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面倒事を押し付けるのはやめましょう
しおりを挟む__遡ること少し前
帰りの支度途中、友達の光(ひかる)、拓也(たくや)とたわいも無い会話をする。
「帰りどっか寄ってく?」
「じゃあケーキ食べに行ってもいい!?」
「僕はいいよ~。拓は?」
「え~、俺甘いの苦手って知ってんだろ」
「期間限定のケーキぃ…今日までだから食べたかったのに…」
たまに行く洋菓子店で数種類のマスカットケーキが期間限定で販売されている。
あと1種類、僕が大好きなタルトだけ食べれていないのだ。
いつもなら光を誘うか一人で食べに行くのだけど、今日はどうしても譲れない。
「……しょうがねぇなぁ。付き合ってやるよ」
「ほんと!?拓、ありがと!」
嬉しさのあまり拓の手を両手で取ってブンブン振った。
拓の顔が赤くなった気がしたけど、気のせいかな?
「雷ってばほんと甘い物に目がないよねえ~」
「美味しいものはおいしいじゃん?」
「甘い物好きにも限度ってものがあると思うよー。雷はそれをゆうに超えてんの。美味しいのはわかるけどさ」
光は僕を極度の甘党だと言うけど、それなりに好きなだけで極めて好きじゃないと思う。でも甘い物に目がないのは否定できない…
正門を出て肩からずり落ちた鞄を抱え直した時、あることに気がつく。
「二人ともごめん、先に行ってて!教室に忘れ物した」
「それくらい付いてくよ。ねえ、拓」
「あぁ、すぐそこだしな」
「大丈夫。すぐ終わるから、後から追いつく。んじゃちょっと取りに行ってくるー!」
「ああ!ちょっと雷ー!」
二人を振り切って急いで教室に戻る。ガラリと薄暗く静まった教室で一箇所だけ光り輝いて見えた。
「あ…!あったぁ!よかった~。僕の大事なクーポン券!」
光り輝いて見えるこのクーポン権は洋菓子店の店長さんから貰ったもので、なんと!頼んだものと同じものが1つ無料でもらえちゃう券なのだ!これでマスカットタルトを2個堪能しようと今日まで大事に取って置いたのだけど、僕としたことが机に置いたまま忘れてしまったのである。
無事にクーポン券あったし、さあ二人の元に帰ろうと思った時、嫌な予感がした。
大抵の嫌な予感というのは当たるもので、今回も例に漏れなかった。
何かに急かされるようにして早足で廊下を歩いていると前から担任の教師が歩いてきた。満面の笑みで。それはもう、いや~な予感がした。
「お!南川、ちょうどいいところにいた。これ、生徒会まで持って行ってくれ。俺急いでるから。じゃ、よろしく!」
「え、ちょっ、僕も急いでるんですけど!」
両手に抱えていた紙の束を無理やり押し付けられ、問答無用で頼まれた。
タルトケーキと二人を待たせているって言うのにぃ!あーもう!あの教師ってば自分の仕事を生徒に押し付けて!それでも大人かっ!!
なんて怒りながら廊下を歩いてたのがいけなかったのだろうか。紙の束は結構な重さがあって、ふらふらしながら大量の紙で視界が塞がれ、足元が見えてなかった。
「いっ……!たぁ………。ぁあ、紙が!」
何でもない廊下で転んだ。大量の紙が宙を舞い、床に落ちる。目の前には悲惨なほど散らばった紙。
もしかして種類別に別けられていたんじゃ…と気が付き、ずうーんと気分が落ち込む。一般生徒が資料を見て細かく別けられるはずもない。時間がかかるけど仕方ない。わかる分だけ分類して生徒会の人に渡したら正直に謝罪しよう。そう決めた時、僕の左側から誰かの声と扉が開く音がした。
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