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主人公って重要な所聞き逃すよね
しおりを挟む「ねぇ二人とも。僕はいいからさ、食堂行ってご飯食べて来なよ」
この学校には生徒なら誰でも無料で食べられる食堂がある。ほぼ全ての生徒は食堂で昼食を取るため、クラスには僕達だけだ。
「いやぁ、どんな人か見てからじゃないと、ね」
「そうだ。変な気を起こさないか俺が見てやる」
二人は教室の入り口に立ち、微動だにしない。光は楽しそうに笑っているけど拓は眉間に皺を寄せて怖い顔をしている。
そんな正反対の反応を見せる二人にどうやって言葉をかけていいか分からずに僕はおろおろするばかりだ。
そんな時、廊下から誰かが歩いて来た。人はほぼ食堂に行っていて出払っているので今廊下にいる人が迎えに来た人だろうか。
そんな風に考えていると徐々に距離が近づき、姿形がハッキリ見えた。
「……え」
驚きで目が見開かれる。
いや…なぜあなたが……?と僕の頭は軽くパニックである。
「すまない、待たせた。迎えに来た、雷」
そう、そこに居たのは数時間前にメールで迎えを寄越すと言っていた本人だった。
「す、皇会長…!?あ、え、僕てっきり、護衛の人が来るんだとばかり……」
「幼い頃から武道を習っているからプロには負けるが俺も強いぞ。それに連中にどうせ知られるのなら仲の良さを見せつけた方が都合が良いからな。…………俺では不安か?」
無表情で淡々と語ったと思えば、悲しそうな顔をして僕を見つめてきた。
気のせいか、垂れた犬の耳と尻尾が見える。
「不安じゃないですっ…!ただ、凄くびっくりしちゃって…。皇会長が来てくれて僕、嬉しいです!ありがとうございます」
誤解されたくなくて、僕の本心を精一杯伝えた。
「……やっぱり可愛い」ボソッ
皇会長は何か小声で呟いた後、少し頬を緩めて優しさに満ちた顔をしながら僕の頭を優しく撫でた。
「あぁ、それなら良かった。……ところで彼らは雷の友人か?」
皇会長は頭を撫でる手はそのままに、二人の方に顔を向けた。
二人は突然現れた皇会長に驚き、緊張つつも答えている様子だ。
「三葉と篠原か。俺のことは知っているな。皇煌、生徒会長を務めている。雷とは昔馴染みでな、俺の大切な人だ。改めて仲良くしてやって欲しい」
「もちろんです!僕はおふたりの邪魔はしません。応援してます。頑張ってくださいっ!」
「雷を泣かせたら俺は貴方を許さないです。そん時は俺が雷をもらう」
「安心しろ。その時が来ることなど一切ない」
そんなやり取りが三人の間で行われていた事を頭を撫でる皇会長の手が心地良くて、瞼を閉じてついぼんやりとしてしまった僕は聞いていなかった。
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