世話焼きαの甘い罠

めっちゃ抹茶

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初めて知る心の痛み

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頭を撫でられてぼんやり夢見心地になっていた僕は、気が付けばいつの間にか生徒会室にいて、皇会長のお膝の上に座っていた。

「……!?」

昨日と同じ状況にぼんやりとしていた頭が覚醒する。

どうしてこうなった…!?

慌てて記憶を辿れば、生徒会室まで歩いた覚えはなくて。ゆりかごの中で温かくて爽やかなものに包まれているような感覚が蘇った。そのなかは凄く安心して、僕を包む何かに擦り寄って眠りについたところまでは、朧げだけど覚えてる。
そこからの記憶はなくて……そして今。

「~~~~!!」

声にならない悲鳴が出て、全身から血の気が抜けていく感覚がする。
パニックになった頭で必死に言葉を紡ぐ。

「ご、ごめんなさいっ!あ、あの、僕、何だか気持ち良くなっちゃって、それで寝てしまって……。僕、重かったですよね。で、あの…今も重いと思うので下ろしていただけると………」

謝っているうちに申し訳ないやら恥ずかしいやら情けないやらで感情がぐちゃぐちゃになって涙が込み上げてきて。それを見られないように俯いていると、髪を上から下へ優しく撫で付けられる感覚がした。

「大丈夫だ、落ち着け。雷は軽い。しっかり食事をとっているのか心配になるくらいだ。それに、気持ちが良いと雷に言われるのは俺にとって褒め言葉だ。雷が俺を信頼してる証だからな」

皇会長に撫でられていると不思議と心が凪いでいく。親とは違う温かくて大きな手。
その手の持ち主に"大丈夫"と言われると本当に大丈夫だと思える。
それが信頼するってこと……なのかな。

「……ありがとう、ございます。もう大丈夫、です。………あの、迷惑じゃなければ、もう少しだけこのままでもいい、ですか…?」

もう少しだけ撫でる手の温もりを感じていたくて。
勇気を出して、俯いていた顔を上げてお願いをした。

「ぐはっ__!」

皇会長から唸り声が聞こえたと思ったら、険しい顔で口に手を当てて顔を逸らされてしまった。密着していた体も肩をドンっと押されて離されてしまった。
撫でられていた手も僕の頭から外されている。途端に包まれていた温もりがなくなったことに寂しさを覚えた。

そして理解する。皇会長に拒絶されたんだって。

………やっぱり迷惑だったんだ。撫でられて嬉しかったのは僕だけ。皇会長は嫌だったんだ……

____悲しい

心がズキズキと痛み、また涙が込み上げてくる。
瞳に涙が溜まって、耐えきれなくなったものがぽろぽろと頬を伝って膝の上で固く握り込んだ拳に落ちる。
嗚咽を喉で噛み殺していると、

「…!な、なんで泣いているんだっ。どこか痛むのかっ?だっ、大丈夫だから、な?」

焦った皇会長の声が上から聞こえた。
心配してくれる気持ちは嬉しいけど、心はまだズキズキ痛んだまま。痛くて苦しくて、理性なんてどっかに行ってしまって。僕は込み上げる感情のまま、皇会長に聞いていた。

「だ、だって、迷惑…なんでしょ。僕の頭撫でるの、迷惑って思ってたん、でしょ……?い、嫌だったんでしょう…?僕は、僕は嬉しくて……もっと、ずっと、撫でてほしいって……思ってたのに…ぅぅ」

子供みたいに泣きじゃくっていたら、急にレモンのような爽やかな香りが僕を包み込んだ。
皇会長が僕を力強く抱きしめる。骨が軋むほど強く抱きしめられて鈍い痛みが走る。
でもそれが今は皇会長に求められてる気がしてひどく嬉しい。

もっと抱きしめてほしい。

強く抱きしめられながら頭を撫でられる。戻ってきた温もりに傷んでいた心は落ち着きを取り戻す。
その温もりが今度は離れて行かないように、その温もりに縋り付くように背中にギュッと腕を回して僕からも抱きついた。

皇会長とひとつになったような安心感で痛みが和らぎ、心が満たされる。

その瞬間、漠然と僕の居場所は"ここ"なんだと思った。ここが僕が一番安心できる場所。ここにいれば何も怖くない、この人が守ってくれるって。





暫くして僕が落ち着いた時、皇会長が声のトーンを落として真剣な声で言った。

「嫌じゃない。迷惑だと思ったことも一度もない。俺は雷を腕の中に閉じ込めて、撫でて甘やかしたいって常に思ってる。俺は雷を感じられて嬉しい。雷は俺とくっつくのは嫌か?」

「……!ううん、嫌じゃない!もっとくっつきたい、離れたくないって僕、思ってる」

「なら、何も問題はないな。雷は俺とずっと一緒にいて、俺に甘やかされていればいい。俺もその方が嬉しいからな」

そう言って綺麗に微笑んだ皇会長は僕の顎を掴み、目線を合わせて今度は妖しく微笑んだ。

色気を放った皇会長に胸が高鳴って、なぜか目が離せずにいると、だんだんと皇会長の綺麗な顔が近づいてきて……

____ちゅっ

唇に少し冷たい、柔らかな感触を感じた。

ぇ…な、なに……?

何が起こったのかわからずに固まってしまっていると、僕の頬をするりと撫でる感触がした。そこに優しさ以外のものが含まれている気がして、思わず皇会長を見ると、

「雷、好きだ」

揺るがない瞳の奥に炎を燻らせて、僕だけを瞳に映し真剣な声で皇会長はそう言った。
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