愛が重い！がデフォルトの世界で、僕は愛を知る

本編

学園生活、始まります！ 02

案内に従い「魔術薬士科」と書かれた、見るからに古いレンガ造りの建物に入る。
お世辞にも綺麗とは言えない中は所々に亀裂が入っていて、小柄で力のない僕でも体当たりをすれば崩れてしまいそうなほど脆く感じた。

ここが今日から学ぶ学舎なの…？
古くない？崩れない？ねぇ、大丈夫…？
ヒビ入ってるし、壁とか燻んじゃってるよぉ。
今からでも進路変更できないかな…

不安が尽きないまま、教室に入る。
「おっ！来たな、新入生！これで全員揃ったな。そんじゃ早速、自己紹介するか！」

教師と思われる溌剌とした男性は前世の言葉で言うところのゴリマッチョで、ニカっと笑うと歯並びの良い白い歯がキラーん、と光って眩しい。
全員が着席したのを確認したのち、男性はその風貌に違わない大きな声で自己紹介を始めた。

「魔術薬士科担当のガルド・アルバーンだ。2年と3年はもう知ってるよな。見ての通りαだが番がいるからそこは安心していい。お前達がこれから目指す薬士はなにかと他の奴らから馬鹿にされがちだが、みんなの健康は俺達にかかってる。それくらい重要な役割を負ってる。だから何か言われても胸張ってけよ！」

教室には総勢20名の薬士科に在籍する生徒が所狭しと並ぶ。科ごとに支給された指定の制服に身を包み、学年毎に色の違うタイを身につけている。

あれから1人ずつ簡単な自己紹介を終え、新入生はアルバーン先生に連れられて本館の舞踏会場まで歩いていく。
学園の敷地内はとても広くて移動だけでも骨が折れそうだ。

「さぁ着いたぞ。これから新入生に向けてお偉いさん方の挨拶が始まるから、お前達はここで待機な」


城の形状をしている立派な本館は僕らの学舎とは違い、豪華絢爛だ。天井にはシャンデリアがぶら下がり、等間隔で設置された柱には繊細な装飾が施されている。
舞踏会場には煌びやかな世界が広がっており、まさに貴族だけが入れる場所だった。元々平民だった僕は初めて見る高貴な世界に少々萎縮してしまう。
そして何よりも、周りにいる新入生からの不躾な視線が刺さる。それには純粋な興味からの視線もあったが、殆どが僕らを見下した、不快感を伴ったものだった。