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事情聴取は教室で
しおりを挟む翌日、授業の合間に設けられた休憩時間、前の席に座っている光はくるりと体を反転させて、逃がさないと訴える目で僕を見つめている。
「忘れ物を取りに戻った時なにがあったの?」
「ちょっ、ちょっとこっち来て」
斜め前に座っていた拓も手招きして、内緒話のように小声で話す。
「えっとね……届け物を押し付けられて生徒会室まで行ったら、お、お膝に乗せられて、ケーキを食べさせてもらって昼食を一緒に食べる約束をした」
「…………」
「…………」
二人とも困惑した表情で固まっている。
声が小さ過ぎて聞こえなかったかもしれない。
「だからね、届け物を押し付けられて生徒か___」
「聞こえてたから大丈夫。ちょぉ~っと頭の理解が、ね?」
「…………何もされなかったか?」
な、何も、って……。頭を撫でられたくらい…かな。
思い出すとまた顔が真っ赤になってしまう。
「えっ、何!?何で赤くなってるの!?もしかして雷にもついに春が来た………!?」
「っおい!余計なこと言うな、光」
「……春が来たって何?もう夏になっちゃうよ…?」
「え、いや~?何でもないよ。こっちの話ね。………んでまぁ、それで?昼食を一緒に食べるって、誰と?」
ずいっと光に顔を近づけられて、「言え」と目で促される。
「お、怒らないで欲しいんだけど………その、せ、生徒会長と他の役員の方達と……」
「…………」
「…………」
再び訪れた沈黙に居た堪れなくなる。
恐る恐る顔を上げて二人の顔色を窺おうとした時、携帯の画面にメールの知らせが表示された。
自然に目が向かうとそこには、
『昼休み、迎えを寄越すから教室で待っていて欲しい。デザートにケーキを用意したから楽しみにしてくれ』
皇会長からのメッセージが映し出されていた。
"デザート"の文字に美味しかった昨日のショートケーキを思い出し、頬が緩んだ。
隣から不穏な気配を察知して「あ、やばい」
そう思っても時すでに遅し。バッチリ二人に見られていた。
「雷、まさかとは思うが……ケーキに釣られたんじゃないだろうな?」
一瞬、胸がドキッと鳴って肩がビクッとなった。さっき考えてた事を見透かされていそうで怖くて視線を合わせられない。
「えっ……い、いやそんなわけないよ…ははは」
だめだ。顔が引き攣ってしまう。
「近付いたら危ないとあれほど__」
「雷~、会長さんと仲いいみたいじゃん。会長さんってどんな人なの?」
拓が何かを言っていたが、光がそれを遮るように聞いてきた。
どんな人、かぁ。
僕から見た皇会長は格好良くて優しい、眩しいほど輝いていて、よく表情が変わる綺麗な人。だけどアレンさんは普段と違う、別人みたいだって言ってたから僕にしか見せない表情なのかな……えへへ、ちょっと嬉しい。
「優しい人だよ?あと、表情豊かだなぁって僕は思うけど、他の人からすると普段とはちょっと違うみたいでね。う~ん、何て言えばいいのかな。悪い人じゃないんだよ?僕を守ってくれてるし」
「へぇ~!雷、気に入れられたみたいで良かったじゃん!その話、もうちょっと詳しくっ!」
その後、何故か目を輝かせて鼻息を荒くしている光に根掘り葉掘り言わされた。
危険な目に遭わないように護衛をつけてくれてるってことも話した。陰から見守ってくれてるのだと。その一環で昼食を共にすることになったと話す。
拓は僕のことを心配してくれてる様子だったけど、光に"お膝の上でケーキをあ~ん"のところを「もっと詳しく!」と説明を求められて僕は羞恥心で焼き切れそうだった。
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