16 / 39
大切な人の隣に見える二つの影 【煌視点】
しおりを挟む
【煌視点】
『助かった。また宜しく頼む』
メールを打ち、携帯を置いて目の前の資料に目を通す。
「篠原拓也(しのはらたくや)か。俺の敵ではないが警戒するに越した事はないな。三葉光(みつばひかる)とは幼馴染か。彼の方は大丈夫だな」
一通り目を通し終えて資料を置く。
これは探偵に依頼して調査した報告書だ。雷に関わる人物に関して怪しいところがないか調べて欲しいと頼んだ。
誰にも怪しい繋がりはなく、真っ当な人物で問題はなかったのだが別の意味で問題があった。
報告によれば篠原と三葉は一年の頃からの友人で、篠原が雷に思いを寄せているという。三葉はそれを手助けするでも応援するでもなく、見守り続けているとの事。
それ以上の情報は得られなかった為、俺が直接判断を下そうと決めた。
雷の交友関係に口を出したくはないが、奪われる可能性が少しでもあるなら排除したくなるのが恋する男の心情だろう。
そんな事を考えていた矢先、一件の電話が入る。護衛担当の者からだ。
「皇様、ふたりのご友人が南川様と教室でお待ちです。如何なさいますか」
「俺が行く。引き続き護衛を頼む」
「畏まりました」
電話を切って椅子から立ち上がり、生徒会室を出て雷の教室に向かって歩き始める。
道中、鬱陶しい視線が幾つも向けられたが一瞥すらすることなくただ只管に真っ直ぐ歩く。
生徒会役員専用の階段を使って二階に降りる。そこから渡り廊下を歩いて教室のある校舎に着く。あとは雷のクラスまで歩けばいい。
そうして廊下を歩いていると入り口に立つ二人の影とその後ろで二人に話しかける一人の姿が見えた。
前に居たのは篠原と三葉でその後ろに雷がいる。
姿がハッキリ見えてくると、徐々に大きく見開かれる瞳と口を開けたまま動かない雷の姿が見えた。
「すまない、待たせた。迎えに来た、雷」
「す、皇会長…!?あ、え、僕てっきり、護衛の人が来るんだとばかり……」
やはりな、と内心思った。
雷にメールを送った際に"迎えを寄越す"と書いたから別の人物が来ると考えるのが普通だ。まあ、送った時はその予定だったのだが…彼のことがあるからな。各方面へ牽制をした方が後に都合が良いと考えた。
「…………俺では不安か?」
あえて"不満"とは聞かない。
護衛担当者を予想していたのなら気になるのは"力"の部分だろう。
………俺自身に不満を感じたとか言われた日には膝から崩れ落ちて立ち直れない自信がある。好きな人には魅力的に見られたいのだ。
不安かと聞けば雷は慌てた様子で、
「不安じゃないですっ…!ただ、凄くびっくりしちゃって…。皇会長が来てくれて僕、嬉しいです!ありがとうございます」
そう言い、最後に照れた様子ではにかんだ。
____やっぱり可愛い。
半日ぶりに見る雷の笑顔はやはり魅力的だ。雷の笑顔を見ると無性に頭を撫でて甘やかしたくなる。
徐々に甘えることに慣れさせて、俺なしではいられないようにしよう。そんな黒い部分が浮き上がる。
彼への牽制も込めて頭を撫でると、雷は気持ちよさそうに擦り寄ってきた。
「あぁ、それなら良かった。……ところで彼らは雷の友人か?」
そう聞きながら、友人二人に顔を向ける。
既に調べはついているが、調査の件は極秘な為知らないふりをする。
「……!あ、はい!そうです。初めまして、生徒会長様ですよね。僕は三葉光です。雷とは一年の頃からの友人で仲良くしてもらってます」
先に自己紹介をしたのは明るい茶髪に癖っ毛が目立つ三葉光。明るそうな感じで人懐っこい印象だが今はハキハキとした話し方をしている。人によって振る舞いを変えているんだろう。見る目がありそうだ。
「初めましてですね、生徒会長さん。俺は篠原拓也です。雷とは放課後も一緒に遊ぶ仲です。今は友人です」
次に話しかけて来たのは短髪黒髪で短気さが窺える例の彼。俺を見てくる目は鋭い。だが力が足りない。瞳の奥が揺れて、戸惑いを隠しきれていない。
一年も雷と共にいて友人関係に収まっているところから推測するに慎重派か単にヘタレか。早々に挑発してくる奴が慎重さを持ち合わせているとは思えないな。後者だろう。
やはり俺の敵ではない。
そう勝手に判断して俺も自己紹介をする事にする。
「三葉と篠原か。俺のことは知っているな。皇煌、生徒会長を務めている。雷とは昔馴染みでな、俺の大切な人だ。改めて仲良くしてやって欲しい」
____友人として。
そう付け加えて作り笑顔をする。
笑う必要がある場面で身につけた技術だ。他の人から見れば普通に笑っているように見えるだろう。
案の定、三葉は笑顔で応えてくれたが、篠原は一瞬苦虫をを噛み潰したような顔をした後、強い意志を携えた目で言った。
「雷を泣かせたら俺は貴方を許さないです。そん時は俺が雷をもらう」
俺のことを認めたか。
どんな心境の変化があったのかは知らんが、お前の手に雷が渡ることなど決して起きない。起こさせない。
「安心しろ。その時が来ることなど一切ない」
三葉とは上手く付き合っていけそうだと思い、万が一のためにも連絡先を交換した。その際、篠原や他の人には教えるなと念の為釘を刺したが彼なら守ってくれるだろう。
そうして俺は雷を連れて生徒会室に向かった。
『助かった。また宜しく頼む』
メールを打ち、携帯を置いて目の前の資料に目を通す。
「篠原拓也(しのはらたくや)か。俺の敵ではないが警戒するに越した事はないな。三葉光(みつばひかる)とは幼馴染か。彼の方は大丈夫だな」
一通り目を通し終えて資料を置く。
これは探偵に依頼して調査した報告書だ。雷に関わる人物に関して怪しいところがないか調べて欲しいと頼んだ。
誰にも怪しい繋がりはなく、真っ当な人物で問題はなかったのだが別の意味で問題があった。
報告によれば篠原と三葉は一年の頃からの友人で、篠原が雷に思いを寄せているという。三葉はそれを手助けするでも応援するでもなく、見守り続けているとの事。
それ以上の情報は得られなかった為、俺が直接判断を下そうと決めた。
雷の交友関係に口を出したくはないが、奪われる可能性が少しでもあるなら排除したくなるのが恋する男の心情だろう。
そんな事を考えていた矢先、一件の電話が入る。護衛担当の者からだ。
「皇様、ふたりのご友人が南川様と教室でお待ちです。如何なさいますか」
「俺が行く。引き続き護衛を頼む」
「畏まりました」
電話を切って椅子から立ち上がり、生徒会室を出て雷の教室に向かって歩き始める。
道中、鬱陶しい視線が幾つも向けられたが一瞥すらすることなくただ只管に真っ直ぐ歩く。
生徒会役員専用の階段を使って二階に降りる。そこから渡り廊下を歩いて教室のある校舎に着く。あとは雷のクラスまで歩けばいい。
そうして廊下を歩いていると入り口に立つ二人の影とその後ろで二人に話しかける一人の姿が見えた。
前に居たのは篠原と三葉でその後ろに雷がいる。
姿がハッキリ見えてくると、徐々に大きく見開かれる瞳と口を開けたまま動かない雷の姿が見えた。
「すまない、待たせた。迎えに来た、雷」
「す、皇会長…!?あ、え、僕てっきり、護衛の人が来るんだとばかり……」
やはりな、と内心思った。
雷にメールを送った際に"迎えを寄越す"と書いたから別の人物が来ると考えるのが普通だ。まあ、送った時はその予定だったのだが…彼のことがあるからな。各方面へ牽制をした方が後に都合が良いと考えた。
「…………俺では不安か?」
あえて"不満"とは聞かない。
護衛担当者を予想していたのなら気になるのは"力"の部分だろう。
………俺自身に不満を感じたとか言われた日には膝から崩れ落ちて立ち直れない自信がある。好きな人には魅力的に見られたいのだ。
不安かと聞けば雷は慌てた様子で、
「不安じゃないですっ…!ただ、凄くびっくりしちゃって…。皇会長が来てくれて僕、嬉しいです!ありがとうございます」
そう言い、最後に照れた様子ではにかんだ。
____やっぱり可愛い。
半日ぶりに見る雷の笑顔はやはり魅力的だ。雷の笑顔を見ると無性に頭を撫でて甘やかしたくなる。
徐々に甘えることに慣れさせて、俺なしではいられないようにしよう。そんな黒い部分が浮き上がる。
彼への牽制も込めて頭を撫でると、雷は気持ちよさそうに擦り寄ってきた。
「あぁ、それなら良かった。……ところで彼らは雷の友人か?」
そう聞きながら、友人二人に顔を向ける。
既に調べはついているが、調査の件は極秘な為知らないふりをする。
「……!あ、はい!そうです。初めまして、生徒会長様ですよね。僕は三葉光です。雷とは一年の頃からの友人で仲良くしてもらってます」
先に自己紹介をしたのは明るい茶髪に癖っ毛が目立つ三葉光。明るそうな感じで人懐っこい印象だが今はハキハキとした話し方をしている。人によって振る舞いを変えているんだろう。見る目がありそうだ。
「初めましてですね、生徒会長さん。俺は篠原拓也です。雷とは放課後も一緒に遊ぶ仲です。今は友人です」
次に話しかけて来たのは短髪黒髪で短気さが窺える例の彼。俺を見てくる目は鋭い。だが力が足りない。瞳の奥が揺れて、戸惑いを隠しきれていない。
一年も雷と共にいて友人関係に収まっているところから推測するに慎重派か単にヘタレか。早々に挑発してくる奴が慎重さを持ち合わせているとは思えないな。後者だろう。
やはり俺の敵ではない。
そう勝手に判断して俺も自己紹介をする事にする。
「三葉と篠原か。俺のことは知っているな。皇煌、生徒会長を務めている。雷とは昔馴染みでな、俺の大切な人だ。改めて仲良くしてやって欲しい」
____友人として。
そう付け加えて作り笑顔をする。
笑う必要がある場面で身につけた技術だ。他の人から見れば普通に笑っているように見えるだろう。
案の定、三葉は笑顔で応えてくれたが、篠原は一瞬苦虫をを噛み潰したような顔をした後、強い意志を携えた目で言った。
「雷を泣かせたら俺は貴方を許さないです。そん時は俺が雷をもらう」
俺のことを認めたか。
どんな心境の変化があったのかは知らんが、お前の手に雷が渡ることなど決して起きない。起こさせない。
「安心しろ。その時が来ることなど一切ない」
三葉とは上手く付き合っていけそうだと思い、万が一のためにも連絡先を交換した。その際、篠原や他の人には教えるなと念の為釘を刺したが彼なら守ってくれるだろう。
そうして俺は雷を連れて生徒会室に向かった。
20
お気に入りに追加
1,294
あなたにおすすめの小説
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
イケメンがご乱心すぎてついていけません!
アキトワ(まなせ)
BL
「ねぇ、オレの事は悠って呼んで」
俺にだけ許された呼び名
「見つけたよ。お前がオレのΩだ」
普通にβとして過ごしてきた俺に告げられた言葉。
友達だと思って接してきたアイツに…性的な目で見られる戸惑い。
■オメガバースの世界観を元にしたそんな二人の話
ゆるめ設定です。
…………………………………………………………………
イラスト:聖也様(@Wg3QO7dHrjLFH)
人気アイドルが義理の兄になりまして
雨田やよい
BL
柚木(ゆずき)雪都(ゆきと)はごくごく普通の高校一年生。ある日、人気アイドル『Shiny Boys』のリーダー・碧(あおい)と義理の兄弟となり……?
お世話したいαしか勝たん!
沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。
悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…?
優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?!
※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる