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一年目 春
GW⑧ 【S & M④】
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私は、この幸志郎の話を聞いて、すぐに返答する事が出来ませんでした。
その内容が、私の想像力の限界を超越していたのと、分からない所もあって、パニックになっていたからです。
それでも、何とか気持ちを落ち着かせて、話の中で気になったポイントを何とか整理していると、彼が私に近付いて来て、手枷をされた状態で、ぶら下がるようにしていた私の手を取ると、手枷の鎖の部分を持たせてくれました。
「突っ立ったままで、シンドくない?
こうやって、鎖を持つようにすると少し腕は楽になるし、あのままだと、手首に痕が残るから」
「うん、大丈夫、ありがとう。
コウって……こんなに優しいのに……本当にSなの?」
「優しい?
俺、今も君に対して、Sとして強い欲望を持ってる事は本当だし、自由を奪われている君の姿に少なからず興奮してるよ。
ただ、Sにもタイプが有るからね。
それぞれに好むプレイも違うし、何よりも、俺は君を愛してる。
だから、君をメチャクチャにしたいけど……傷や痕が残る事はしないから」
そう言いながら幸志郎は、壁に掛けてあった数本の鞭の中の一本を手に取ると、それをヒュン!と振り下ろして、バッチィーンと床を打ちました。
それに私は、ビクッ!となって……泪が目に浮かんで
【打たれる?】
と思って、身体を硬くして緊張していました。
すると彼は
「俺は、こんなので、パートナーを打つとか、そういうのは全くしたいと思わない。
イギリス時代に、彼女に言われてやった事も有るけど……何も楽しくなんか無い。
受けてる方は、それなりに感じてる声とか出すけどね。
俺は、気分的には冷めちゃって、ヤル気失せちゃうんだよ。
女性は男にとって、守るべき存在であって、痛め付けて、跪かせて、高揚する為の道具じゃない。
俺の中では、そういう考えしか無くてね、特に愛してる相手を傷付けるなんて、有り得ないとしか思えない。
コレはね、一本鞭って言うんだよ。
コレで、本気で打つと、肉が裂けてしまう程の威力が有るんだ。
鞭の中で最も扱いが難しいって言われてる。
こんなの、いくらプレイルームとは言っても、こんなホテルに置いておくべき物じゃ無い。
もし、知識不足の素人が遊び半分で使ったら、場合によっては大怪我するんだよ。
色々なプレイも有るだろうけど、こういうのが、間違った認識を人に齎すんだよ。
俺は、君を痛めつけたいんじゃない。
ただ、君を……俺の物にしたい、一生、俺専用の女にしたい……そういう欲望が抑えられない。
だから、君に対してこんなのを使う事は絶対に無いから」
私、彼がこの時に、いつも見せる凄く優しげな笑顔を見せてくれた事で、急に落ち着きを取り戻してリラックスする事が出来て、それで質問をする事が出来ました。
「コウ、あの……後遺症って、どうなるの?」
「後遺症? あぁ、アナルフィストのか。
実際に見たら分かる事なんだけど、ミユはそんなの想像も出来ないだろうから、後遺症って言われても理解出来ないんだな。
個人差も有るらしいんだけど、アナルって……肛門だから、排便の時に普通でも最大で直径四センチを少し超える所までは拡がるらしいんだけど、ソコへフィスト……拳を入れるんだから、随分と肛門を拡張しないと入らないのは分かるよね?
その為に、長い時間を掛けて、アナルを拡げる為のトレーニングをするんだよ。
徐々に太い物を入れて行ってね。
で、フィストを受け入れる事が出来る所まで拡げちゃったら、元々、無意識にキツく閉じてる所だから、緩んじゃって閉まりきらなくなって、本人が意識して閉めておかないと、少し開いたままになってしまう。
で、肛門の奥は直腸だけど、そこにはヒューストン弁ってのが二箇所あって、度重なるトレーニングして柔軟になるから、無意識に便が通りやすくなる。
さらに、アナルフィストは慣れてくると奥まで腕を挿入するから、直腸の先にあるS状結腸口を超えて挿入する事になるんだけど、このS状結腸口っていうのは、結局は直腸に便が降りてくる最後の砦みたいな役割をしてるから、そこも柔軟に拡がるようにトレーニングしてしまうと、緩みやすくなるからね……人間は二足歩行だから、気を抜くと地球の重力で、勝手に便が降りて来て、便漏れするようになるんだよ。
もう、そこまで行ったら、一生治らない場合が多いらしい」
「そんな……なのに何故、それを求めるの?」
「フィストには、フィストでしか味わえない肉体的快感と、精神的に充足感があるらしい。
それと、人によっては、そこまで行っても、便漏れしない……後遺症にならない人も居る」
「コウ……私にしたいの?」
「はぁ?……バカ言うな!
俺が君が壊れるような事、する訳ないだろ!」
語気を荒げて否定する彼。
「そういうのって、壊れるって言うのね?」
「ああ、もう元に戻らなくなって、機能的に壊れてるからね」
「でも、私をメチャクチャにしたいって……激しい欲望が有るって」
「いや、そうだけど君を壊したい訳じゃないし、傷付けたいなんて思ってない!
ただ、俺の女として縛り付けときたいだけだ」
「良かった……コウの腕、突っ込まれるの?って思っちゃった」
「いやいや、俺にそれは無理だよ、趣味じゃないし、ミユ相手に絶対に出来ないよ」
「でも、それでしか味わえない快感と充足感があるんでしょう?」
「そういうけど……俺はSとして、それをしても全く快感も充足感も感じない。
ミユとエッチするようになって、本当に心が通じ合って、お互いに求め合うエッチだったら、そんな事までしなくても、お互いに充分に感じれるし満たされるって分かったし、その延長線上のプレイしか興味は無い。
だから、そんな身体を壊すような責めには興味ないし、そんなのは、する方もされる方も……異常としか思えないよ」
「ホントに?……そう思ってる?……それで満足出来てるのね?」
「嘘なんか言わないよ。
さっきも言ったけど、俺はフィストなんてしたいと思った事は一度も無いし、そういうSとは種類が違うんだよ、それに、君は今でも失神する程感じてるのに、それ以上、必要無いし意味無いでしょ?」
「そっか……そうよね」
「だろ?」
「その彼女さんって、綺麗だったの?」
「そうだな……オフィスでは、影でバービィって呼ばれてたよ。
バービィ人形のバービィね」
「バービィ人形?って……凄いよね?
コウ、凄く好みでしょう?」
「いや、ちょっと俺の好みからは外れるんだけど……俺って、華奢で繊細な女性らしい弱さみたいな物を感じさせてくれる、そうだな……ガラスのような繊細な女性が好きなんだよ。
ミユは、白人女性との接点があまり無いのかな?
向こうの女性は、細くてスタイルが良い人でも、日本人を見慣れた俺からしたら、逞しくてガッチリしてる。
骨からして太いって言ったら良いのかな、肩幅も有るし、胸も有る、お尻もしっかり有るから、相対的にウエストは細く見える。
けど、実際に抱き締めると、身体の厚みも有って、ウエストもしっかりしてて華奢な印象は受けないんだよね。
各パーツは女だし凄いんだけど、少し男が入ってる感じって言えば分かるかな?
だから、確かに綺麗だけど、俺の好みとは少し違う。
身長は君よりも五センチ程低いけど、体重は同じか少し重いかも……とにかく、ガッチリしてるんだよ、力も強いし、繊細さとか弱さは感じない。
人形で例えると、俺が好きなのは、百貨店とかの洋服売り場で並んでるマネキンのような、線の細い女性なんだ。
バービィ人形とは、全然違うよ」
「でも、貴方が出逢ったイギリス女性の中では一番綺麗だったんでしょう?
私と、どっちが綺麗?どちらが美しい?」
「えっ!……なんだそれ?比べ物に成らないんだけど」
「ちゃんと答えて」
「あのさぁ、向こうの女性って毛深いし、色は白いけど肌ツヤ悪いし、体臭もキツいし、金髪で目が青くて美人で、向こうでは綺麗って言われてても、全然ダメだよ。
君とはレベルが違い過ぎてて、比べようが無い。
圧倒的に、君の勝ちです。
って言うか、前にも言ったけど、俺の知ってる女性の中で、君は圧倒的に美しいって」
「本当?」
「本当だよ!
って言うか、ミユって、ひょっとして向こうの人にコンプレックス持ってたりする?」
「えっ?……そうかな……そうかも、よく外国のファッションショーの画像とか本を見てて、向こうのモデルさんを見て、憧れてたから」
「あー……そりゃ、向こうの人でもプロのモデルなら、実際に見ても本当に綺麗なのかもしれないけど、そんなの向こうでも、ほんのひと握りの女性だけだよ。
君だって、そういう意味では、そのほんのひと握りの女性だと俺は思ってるよ」
「そうかな……ちょっと嬉しいかも」
「そう?……じゃあ、彼女との事は理解してくれた?」
「は、はい……理解しました」
「良かった……じゃぁ、もう良いよね?」
(つづく)
その内容が、私の想像力の限界を超越していたのと、分からない所もあって、パニックになっていたからです。
それでも、何とか気持ちを落ち着かせて、話の中で気になったポイントを何とか整理していると、彼が私に近付いて来て、手枷をされた状態で、ぶら下がるようにしていた私の手を取ると、手枷の鎖の部分を持たせてくれました。
「突っ立ったままで、シンドくない?
こうやって、鎖を持つようにすると少し腕は楽になるし、あのままだと、手首に痕が残るから」
「うん、大丈夫、ありがとう。
コウって……こんなに優しいのに……本当にSなの?」
「優しい?
俺、今も君に対して、Sとして強い欲望を持ってる事は本当だし、自由を奪われている君の姿に少なからず興奮してるよ。
ただ、Sにもタイプが有るからね。
それぞれに好むプレイも違うし、何よりも、俺は君を愛してる。
だから、君をメチャクチャにしたいけど……傷や痕が残る事はしないから」
そう言いながら幸志郎は、壁に掛けてあった数本の鞭の中の一本を手に取ると、それをヒュン!と振り下ろして、バッチィーンと床を打ちました。
それに私は、ビクッ!となって……泪が目に浮かんで
【打たれる?】
と思って、身体を硬くして緊張していました。
すると彼は
「俺は、こんなので、パートナーを打つとか、そういうのは全くしたいと思わない。
イギリス時代に、彼女に言われてやった事も有るけど……何も楽しくなんか無い。
受けてる方は、それなりに感じてる声とか出すけどね。
俺は、気分的には冷めちゃって、ヤル気失せちゃうんだよ。
女性は男にとって、守るべき存在であって、痛め付けて、跪かせて、高揚する為の道具じゃない。
俺の中では、そういう考えしか無くてね、特に愛してる相手を傷付けるなんて、有り得ないとしか思えない。
コレはね、一本鞭って言うんだよ。
コレで、本気で打つと、肉が裂けてしまう程の威力が有るんだ。
鞭の中で最も扱いが難しいって言われてる。
こんなの、いくらプレイルームとは言っても、こんなホテルに置いておくべき物じゃ無い。
もし、知識不足の素人が遊び半分で使ったら、場合によっては大怪我するんだよ。
色々なプレイも有るだろうけど、こういうのが、間違った認識を人に齎すんだよ。
俺は、君を痛めつけたいんじゃない。
ただ、君を……俺の物にしたい、一生、俺専用の女にしたい……そういう欲望が抑えられない。
だから、君に対してこんなのを使う事は絶対に無いから」
私、彼がこの時に、いつも見せる凄く優しげな笑顔を見せてくれた事で、急に落ち着きを取り戻してリラックスする事が出来て、それで質問をする事が出来ました。
「コウ、あの……後遺症って、どうなるの?」
「後遺症? あぁ、アナルフィストのか。
実際に見たら分かる事なんだけど、ミユはそんなの想像も出来ないだろうから、後遺症って言われても理解出来ないんだな。
個人差も有るらしいんだけど、アナルって……肛門だから、排便の時に普通でも最大で直径四センチを少し超える所までは拡がるらしいんだけど、ソコへフィスト……拳を入れるんだから、随分と肛門を拡張しないと入らないのは分かるよね?
その為に、長い時間を掛けて、アナルを拡げる為のトレーニングをするんだよ。
徐々に太い物を入れて行ってね。
で、フィストを受け入れる事が出来る所まで拡げちゃったら、元々、無意識にキツく閉じてる所だから、緩んじゃって閉まりきらなくなって、本人が意識して閉めておかないと、少し開いたままになってしまう。
で、肛門の奥は直腸だけど、そこにはヒューストン弁ってのが二箇所あって、度重なるトレーニングして柔軟になるから、無意識に便が通りやすくなる。
さらに、アナルフィストは慣れてくると奥まで腕を挿入するから、直腸の先にあるS状結腸口を超えて挿入する事になるんだけど、このS状結腸口っていうのは、結局は直腸に便が降りてくる最後の砦みたいな役割をしてるから、そこも柔軟に拡がるようにトレーニングしてしまうと、緩みやすくなるからね……人間は二足歩行だから、気を抜くと地球の重力で、勝手に便が降りて来て、便漏れするようになるんだよ。
もう、そこまで行ったら、一生治らない場合が多いらしい」
「そんな……なのに何故、それを求めるの?」
「フィストには、フィストでしか味わえない肉体的快感と、精神的に充足感があるらしい。
それと、人によっては、そこまで行っても、便漏れしない……後遺症にならない人も居る」
「コウ……私にしたいの?」
「はぁ?……バカ言うな!
俺が君が壊れるような事、する訳ないだろ!」
語気を荒げて否定する彼。
「そういうのって、壊れるって言うのね?」
「ああ、もう元に戻らなくなって、機能的に壊れてるからね」
「でも、私をメチャクチャにしたいって……激しい欲望が有るって」
「いや、そうだけど君を壊したい訳じゃないし、傷付けたいなんて思ってない!
ただ、俺の女として縛り付けときたいだけだ」
「良かった……コウの腕、突っ込まれるの?って思っちゃった」
「いやいや、俺にそれは無理だよ、趣味じゃないし、ミユ相手に絶対に出来ないよ」
「でも、それでしか味わえない快感と充足感があるんでしょう?」
「そういうけど……俺はSとして、それをしても全く快感も充足感も感じない。
ミユとエッチするようになって、本当に心が通じ合って、お互いに求め合うエッチだったら、そんな事までしなくても、お互いに充分に感じれるし満たされるって分かったし、その延長線上のプレイしか興味は無い。
だから、そんな身体を壊すような責めには興味ないし、そんなのは、する方もされる方も……異常としか思えないよ」
「ホントに?……そう思ってる?……それで満足出来てるのね?」
「嘘なんか言わないよ。
さっきも言ったけど、俺はフィストなんてしたいと思った事は一度も無いし、そういうSとは種類が違うんだよ、それに、君は今でも失神する程感じてるのに、それ以上、必要無いし意味無いでしょ?」
「そっか……そうよね」
「だろ?」
「その彼女さんって、綺麗だったの?」
「そうだな……オフィスでは、影でバービィって呼ばれてたよ。
バービィ人形のバービィね」
「バービィ人形?って……凄いよね?
コウ、凄く好みでしょう?」
「いや、ちょっと俺の好みからは外れるんだけど……俺って、華奢で繊細な女性らしい弱さみたいな物を感じさせてくれる、そうだな……ガラスのような繊細な女性が好きなんだよ。
ミユは、白人女性との接点があまり無いのかな?
向こうの女性は、細くてスタイルが良い人でも、日本人を見慣れた俺からしたら、逞しくてガッチリしてる。
骨からして太いって言ったら良いのかな、肩幅も有るし、胸も有る、お尻もしっかり有るから、相対的にウエストは細く見える。
けど、実際に抱き締めると、身体の厚みも有って、ウエストもしっかりしてて華奢な印象は受けないんだよね。
各パーツは女だし凄いんだけど、少し男が入ってる感じって言えば分かるかな?
だから、確かに綺麗だけど、俺の好みとは少し違う。
身長は君よりも五センチ程低いけど、体重は同じか少し重いかも……とにかく、ガッチリしてるんだよ、力も強いし、繊細さとか弱さは感じない。
人形で例えると、俺が好きなのは、百貨店とかの洋服売り場で並んでるマネキンのような、線の細い女性なんだ。
バービィ人形とは、全然違うよ」
「でも、貴方が出逢ったイギリス女性の中では一番綺麗だったんでしょう?
私と、どっちが綺麗?どちらが美しい?」
「えっ!……なんだそれ?比べ物に成らないんだけど」
「ちゃんと答えて」
「あのさぁ、向こうの女性って毛深いし、色は白いけど肌ツヤ悪いし、体臭もキツいし、金髪で目が青くて美人で、向こうでは綺麗って言われてても、全然ダメだよ。
君とはレベルが違い過ぎてて、比べようが無い。
圧倒的に、君の勝ちです。
って言うか、前にも言ったけど、俺の知ってる女性の中で、君は圧倒的に美しいって」
「本当?」
「本当だよ!
って言うか、ミユって、ひょっとして向こうの人にコンプレックス持ってたりする?」
「えっ?……そうかな……そうかも、よく外国のファッションショーの画像とか本を見てて、向こうのモデルさんを見て、憧れてたから」
「あー……そりゃ、向こうの人でもプロのモデルなら、実際に見ても本当に綺麗なのかもしれないけど、そんなの向こうでも、ほんのひと握りの女性だけだよ。
君だって、そういう意味では、そのほんのひと握りの女性だと俺は思ってるよ」
「そうかな……ちょっと嬉しいかも」
「そう?……じゃあ、彼女との事は理解してくれた?」
「は、はい……理解しました」
「良かった……じゃぁ、もう良いよね?」
(つづく)
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