愛が重い！がデフォルトの世界で、僕は愛を知る

本編

学園生活、始まります！ 03

そういう輩には反応を示してはいけない。絡まれれば碌な事にならないことを僕は既に知っている。これは僕なりの処世術だ。

出来る限り視界に入らないよう背を縮めて壁際に移動する。
こういった時は非常に不満だが僕の背の低さが役に立つ。158cmとΩ男性の平均身長を遥かに下回る低身長の僕は人混みの中に紛れて仕舞えば、大抵気付かれない。


暫くすると盛大な音楽と共に学園の重鎮方が奥の扉から入場して来た。雑談が止み、会場が静寂に包まれる。
驚くことに国王陛下もいらっしゃった。
国王陛下が自ら学園に姿を現す事が、どれほどこの学園に力を入れているかを示している。生半可な気持ちでは卒業すらままならないだろう。

会場にいる全ての人が国王陛下に対して膝をつき、首を垂れる。
先程嘲笑を浮かべてこちらを見ていた貴族達は、一様に真剣な表情をして微動だにせず、王の次の動きを見守っていた。

そこは流石に教育を施された貴族だな、と妙に感心してしまう。

ーーーーーー
前世同様、お偉い様方のながぁ～い挨拶が終わると後は場に残った貴族達の交流会が始まる。

この学園は令息、令嬢達の主な出会いの場でもある。
卒業生であることが優秀さを示す一種のステータスになっており、貴族の箔を上げるためにも入学する者が後を経たない。
名門貴族家で定期的に開催されるお茶会や舞踏会も出会いの場にはなっているが、下位貴族は滅多に参加することが出来ないため、αとΩの出会いは専らこの学園に限ってくる。

皆が自己アピールやお家自慢を繰り広げる中、恋愛にあまり興味のない僕は、目の前に広げられた甘くて美味しいお菓子達を口いっぱいに頬張り、堪能する。
普段から趣味でお菓子を作ったり、アスカード家で出てくる市販のお菓子を食べたりはしているが、王族もいるこの場で出される物はどれも一級品で格別だ。

ん～！このクッキー甘くておいひぃ～
サクサク、ほろほろだぁ。
ショートケーキはスポンジがふわっふわで口に入れた瞬間溶ける～！
ザッハトルテも美味しい～！
蕩けるようなあまぁい匂いまでしてきた。
んふふ、幸せだぁ。

周りの目なんて何のその。
貴族のマナーも無視して、僕は目の前のご馳走に齧り付いていた。

暫くの間お菓子に夢中になっていた僕は、遠くから僕をじっと見つめる視線に気がつかなかった。