世話焼きαの甘い罠

めっちゃ抹茶

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お膝の上で

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「もう…下ろしてください…………」

俯いて赤くなった頬を隠しながらイヤイヤと首を横に振る。

生徒会室の前で転び、紙をばら撒いてしまった僕を手伝ってくれた彼にいつの間にかソファに座らされていて、生徒会の追っかけである親衛隊の話を聞いていた。
友人から噂程度に聞いていたけど、平和な学校内でそんな事が起きていたのは正直ショックだった。クラスのみんなは優しい人が多くて、危ない事なんて一度も起きたことがない。
信じたくはないけど彼の瞳に嘘の色はなくて、人に隠れて裏で暴力を振るっているんだと、僕でもわかった。
怯えた僕に護衛を付けてくれると彼は言った。
護衛を手配出来るってお金持ちなのでは…?

そして、そのお礼を伝えたら見返りとして何故か膝の上に抱っこをさせてくれと言われ、横向きで抱えられている今。
先程の盛大な失態を目撃されて、しかもお膝の上に乗せられるとか、情けないし恥ずかしくて僕には耐えられない。
それに早くしないとタルトケーキを逃してしまう…!二人にも悪いし…。

「大丈夫だ。誰も見てない」

いや、そうじゃなくて…と呟いた声はこの状況を作った張本人に無視される、ことはなく、

「重かっただろう。さしづめ誰かに押し付けられたんだろうが、他の人に押し付ける事なく放って置かずに持って来た君は優しいな」

そう言って頭を撫でられた。
子供みたいで恥ずかしいのに、僕の気持ちを汲んで慰めてくれてる声と手が優しくて心が落ち着いてしまう。
なによりも彼から香るレモンのような爽やかな香りが酷く懐かしくて安心する。

「ほら、食べないのか?」

フォークに一口大のショートケーキを乗せ、目の前に差し出される。

「た、食べますけど、自分で食べられますから…」

俯いた顔を上げ、視線で勘弁してと訴える。

「くっ……可愛い」ボソッ
「ほら、早くしないとケーキが落ちるぞ」

「うっ…ケーキに罪はない、ので。い、いただきます」

ケーキを落とすと言われて慌てて口を開き、パクッと食べた。
舌の上でとろけるふわっとしたきめ細やかなスポンジと苺の酸味、それらを優しく包んでる生クリーム。全てが絶妙に絡み合って一体感を生み出している。
こんなに美味しいショートケーキ、初めて食べた!

初めて食べる美味しさについ頬が緩んでしまう。
次々に差し出されるケーキを夢中で頬張っていると強い視線を感じた。

視線を辿ってみれば、驚いた表情で固まっている扉を開けたまま4人の男が立っていた。

み、見られた…!?

ケーキに夢中になって忘れていた、"膝の上であ~ん"という恥ずかしい状況だったのを思い出し、ボンッと音が立つ勢いで顔に血が昇った。
は、恥ずかし過ぎるっ!ひ、人に見られたとか余計にむりぃぃ!羞恥心が限界突破するっ!!

ひとまずお膝から降りなければっ!とあわあわしながら降りようとするもいつの間にか腰に回された両腕がガッチリと固定されていて、どれだけ身を捩ってもびくともしなかった。

「会長、なにひとりだけ楽しいことしてるんですかー。ずーるーいー!僕にもその子紹介してください」
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