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諸刃の剣 【煌視点】
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【煌視点】
____南川雷
彼の名を聞いた時、俺は歓喜に震えた。
あの時のるいは彼だったのだと。あの日からずっと会いたいと願っていた。だがどれだけ探しても見つからなかった。
今なら見つけられなかった理由が分かる。
時が来るまで待つ必要があった。なぜなら彼は俺の運命の番だからだ。
運命の番とは数奇な運命を辿り、必然的に出逢うと云われている。
予感はあった。
雷を初めて見た時、懐かしい感情を覚えた。
昔、退屈なパーティーに連れ回され、いつもの様に抜け出したあの日。いつもとは違う事が起きた。
一人の少年と「約束」をした。
その子はるいといって、俺の笑顔がお星様みたいで好きだと言った。ずっと輝いていて欲しいと。
俺と変わらなそうな歳なのに俺とは違って純粋なあの子は屈託のない笑顔で楽しそうに笑っていた。
星空と同じ漆黒の色が輝いていて、何よりも綺麗な瞳をしているなと思った。
俺が持ち得ない全てをその子は持っていて、正直羨ましく思った。同時に綺麗なその瞳が曇って欲しくないとも。
あんな連中の側にいれば淀み曇ってしまう。ならば俺が守りたい。
乾いた心に潤いが満ちる。
その時初めて灰色の世界に色が付いた。
あの日から彼の笑顔を守る為、彼の瞳に俺を映す為に俺は「約束」を守ってきた。
腕のなかで眠っている雷の瞳は閉じられているが、先ほど起きていた時はあの頃と同じで綺麗なままだった。
____今度は俺が「約束」しよう。君を必ず守る。
そう誓って彼の髪をかきあげ、額に唇を寄せる。
その時彼の長い睫毛が震え、漆黒の瞳が瞼の隙間から覗いた。
「____そういう事だ」
雷の許可を得て守ると誓った後、嬉しそうに微笑む雷が可愛くて、頭を撫でようとしたらアレン達が騒ぎ立てた。
雷と俺の秘密にしておきたかったのだが、説明しろと煩くて敵わない。
アレンのことだ。黙っていても雷から無理やり聞き出すだろう。ならば全ては話さずに簡潔に説明すればいい。
そう考えた俺は雷の許可を取り、簡潔に話した。当たり前だが「約束」の事は省いた。
「へぇ~!子供の頃に出会ってたんだね。それで今再会を果たしたと。素敵じゃん!だから会長、あんなににっこにこだったのか~。普段表情筋動かないのに」
「動かないんじゃない。動かさないだけだ。無表情でも問題ないからいいだろう」
「問題あるだろ。お前、いつもイケメンなのに怖いって周りの奴らに言われてるぞ」
「あ~、でもそれがクールで堪らないって意見もあるよねぇ。僕たちからしたらどこがっ!?って感じだけど」
「私としてはそのままで結構ですよ。というかむしろそのままでいてください。貴方が微笑むと面倒事が増えますから」
うんうん、と咲人の後ろで頷く前髪がもっさりしている田中が見えた。
チッ、好き放題言いやがってと内心毒を吐くが周りの意見など俺にとってはどうでもいい事だ。
ただ一つ、気になる事は雷から無表情の俺がどう思われているか。
………嫌いと言われたら俺は立ち直れないなと自嘲気味に笑う。
俺の精神面は強い筈だが、雷が絡むと途端に脆くなる。
相手に弱点を晒していて不快な気分になるが、雷がそうさせているんだと思うだけでそれが心地良く感じる。
俺の心を揺さぶるのは雷だけだ。それが酷く嬉しい。
「雷、笑わない俺は嫌いか………?」
____南川雷
彼の名を聞いた時、俺は歓喜に震えた。
あの時のるいは彼だったのだと。あの日からずっと会いたいと願っていた。だがどれだけ探しても見つからなかった。
今なら見つけられなかった理由が分かる。
時が来るまで待つ必要があった。なぜなら彼は俺の運命の番だからだ。
運命の番とは数奇な運命を辿り、必然的に出逢うと云われている。
予感はあった。
雷を初めて見た時、懐かしい感情を覚えた。
昔、退屈なパーティーに連れ回され、いつもの様に抜け出したあの日。いつもとは違う事が起きた。
一人の少年と「約束」をした。
その子はるいといって、俺の笑顔がお星様みたいで好きだと言った。ずっと輝いていて欲しいと。
俺と変わらなそうな歳なのに俺とは違って純粋なあの子は屈託のない笑顔で楽しそうに笑っていた。
星空と同じ漆黒の色が輝いていて、何よりも綺麗な瞳をしているなと思った。
俺が持ち得ない全てをその子は持っていて、正直羨ましく思った。同時に綺麗なその瞳が曇って欲しくないとも。
あんな連中の側にいれば淀み曇ってしまう。ならば俺が守りたい。
乾いた心に潤いが満ちる。
その時初めて灰色の世界に色が付いた。
あの日から彼の笑顔を守る為、彼の瞳に俺を映す為に俺は「約束」を守ってきた。
腕のなかで眠っている雷の瞳は閉じられているが、先ほど起きていた時はあの頃と同じで綺麗なままだった。
____今度は俺が「約束」しよう。君を必ず守る。
そう誓って彼の髪をかきあげ、額に唇を寄せる。
その時彼の長い睫毛が震え、漆黒の瞳が瞼の隙間から覗いた。
「____そういう事だ」
雷の許可を得て守ると誓った後、嬉しそうに微笑む雷が可愛くて、頭を撫でようとしたらアレン達が騒ぎ立てた。
雷と俺の秘密にしておきたかったのだが、説明しろと煩くて敵わない。
アレンのことだ。黙っていても雷から無理やり聞き出すだろう。ならば全ては話さずに簡潔に説明すればいい。
そう考えた俺は雷の許可を取り、簡潔に話した。当たり前だが「約束」の事は省いた。
「へぇ~!子供の頃に出会ってたんだね。それで今再会を果たしたと。素敵じゃん!だから会長、あんなににっこにこだったのか~。普段表情筋動かないのに」
「動かないんじゃない。動かさないだけだ。無表情でも問題ないからいいだろう」
「問題あるだろ。お前、いつもイケメンなのに怖いって周りの奴らに言われてるぞ」
「あ~、でもそれがクールで堪らないって意見もあるよねぇ。僕たちからしたらどこがっ!?って感じだけど」
「私としてはそのままで結構ですよ。というかむしろそのままでいてください。貴方が微笑むと面倒事が増えますから」
うんうん、と咲人の後ろで頷く前髪がもっさりしている田中が見えた。
チッ、好き放題言いやがってと内心毒を吐くが周りの意見など俺にとってはどうでもいい事だ。
ただ一つ、気になる事は雷から無表情の俺がどう思われているか。
………嫌いと言われたら俺は立ち直れないなと自嘲気味に笑う。
俺の精神面は強い筈だが、雷が絡むと途端に脆くなる。
相手に弱点を晒していて不快な気分になるが、雷がそうさせているんだと思うだけでそれが心地良く感じる。
俺の心を揺さぶるのは雷だけだ。それが酷く嬉しい。
「雷、笑わない俺は嫌いか………?」
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