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道のりは長い 【煌視点】
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【煌視点】
____どんな姿も好き
雷が強くそう言い切ってくれた時、胸に嬉しさがとめどなく溢れた。不安は消え、安心感で満たされる。
嬉しさの余り、俺を好きだと言ってくれたのではと、勘違いをして思わずキスをしそうになった。
ぐっ、と何とか理性を働かせて未遂で終わったが、だらしなく緩んだ口元と蒸気して赤くなった顔は手で隠した。
誤魔化しきれなかったが……。
その後、雷の天然さが露呈してしまったが、気を持ち直して雷に身の安全の為、今後昼食は此処で取ること、朝と夕方の送迎を願い出た。が、送迎はあえなく却下されてしまった。聞けば、申し訳ないし友人と帰る時間も大切だと言う。守るためでもあるが、四六時中一緒に居たくて堪らない下心も多少含んでいたために、後ろめたくてあまり強く押すことは出来ない。
本当は擦り傷のひとつさえつくことがないように俺の目が届く側に常に置き、外からも内からも守ってあげたい。だがそれは雷の自由と笑顔を奪う束縛にしかならない。この黒い感情を何とか抑えなければ俺が雷を傷付けてしまう。
俺と一緒にいることを拒否されたわけではない、昼食は一緒に取れるんだ。そう己に言い聞かせて何とか納得した。
そうして雷が生徒会室を去った後で、主にアレンから質問攻めにされた。
「今日再会したって言ってたけど、会長は雷くん一筋の認識で良いんだよね?」
「ああ。雷に持つ感情を他の奴に持った覚えはない。今後も雷だけだ」
「熱いねえ~。んじゃ次、抱きついた時雷くんからフェロモンの匂いはしなかったからβだと思ったんだけど、その辺りどうなの?」
やはり食えない奴だ。天真爛漫な顔をして中身は結構な切れ者だ。
「それは探究心からか?」
「やだなぁ。二人を心配して聞くんだよぉ」
アレンの両親はバース性の研究者で、アレン自身も研究者として名を上げている。界隈では有名な人物だ。
雷を巻き込んだら承知しないからな、覚悟しておけ。
そう睨みを聞かせてから本題に入る。
「雷はβだ。今は、な。俺は確信している。雷は俺の運命の番だ」
「雷くんは隠れΩか~。身体的特徴はΩと一致するからね、納得。となると問題は覚醒させるタイミングだけだね」
「おい、アレン。ひとつ質問いいか?覚醒はさせるもんじゃなくてするもんじゃないのか?」
「雪男は知らないんだっけ。確かに隠れΩはきっかけがあれば時間をかけて自然にΩに性転するけど、あのαは誘発フェロモンを当てて、意図的且つ即時的にΩに覚醒させられるんだよ」
「へぇ。あのαって何だ?」
「それは僕からは言えないかな。知りたいなら会長に聞いて」
「あ~、……いや、俺から言おう。お前らの信用を買って話す。
アレンは付き合いが長いから知ってるが、俺はαでもプラチナαだ。βでもオメガ因子を一定数持っていればΩに変えることができる上位のα。一度くらいは聞いたことあるだろう」
「運命の番に出会うよりも難しい、っていうあのαか!?てっきり都市伝説だと思ってたぞ」
「数は少ないが確かに存在する。普通は知らないのも無理はない。秘匿されてるからな。いいか、この事は口外無用だ。万が一漏れることがあれば、お前らの身も危ないからな。気をつけろ」
「おう!誰にも言わねぇよ」
「面倒事は避けたいので言われるまでもないですね」
「私も、言いません…その証拠に話す人なんていないですし……」
「うんうん。優しいよねぇ、会長ってさ。僕も黙秘するよー。その代わり研究に付き合ってよね」
コイツらなら裏切らないと信じ切れる。
人を見る目には自信がある。幼い頃から連れ回され、色んな連中を見てきたおかげだな。あんな思いは二度と経験なんぞしたくないが。
「……話戻していいか。覚醒のタイミングだが雷の気持ちの問題もあるし、そもそもが未だ付き合ってもいないから先になる。俺が振られる可能性はない。絶対に堕とす。だからそれまで、お前らには雷を守ってやって欲しい。俺が守りたいのは山々だが、護衛や俺の目が届かない時もあるだろう。その時は力を貸してくれ」
俺がそう言うと皆から呆れ顔で見られた。
「今更ですね。言われずともそうするつもりでしたよ。会長の大事な方となれば、我々も全力で守る所存です」
俺が信用しているように、コイツらも俺を信用してくれているんだと改めて知った。
何と心強いことか。
心の中で感謝しながら俺はこれからの日々に想いを馳せた。
____どんな姿も好き
雷が強くそう言い切ってくれた時、胸に嬉しさがとめどなく溢れた。不安は消え、安心感で満たされる。
嬉しさの余り、俺を好きだと言ってくれたのではと、勘違いをして思わずキスをしそうになった。
ぐっ、と何とか理性を働かせて未遂で終わったが、だらしなく緩んだ口元と蒸気して赤くなった顔は手で隠した。
誤魔化しきれなかったが……。
その後、雷の天然さが露呈してしまったが、気を持ち直して雷に身の安全の為、今後昼食は此処で取ること、朝と夕方の送迎を願い出た。が、送迎はあえなく却下されてしまった。聞けば、申し訳ないし友人と帰る時間も大切だと言う。守るためでもあるが、四六時中一緒に居たくて堪らない下心も多少含んでいたために、後ろめたくてあまり強く押すことは出来ない。
本当は擦り傷のひとつさえつくことがないように俺の目が届く側に常に置き、外からも内からも守ってあげたい。だがそれは雷の自由と笑顔を奪う束縛にしかならない。この黒い感情を何とか抑えなければ俺が雷を傷付けてしまう。
俺と一緒にいることを拒否されたわけではない、昼食は一緒に取れるんだ。そう己に言い聞かせて何とか納得した。
そうして雷が生徒会室を去った後で、主にアレンから質問攻めにされた。
「今日再会したって言ってたけど、会長は雷くん一筋の認識で良いんだよね?」
「ああ。雷に持つ感情を他の奴に持った覚えはない。今後も雷だけだ」
「熱いねえ~。んじゃ次、抱きついた時雷くんからフェロモンの匂いはしなかったからβだと思ったんだけど、その辺りどうなの?」
やはり食えない奴だ。天真爛漫な顔をして中身は結構な切れ者だ。
「それは探究心からか?」
「やだなぁ。二人を心配して聞くんだよぉ」
アレンの両親はバース性の研究者で、アレン自身も研究者として名を上げている。界隈では有名な人物だ。
雷を巻き込んだら承知しないからな、覚悟しておけ。
そう睨みを聞かせてから本題に入る。
「雷はβだ。今は、な。俺は確信している。雷は俺の運命の番だ」
「雷くんは隠れΩか~。身体的特徴はΩと一致するからね、納得。となると問題は覚醒させるタイミングだけだね」
「おい、アレン。ひとつ質問いいか?覚醒はさせるもんじゃなくてするもんじゃないのか?」
「雪男は知らないんだっけ。確かに隠れΩはきっかけがあれば時間をかけて自然にΩに性転するけど、あのαは誘発フェロモンを当てて、意図的且つ即時的にΩに覚醒させられるんだよ」
「へぇ。あのαって何だ?」
「それは僕からは言えないかな。知りたいなら会長に聞いて」
「あ~、……いや、俺から言おう。お前らの信用を買って話す。
アレンは付き合いが長いから知ってるが、俺はαでもプラチナαだ。βでもオメガ因子を一定数持っていればΩに変えることができる上位のα。一度くらいは聞いたことあるだろう」
「運命の番に出会うよりも難しい、っていうあのαか!?てっきり都市伝説だと思ってたぞ」
「数は少ないが確かに存在する。普通は知らないのも無理はない。秘匿されてるからな。いいか、この事は口外無用だ。万が一漏れることがあれば、お前らの身も危ないからな。気をつけろ」
「おう!誰にも言わねぇよ」
「面倒事は避けたいので言われるまでもないですね」
「私も、言いません…その証拠に話す人なんていないですし……」
「うんうん。優しいよねぇ、会長ってさ。僕も黙秘するよー。その代わり研究に付き合ってよね」
コイツらなら裏切らないと信じ切れる。
人を見る目には自信がある。幼い頃から連れ回され、色んな連中を見てきたおかげだな。あんな思いは二度と経験なんぞしたくないが。
「……話戻していいか。覚醒のタイミングだが雷の気持ちの問題もあるし、そもそもが未だ付き合ってもいないから先になる。俺が振られる可能性はない。絶対に堕とす。だからそれまで、お前らには雷を守ってやって欲しい。俺が守りたいのは山々だが、護衛や俺の目が届かない時もあるだろう。その時は力を貸してくれ」
俺がそう言うと皆から呆れ顔で見られた。
「今更ですね。言われずともそうするつもりでしたよ。会長の大事な方となれば、我々も全力で守る所存です」
俺が信用しているように、コイツらも俺を信用してくれているんだと改めて知った。
何と心強いことか。
心の中で感謝しながら俺はこれからの日々に想いを馳せた。
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