豊富な経験をいかし、結婚まじかの冬騎の息子、榛那(ハルナ)に男性オメガの抱き方を指導する。  😏ユルユル設定のオメガバースです。 

処理中です...