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嫌いじゃない、むしろ好き…?
しおりを挟む悲しげに瞳を揺らして皇会長が僕に聞いてきた。叱ってくれる親の愛情を言葉以外から感じ取れなくて、不安になって僕のこと嫌い?って聞く子供みたいに。
「嫌い」って言われたくない、聞きたくないんだなって手に取るように分かった。
壇上で堂々としていた皇会長も、優しく僕に微笑んでくれる皇会長も、子供らしく輝いた笑顔で笑ってくれた昔の皇会長も、今の自信なさげな可愛い皇会長も、
____全部好き。
お菓子とケーキを大好きだと思う気持ちとよく似ている。何かが違うけど、違いは分からない。ただ好き。大好きなんだ。
嫌いなわけがない。むしろ、この短い時間で色々な皇会長の表情が見れて嬉しいくらい。もっと見たい、もっともっと見てみたい。そんな欲が湧き上がる。
ここで「嫌い」と言えば新たな一面が見られる。でもそれは、皇会長を傷付けて得られるものであって。悲しい顔はさせたくないし、僕も嘘はつきたくない。
なによりも、皇会長は僕に嫌われたくないんだなぁってわかったから。たとえ皇会長に嫌われても、僕が嫌うなんてあり得ないから。
不安そうな顔をして返事を待つ皇会長には申し訳ないけど、僕は嬉しい。胸がじわぁーっと温かくなる。嬉しくて頬が緩みそうになるけど、グッと堪える。
ちゃんと答えなきゃ。
そうして考えて出て来た答えはひどく単純で。
「僕が皇会長を嫌うなんてあり得ません!どんな姿の皇会長も好きです!!」
「そ、そうか…す、好き………か」
皇会長は目を大きく見開いた後、顔を顰め手を口に当てて横を向いてしまった。
僕の勢いが強すぎて引かれちゃった……嫌われちゃった…?
そう落ち込むがそれは違うとすぐに分かった。
皇会長の耳が苺みたいに真っ赤になっていたから。手の隙間から覗く頬も赤く染まっている。
そんな皇会長の姿を見て、なぜか恥ずかしくなってしまって顔を背ける。多分耳まで真っ赤だ。こそばゆい感じがする。
「うわぁ~、甘いねー。すぐ二人の世界に入るんだから。告白なら僕たちがいない時にやってくれない?」
こ、告白…!?
驚きで目を見開いた僕に、逆に驚いた顔でアレンさんが僕を見た。
「は?え、何。違うの!?アレ、誰からどう見ても告白でしょーが」
「え、いや、どこを見てそうなるんですかっ」
「うわぁ………無自覚だよこの子。天然まで入ってるっぽい。会長、大変だねぇ……ガンバレ」
アレンさんが呆れた顔をしながら、皇会長を慰めるように肩をポンポン叩いた。
見れば、周りの人達全員が盛大にため息を吐き、呆れたような顔だった。
僕の頭の中は、何が?でいっぱいだ。
声の主はだったのか、「長期戦になるな」と小さく呟く声が聞こえた。
その後、生徒会役員に全員接触してしまった僕は教室よりも生徒会室にいる方が安全だと全員から説得され、今後昼食を一緒に取る約束をした。放課後は毎日車で送ると皇会長に言われたけど、申し訳ないと思う気持ちと友人と帰るので大丈夫ですと伝えたら、渋々納得してくれた。
朝も迎えに行きたいと言われた時は流石にやめて欲しいと伝えた。皇会長はしょんぼりして悲しそうだったけど、普通の一軒家の前に豪華な車が止まれば近所の注目の的だし、お父さんとお兄ちゃんが顔面蒼白で狼狽える姿が目に浮かぶから、送迎は諦めて欲しい。
あまりにも皇会長が落ち込んじゃったから、お気持ちはとっても嬉しいです。と伝えておいた。
伝えた時、僕の顔はふにゃ、って溶けてたと思う。約束のためでも、僕のことを心配してくれる気持ちが嬉しかったんだ。
そんな話をして、僕は帰宅した。
二人はずっと待ってくれていたけど遅いから心配だったと、何度も携帯に連絡を入れてくれてたみたい。ごめんって謝って、何があったのか明日話すと伝えたらそれ以上は詮索しないでいてくれた。
既に日が沈み始めていて、暗くなる前に帰れなくなるから期間限定のケーキは諦めた。凄く食べたかったけど。
僕って根に持つタイプなんだ。
今度こそは絶対に食べ逃すもんかと、ふんっと鼻息荒く腕を捲って決意を固めてたら二人とも爆笑してた。ひどいなぁ……。
夕食を食べてお風呂に入ってベッドに横になったらすぐ眠りに落ちた。
皇会長に会ってからずっと感情が忙しなく動いてて、それで疲れちゃったんだと思う。
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