世話焼きαの甘い罠

めっちゃ抹茶

文字の大きさ
上 下
9 / 39

あの時の美少年は今

しおりを挟む



なんだか懐かしい夢を見た。遠い昔の朧げな記憶を手繰り寄せて引っ張って、霧を振り払う。それで漸くちゃんと思い出せた、そんな夢。

意識が浮上して瞼が薄く開く。

「雷、目が覚めたか。急に倒れるから驚いた。気分はどうだ?」

心配そうな顔をした皇会長が視界に入る。思い出した。僕キャパオーバーで倒れたんだ。
心配かけてごめんなさい。
そう謝ろうと思い口を開いたけど、出てきた言葉は謝罪じゃなかった。

「また、会えた…やく、そく……守ってくれたんだ。良かったぁ………」

皇会長が一瞬目を見開いて、それからあの時と同じ満面の笑みで笑ってくれた。

「あぁ、大事な約束だからな。守ったよ。俺も守りたいって思ったからな。雷の笑顔を」

今までで一番嬉しくて、僕も笑顔で応えた。
皇会長の指が頬を優しく拭う。
いつの間にか涙が流れていたみたいだ。

「これからは俺に雷の笑顔を守らせてくれ。………いいか?」

強い意志を感じる瞳で、真剣な表情をして僕に許しを請う。そこには親衛隊から守るだけじゃないものをなんとなく感じた。
無理やり押し通してもいいのに、ちゃんと聞いてくれる皇会長はやっぱり優しい。

「うん!僕を守ってください、皇会長」

こんな素敵な人に守って貰えるなんて、どんな幸運だろうか。申し訳ないなんて気持ちはどこかに吹き飛んで、この人に守られたいって浅ましくも思う。

____僕だけの特権だったらいいのにな

そんな気持ちが芽生えてちょっと胸がモヤモヤする。原因は分からないけど、僕って欲張りだったんだなぁ。そんな風に思っていると、

「ちょっと二人の世界に入らないでくれる!?僕たちもいるよ!ここに!雷くん目が覚めて良かった~。

ってそんなことよりも!………君達、一体どういう関係なの?全部吐くまで問い詰めるよ。僕に隠し事は許さないからねっ!」

笑顔から一転。天使のような美少年が黒いものを携えて目が笑ってない笑顔になった。

「私も気になりますね。会長の笑顔を初めて見ました」

「人様の恋愛なんぞ興味ねぇが、俺も聞きたい」

眼鏡の彼とムキムキの彼も頷いて同意した。

「あのぉ…私も聞きたいです」

小さな声がムキムキの彼の後ろから聞こえたと思ったら目を前髪で覆った細い身体をした人がスッと出て来た。

まだいたのっ!?
と一瞬思ったが、思えば生徒会は5人だったなと一人勝手に納得する。
平凡な僕の目の前に生徒会役員が全員揃ってる。なんてことっ!

平凡で平和だった日々が、ガラガラと崩れる音が聞こえる。不穏な音とは反対に、恋の予感とこれからの日常に胸は期待に膨らんでいた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》

市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。 男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。 (旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...