世話焼きαの甘い罠

めっちゃ抹茶

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いたずらは倍返しで返される※ 【煌視点】

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【煌視点】


雷は余程驚いたのかこちらを見て黒色の大きな目を見開いている。
かと思えば顔が赤くなり、慌て出した。

雷のころころ変わる表情が愛くるしくて、もっと見てみたいと少々悪戯な心が芽を出した。

空いていた目の前の席に座り、身を乗り出す。

「うん?いつもより顔が赤くないか?具合が悪いのか?ほら、ちょっとおでこ貸してみろ」

そう言って髪を掻き分け、額同士をくっつける。俺は雷の瞳を見つめたままだ。
少しでも身を乗り出せば唇が触れ合う距離に雷は更に顔を赤らめた。

すると、流石に耐えきれなくなったのか、

「ち、近いですっ!皇会長のお顔がキラキラしてて眩しくて見れませんっ!僕の心臓が持たないので、は、離れてください」

と両腕で顔の前にバツを作りながら早口で雷は言った。
褒められて嬉しい上にそんな素直な告白に幼い頃の面影を感じて、変わらないなと俺は表情を崩して笑った。

そんな俺を見て雷は抗議の視線を俺に送り、頬を膨らませてむくれた。

____睨んでも可愛いだけだ。

流石にこれ以上揶揄うのは雷の機嫌損ねる。
そう判断した俺は雷にアピールをすると宣言した通りに行動を起こした。

そうしたアピールは結果として大成功だったと言える。但し、俺の理性と引き換えに。






「僕も、あなたが好きです。皇会長のことが、大好きです」

雷の左胸に俺の手が置かれている。雷の両手は俺の手を押さえつけるように重ねられていて、掌全体から鼓動の早さが伝わってくる。
明らかに早い鼓動は雷の胸の高鳴りを表していて、本当に俺のことが好きなんだと実感した。

今度こそ勘違いではない、正真正銘の告白に俺の心臓も煩くなった。

____嬉しい。俺も大好きだ。

両思いになれた嬉しさと愛おしさが心の底から湧き上がる。際限なく溢れるそれは身体中に巡り、押さえがたい衝動に俺は駆られた。

____キスしたい。

ここが何処だかすらも忘れ、衝動のままに雷の顎に指をかけてこちらに向かせる。
雷は目を閉じて俺からのキスを受け入れた。

今度のキスは直ぐには離さずに、雷の唇の柔らかさを堪能する。
舌を突き入れ絡めて蹂躙したい気持ちをグッと堪え、下唇をやわやわ揉みしだく。そして、ちゅっと軽く吸うと雷の肩がピクリと震え俺の袖にぎゅっとしがみついてきた。

そんな反応が俺をさらに煽る。

雷の唇はとても柔らかく、そして甘い。
しっとりした唇は触れるだけで吸い付いてくる。
もっと深いところまで味わいたいのにずっとこうしていたい。

そんな矛盾した思いが胸中でせめぎ合ったまま雷の反応と唇の感触を堪能していると不意に、

「きもちぃ……」

甘い媚びるような雷の声が吐息と共に唇から漏れた。その瞬間、俺はハッとする。
ここが何処だったかを思い出した。

唇を離すと名残惜しそうな声を雷は上げた。

「………あっ」

そして、とろんと蕩けた瞳と上気してほんのり赤色に染まった顔をして次を強請った。

「なんで……もっと、ほし__」

「ぐっ__!」

そんな雷を見た俺の喉からは唸り声が出た。
普段の姿からは考えられない、壮絶な色気を放っている雷の口から発せられるおねだりはとても扇状的で、いとも簡単に俺の理性を壊してしまう。
一瞬にして血が滾り、下半身が痛いほど張り詰める。

俺は襲いかかりそうな衝動を何とか堪えて雷を抱きしめ、顔を隠す。
雷の蕩けた表情は俺以外の誰にも見せたくない。俺だけが知っていればいい。

周りを見れば数名のスタッフとその場にいた客が温かい目をしてこちらを見ている。その中には叔父もいた。
後で詰め寄られそうだと内心嫌に思いながらも好意的な視線に安堵する。

しかし、これ以上ここに居るのも居心地が悪い。
そう思い雷に声をかければ理性が戻って来たのか声にならない悲鳴を上げた。
羞恥心で耳まで真っ赤になった雷は、俺の胸に顔を押し付け、イヤイヤと顔を振る。

____ぐぅっ……!

奥歯を噛み締め、衝動を堪える。
雷は無自覚なんだろうが、可愛い仕草に煽られた俺の理性は本当にギリギリだ。

雷には俺を煽っている、ということを自覚してもらわなければ俺の身が持たない。

俺はわざと雷の耳元で声を低くして囁く。

「雷、あまり可愛いことをすると我慢が効かなくなる。………今日は家に返せなくなるぞ。それでもいいのか?」

すると雷は一瞬身体を固め、声には出さず首を横に振って答えた。

俺は雷を横抱きに抱えて、家まで送るために車に向かって歩き始める。
すると当然、雷が俺の頬に手を添えてきた。何事かとそちらを見れば、雷は俺を見て眩しいそうに目を細める。そして綺麗に笑いながらひとり呟いた。

「えへへ、僕のお星様だ」

それを聞いた俺はこれ以上ないほど心も身も幸せに包まれた。心が温かい。

昔、雷は言った。お星様は自ら光輝いて元気を分けている、だからキラキラしているんだと。
雷からすれば俺は、俺自身が輝いていて、元気を与える存在なんだな。
これ以上の褒め言葉があるだろうか。

でもそんな言葉すら雷は意識して言ってはいないんだろう。だからこそ、本心がするりと言葉に出る。
裏表のない雷の言葉は俺の心にスッと届く。

嘘偽りのない言葉。

それがどれほど俺にとって安心するのか雷は知らないだろうな。いや、知らないままでいい。

幸せな心地で雷を抱き抱えたまま、俺は車に乗り込んだ。
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