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本編
学園生活、始まります! 06
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出迎えや荷解きの際、前世の感覚がどうしても抜けきらず、使用人に挨拶をしようとしたらラモンにこっぴどく叱られた。
貴族は貴族位が高い者にしか頭を下げてはならない。誰彼構わず頭を下げていては僕だけでなく、アスカード家まで貶されると。
確かにその通りだ。母方の生家であるアスカード家の評判を僕のせいで落とす事はしたくない。それにもう此処は日本ではない。腰を低くして己を殺す時間はもう終わっている。
ラモンはマナーや勉学の教師が近々いらっしゃるのでご安心下さい。おぼっちゃまならすぐに習得なさるでしょう。そう言って朗らかに微笑んだ。
ーーーーーー
ディーが書斎の扉を叩く。
「父上、メルを連れてきました」
「ンンっ、入りなさい」
「失礼します」
ディーに出迎えられた後、僕の部屋を案内され、数人の使用人に荷解きを任せ書斎に連れて来られた。
僕から見て叔父ではあるが、領地経営の手腕を目の当たりにしたからか、少し緊張する。
扉を開けた先には椅子に座りながらこちらを見据えて、微動だにしない伯爵様の姿があった。
「父上………父上っ!」
スパーン、と綺麗な音がした。
目の前で、ディーが伯爵様の頬を平手打ちしたのだ。それもかなり容赦なく。叩かれた頬は綺麗に指の跡が付き、赤く染まっている。
今起きた事を理解したくはないが、何となく理解した。一つだけ言わせて欲しい。
____ディー、コワイ。
伯爵様は息子に叩かれて激怒でもするのでは、と僕は身構えたが怒号は飛ばず、逆に笑いが書斎に響いた。
「ハッハッハ、いやぁ~すまんすまん。あまりにも君が兄上に似ていたものだから。驚きの余り動けなくなってな。ディー、助かった。いつもすまんな」
「父上、それはいいですが渋い声で格好付けても似合っていません。それに、どうせすぐにバレるんですから無駄です。父上は隠し事が苦手でしょう」
………仲良いんだなぁ。
彼等のやり取りを見た時、僕が抱いた感想だ。
父親の頬を引っ叩く息子、これのどこが仲が良いんだ?と思うかもしれないが、互いにとってなんともない事のようだし、日常の一部らしいのだから問題ないんだろうな。ディーは容赦なく叩き過ぎだと思わないでもないけど…。伯爵様の左頬がお痛ましい。
しかし、貴族らしさは感じないがこれが伯爵様のやり方だと分かる。領民の明るさは伯爵様所以だろうか。
往来の性格故かもしれないが、気取らなくていいのなら此処で暮らしていく分には遥かに過ごしやすい。
仲の良い両親の元で育ったからか、堅苦しいのはどうも苦手だ。前世の記憶が影響を及ぼしているとも思う。
貴族は貴族位が高い者にしか頭を下げてはならない。誰彼構わず頭を下げていては僕だけでなく、アスカード家まで貶されると。
確かにその通りだ。母方の生家であるアスカード家の評判を僕のせいで落とす事はしたくない。それにもう此処は日本ではない。腰を低くして己を殺す時間はもう終わっている。
ラモンはマナーや勉学の教師が近々いらっしゃるのでご安心下さい。おぼっちゃまならすぐに習得なさるでしょう。そう言って朗らかに微笑んだ。
ーーーーーー
ディーが書斎の扉を叩く。
「父上、メルを連れてきました」
「ンンっ、入りなさい」
「失礼します」
ディーに出迎えられた後、僕の部屋を案内され、数人の使用人に荷解きを任せ書斎に連れて来られた。
僕から見て叔父ではあるが、領地経営の手腕を目の当たりにしたからか、少し緊張する。
扉を開けた先には椅子に座りながらこちらを見据えて、微動だにしない伯爵様の姿があった。
「父上………父上っ!」
スパーン、と綺麗な音がした。
目の前で、ディーが伯爵様の頬を平手打ちしたのだ。それもかなり容赦なく。叩かれた頬は綺麗に指の跡が付き、赤く染まっている。
今起きた事を理解したくはないが、何となく理解した。一つだけ言わせて欲しい。
____ディー、コワイ。
伯爵様は息子に叩かれて激怒でもするのでは、と僕は身構えたが怒号は飛ばず、逆に笑いが書斎に響いた。
「ハッハッハ、いやぁ~すまんすまん。あまりにも君が兄上に似ていたものだから。驚きの余り動けなくなってな。ディー、助かった。いつもすまんな」
「父上、それはいいですが渋い声で格好付けても似合っていません。それに、どうせすぐにバレるんですから無駄です。父上は隠し事が苦手でしょう」
………仲良いんだなぁ。
彼等のやり取りを見た時、僕が抱いた感想だ。
父親の頬を引っ叩く息子、これのどこが仲が良いんだ?と思うかもしれないが、互いにとってなんともない事のようだし、日常の一部らしいのだから問題ないんだろうな。ディーは容赦なく叩き過ぎだと思わないでもないけど…。伯爵様の左頬がお痛ましい。
しかし、貴族らしさは感じないがこれが伯爵様のやり方だと分かる。領民の明るさは伯爵様所以だろうか。
往来の性格故かもしれないが、気取らなくていいのなら此処で暮らしていく分には遥かに過ごしやすい。
仲の良い両親の元で育ったからか、堅苦しいのはどうも苦手だ。前世の記憶が影響を及ぼしているとも思う。
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