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一年目 春
② 部屋探しが、大変な事に???
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この日は、朝から彼と車に乗って色々と二人の新居を探す旅に出ました。
朝、起きてすぐに彼は
「 ミユ、今日はお出掛けするから、カジュアルで良いんだけど、少しフォーマルでお願い出来るかな?」
って、言われて、その通りに少しフォーマルな服装に、少々アクセサリーに凝ったファッションにして、髪の毛も盛り髪系に纏めて、メイクもいつもは出来ないキラキラメイクにしました。
「 結構、歩いたりするの?」
「 いや、仕事に行くよりも歩かないと思うよ」
と言われて、7センチヒールの靴を選んびました。
そして、彼の部屋に立ち寄って、彼の身支度を整えました。
彼も私の服装に合わせて、ベージュのスーツにカジュアル系の白いワイシャツにノーネクタイで、二人とも、何処かの高級レストランにでも行くような出で立ちでした。
で、私は
「 で、何処に行くの?」
と、幸志郎に聞きました。
「 部屋探し」
「 えっ?」
「 俺の友人に会う前に、他の物件も見ときたいから」
って、彼は答えると、駅から歩いて20分程の所にある、出来たばかりの分譲マンションのショールームへとやって来ました。
朝の10時頃なのに、結構な人が居ます。
年配の御夫婦や、子供連れの中年夫婦等々。
その中に、爆音を響かせて車で乗り入れると、少し驚いたような表情を見せて、40代ぐらいの男性担当者が近寄ってきて、私達を案内してくれました。
間取りは、3LDKがメインで最新のセキュリティを備えた新築マンションです。
お値段は・・・で、私は
(今の私達には異次元だよ)
って、思いました。
で、彼も
「 今日は、ちょっと見に来ただけだから」
って、担当者には言っていて、それなりに部屋を見て、資料を貰って出て来ました。
次に、駅前の不動産屋さんに入って、色々と物件を探してもらって、担当者に案内して貰って、二つの物件を見に行きました。
一つは、賃貸のマンションで、築10年ほどで、家賃もソコソコと言う感じで、物件もソコソコです。
二つ目は、売り物件で築5年で、綺麗ですが、10回建ての2階の部屋で、お値段は高めで、先程の賃貸物件よりも月の支払いが1・3倍になります。
その二つを見て、とりあえず不動産屋さんを後にして、近くのお蕎麦屋さんでお昼御飯を食べました。
そして、そこで二人で見てきた物件の感想などを話し合いました。
正直、私は賃貸の物件で良いと思っていました。
新築マンションは、それは凄い装備もあって、キッチンも広くて綺麗で収納も沢山あるけれど・・・お値段が・・・納得出来るレベルではありません。
それが、相場だと言われればそうなのでしょうが、どうしても、そこまでして住みたいとは思えないのです。
最後に見た中古マンションは、10階建ての2階で中は綺麗なのですが、北向きの角部屋で日当たりが悪くて、何となく部屋が暗く感じて・・・その割にお値段が高いと思ったので、私的には却下でした。
それ等の話をすると、幸志郎も同じような感想を持っていて、ほとんどの点で意見が一致して、それに二人で笑ってしまって、同じような価値観を持ってる事にお互いに安心していました。
で、彼が
「 で、実は、この後が本題なんだ。
昨日に話してた物件を、今から見に行きます。
向こうで、友人が待ってくれてるから」
「 やっぱり、そうなんだ」
「 え~?気付いてた???」
「 だって、普通に不動産屋さんを回るのに、こんな服を指定するんだもん、コレは何か有るなって、バレバレですよ」
「 マジか?ミユは、ホントよく見てるよな」
「 何時に約束してるの?」
「 15時」
時計を見ると14時を少し過ぎてて
私は、店のトイレでメイク治しをして、鏡でチェックして、彼に恥をかかせないようにと気を使いました。
車に乗る迄に、彼の姿もチェックして、服に付いている目立つホコリ等を取りました。
そこから10分程で、物件のマンションに到着しました。
そのマンションは、いつも乗る電車から見えていた建物で、高台に建てられてて、それほど大きく無く高さも高層とは言えない建物が三棟、肩を寄せ合うように建てられています。
住宅地の真ん中に、なぜかポツンとマンション群が建っている感じで、電車からは遠くに見えますが、コンパクトなのに目立つ建物で、私の記憶に残っていました。
間近で見ると、築三年なので、とても新しい建物でした。
車から降りると、幸志郎よりも歳上だと分かる男性が手を上げて近付いて来ました。
その男性は、幸志郎の大学時代の先輩で、河村さんと言う方です。
ある大手ゼネコン関係の会社に務めておられて、このマンションの管理もその会社で請け負っている為に、他よりも早く今回の物件の情報が入ったのだそうです。
ただ、この時はまだ正式には売り出されておらず、売り物として売主との契約がまだ完了して無い物だと説明されました。
そして、部屋に通されました。
7階建ての最上階、東南の角部屋で、日当たりが良くて、大きなバルコニーからの眺めも良くて、4LDKで間取りにも余裕があって・・・広くて
(これは・・・凄く素敵な部屋だわ)
って、絶句する程でした。
多分、総ての人がそう思うはずです。
数点の高級そうな家具やカーテン等も残されていて、数日前まで実際に生活されていたような感じを受けました。
所々の壁に絵画等も飾られています。
でも、凄く綺麗に使われていて、何処も手直しする必要が無い感じでした。
私は、今まで、自分で部屋探しをして来ていたので、色々な物件を見て来ていて、普通ならば先住者が出た後は、何かとリフォームが必要な事は知っていました。
けれど、この部屋は、その必要を全く感じませんでした。
(丁寧に使って来られてたんだ)
って、私は直感しました。
ただ、リビングダイニング以外の部屋の中で、一番大きな部屋には、セミダブルベッドが一つ残されていて、その隣にシングルベッドと思しき物が置かれていた痕跡がカーベットには有りました。
そして、その部屋の壁に、たぶんルージュだと思われる物で、『 馬鹿野郎 』と大きく殴り書きされていて、そこだけはクリーニングか壁紙を貼り直す必要がありました。
でも、問題はそれだけ。
食器棚や他の収納の中にも、ホコリ一つ有りません。
「 このお部屋は、私達に見せる前に、入念にお掃除されたんですか?」
って、私が河村さんに聞くと
「 いいえ、まったく触ってません。
出て行かれたのも五日前でして、三日前に私達、担当者が数人で連れ立って物件確認をしに来ただけです」
と、答えられたのを聞いて
(やっぱり、相当、大切にして来られてたのね)
と、思いました。
それと同時に
(あなた達も悲しかったよね・・・残念だったよね。
大切に使ってもらってたのに・・・)
って、部屋に向かって、部屋の中に有る残された物達に向かって、問いかけてしまいました。
後で幸志郎から聞いたのですが、この時の私が、部屋に入って直ぐに驚いた表情をして、時間を掛けて隅々まで丁寧に見て廻って、色々と思いを巡らせてる姿を見て、私がこの物件を相当に気に入った事が分かったそうで、この段階で彼はコレを買うと決めたのだそうです。
私に「 僕を、よく見てる」なんて言うけれど、幸志郎だって私をよく見てますよねぇ?
でも、そう言われても仕方ない程、この時の私は、この部屋を気に入ってしまったのです。
でも・・・金額の事が気になっていました。
そんな私達に河村さんが、この部屋の説明をされて、なぜ売りに出るのか?と言う売主の事情も話してくれました。
この部屋を売らなければならない理由は、売主は大企業の元重役の奥様で、この部屋はその元重役の持ち物だったのです。
そして、愛人を囲う為の部屋として購入されて、愛人の方が住んで居られたのです。
その元重役の方は、半年ほど前に急死されて、で、この部屋は会社のお金を不正に流用して購入していた事が判明して、その企業は、そのお金を返済してくれれば事を大きくしないと元重役の奥様に条件を出した事で、この部屋から愛人の方には退去してもらって、売却したお金で返済する事になったのだそうです。
ただ、この愛人の方が、ここを出て行く事になかなか応じずに、売却が遅れてしまい、企業から提示されていた返済期限が過ぎてしまって、売り急いで居られるとの事でした。
なので、金額はかなりの割安で、ただ、現状渡しと言う条件でした。
そんな説明をされる河村さんは最後に
「 正直、現状渡しでも、この立地条件で、この間取りで築浅でこの金額だったら、売りに出したら翌日には売れちゃうかもってシロモノですね。
一つ問題が有るとすれば、少し、ここへのアクセス道路の道幅が狭くて・・・あ、普通車は普通に通れますが、それが消防の規制に引っかかるのと、地域住民の反対運動等もあって、7階建てになったんですね。
問題と言ったら、それだけです。
後は、まぁ、残っている物をどうされるか?と、あの・・・落書き・・・は、買主様で何とかして貰って・・・」
と、苦笑いをされました。
私は、それを聞いて、あの落書きをしたと思われる主の気持ちに思いを巡らせていました。
(愛人って言うけれど、本気で御相手を愛して居られたはず・・・こんなに綺麗に部屋を使って来られた事がその証よね。
裏切られたって最後には思ったのかな?
いい思いをして来た罰だって言う人も居るかもだけど、悲しすぎる結末よね)
って、思わず涙ぐんでしまいました。
幸志郎の先輩なのに、主に私に説明されているような河村さんに
「 先輩、返事はいつまでに?」
と、幸志郎が聞きました。
「 まだ、専売契約が整って無くてな・・・でも、来週の半ばにはイケると思う。
けど、それからウチの会社の事務処理を経て・・・だから、再来週の月曜日には売り出すと思うから、それまでに返事をくれたら、表には出さないよ」
「 諸経費とか、総額で幾らになります???」
「 あぁ、それはココに総て記載してる」
って、言いながら河村さんは幸志郎に封筒を渡しました。
それの中を開いて確認した幸志郎は
「 ふ~ん・・・即断は出来ないけど、ちょっと持ち帰って考えさせて下さい」
「 ああ、当然、そうだよな。
俺も、即答して貰えるなんて思ってないから、ゼンゼン大丈夫だよ」
って、二人とも笑顔になって、そこから二人で談笑し始めました。
私は、その間も部屋の中を歩き回って、隅々まで見て回りました。
何か、男二人で小声でコソコソと喋ったりして、ちょっと男の嫌な所を見た気分になりました。
そして、部屋を後にして、河村さんとも別れて・・・その足で『 槌の子』へ行って、早めの夕御飯にしながら、今日に見た物件の話をしました。
当然、その殆どが最後に見た部屋の話に終始しました。
「 コウは、あの物件を欲しいと思ってるのよね???」
「 ・・・どう見える?」
「 欲しいと思ってるように見える」
「 それは・・・君が気に入ってるからだけどね」
「 私、いい部屋だとは思うけど・・・でも、気に入ったなんて言ってないでしょ?」
「 態度で分かるよ。それに、顔にも書いてある」
「 いい部屋だとは思ったよ・・・でも、お値段、高いんでしょう?
私に見せないのは、見せられない金額なんでしょ?」
そう言うと、幸志郎は胸ポケットから、河村さんから受け取った封筒をテーブルに出して、私の前に起きました。
「 ・・・見ても良いの?」
って、私が聞くと
「 ああ・・・君が知らないのも変だろ?」
その答えを聞いて、恐る恐る、中の見積りが記載された紙を見ました。
(・・・!!!)
「 ダメじゃん!最初の新築と、殆ど同じじゃん・・・無理よ!!!」
「 でも、最初の新築より、間取りも環境も、ゼンゼンこっちの方が良いのに、築三年ってだけで、あんなに綺麗に使って来てる部屋だしね。
アレの新築分譲時の値段を聞いたら、ぶっ飛ぶぜ。
だから、アレはこれだけの金額を出しても、凄くお買い得な物件なんだ。
管理会社も先輩の所がしてるから、しっかりしてるし、販売時に入居者の身元等もキッチリ調査されてて、ややこしいのは入れないって言ってたから、そう言う点も大丈夫だし、掘り出し物なんだよ」
「 で、でも・・・異次元よ」
「 まぁ、それは俺と親父で話してみて・・・そこで決まる事だから、それよりミユは、あの部屋、凄く気に入ったんだよね???」
「 そ、そりゃあ・・・あの部屋は言う事ない部屋だけど・・・お値段が・・・」
「 気に入ったんだな?」
「 う・・・うん」
「 じゃ、明日、親父に話してみるわ」
「 え~・・・でも・・・私達が住むのに・・・コウのお父さんに助けて貰うのは気が引けるよ・・・金額も半端無く高額過ぎるもん」
「 それも、俺と親父の中の話だから、ミユは気にするな」
「 そ、そんな事を言われても、そう簡単には割り切れません!」
って、言いながら私は、細かく身体全体が震えていました。
カチャカチャと、ナイフやフォークを持つ手も震えて音を立てます。
「 ・・・どうしたの?」
って、彼に聞かれた時には、瞳にいっぱいの泪が零れそうになっていました。
「 食事中に、ご、ごめんなさい・・・なんか・・・こんな私の為に・・・こんなにも前を向いてくれて・・・嬉しくて、感動してて・・・その責任も感じて・・・気持ちが昂ってしまって・・・震えが止まらない」
って、最後は、ナイフとフォークを置いて、自分で自分の両腕に手を置いて、抱きしめるようにして、震えが治まるのを待つしかありませんでした。
その間も、俯いた私の瞳からは、ポタポタと泪が零れ落ちて、膝に置いたナプキンを濡らしていました。
この時の『槌の子』は、時間が早かった事もあってか、最近にしては空いていて、窓際の二人席に私達は座っていて、厨房からは一番遠い席の一つです。
でも、私達二人の雰囲気がオカシイ事に、女将さんの花さんは直ぐに気が付いて、席へとやって来ました。
私は、この時の花さんの表情を見てはいませんでしたが、かなり怒ている顔をしていたそうです。
「 余計なお世話かもしれないけど、瀬田くんが泣かせたの???」
って、花さんの声色がいつもよりも1オクターブ低く聞こえました。
それに幸志郎が
「 えー!いや・・・え~あの、その、そうなんの?
僕が泣かせたのかな?そうなのかも・・・」
って、答えました。
「 何をしたの!?」
「 いえ・・・実は、もう二人で一緒に住もうと思ってて、今日、その為の部屋探しをしてたんです。
で、すごく良い部屋に出会えて、彼女も凄く気に入ったと思うので・・・ちょっと高級で御値段が・・・なんですが、僕はそれを買う方向で考えてて、その話をしてたら・・・泣いちゃって」
「 あら・・・前向きな良いお話なのに?」
って、花さんの声がいつものトーンに戻りました。
「 いきなりで、彼女をちょっと驚かせ過ぎたのかも知れませんね」
何も返せないで居る私を労わるように会話する二人。
「 ・・・そっか、嬉しすぎたのかな?」
「 悪い事してないのに泣かれちゃって・・・どうしたら泣き止んでくれるのか分からなくて」
って、戸惑っている彼。
やっと、喋るぐらいに落ち着けた私は
「 両親を失ってから今日まで、こんなにも優しさと愛情を明確な形で見せられた事が無くて・・・それと私が思ってたよりもゼンゼン重大な事になって、その責任を痛感してしまって・・・私なんかがこんなにして貰って良いのかな?って気持ちと、もう逃げられないぞってプレッシャーの両方がグルグルと頭の中を回ってて、気持ちが昂ってしまったんです。
花さん、心配させて、ごめんなさい。
でも、彼が悪いわけじゃ無いから、私が戸惑ってるだけなんです」
「 そうだったのね・・・美幸ちゃん、彼はもう本気なんだよ。
美幸ちゃんも、彼を本気で愛してるなら、怖がらずにピタッと寄り添ってあげないとね。
それが出来るのは、女だけなのよ。
男を生かすも殺すも、女次第なの。
だから、彼を愛してるなら、信じて着いて行かなくちゃ。
そして、しっかりと支えてあげなくちゃね。
それが出来ないと、二人の本当の幸せは無いのよ。
分かるわよね?」
私、花さんのその言葉に、無言だったけど何度も頷いて返しました。
私の中でも、それは分かっていたのです。
けど、いきなりだったのと、甘え過ぎって気持ちが、彼に寄り添う事に二の足を踏ませていたのです。
「 瀬田くんも、彼女の気持ちは分かってあげてね。
いきなりで・・・気持ちの整理がつかないのよ」
「 ええ、分かってるつもりです。
ちょっと、刺激が強過ぎたと思います。
僕だって、今日の最後に見た部屋には興奮しましたからね。
まだ買うって決めた訳じゃ無いし、そもそも買えるのか?が、まだ不透明なので、これからですから」
「 でも、寂しくなるわね」
「 何がですか?」
「 だって、引越しちゃうんでしょう?」
「 引越しはしますけど・・・その部屋って、そこのマンションですよ」
「 えっ?」
「 だから、そこの丘の上のマンションです」
「 え~!あのマンションなの?
今より近いじゃないの?凄い~」
「 あはは・・・まだ、決まった訳じゃ無いんで、また、正式に決まったら言いますから、喜ぶのはまだ早いですよ」
「 この辺で探したの?」
「 ええ、この駅の周辺で探したんです。
僕は、海外から帰ったばかりで、まだこっちに生活基盤が出来て無いので、何処ででも暮らせますけど、彼女は、この駅周辺に生活環境が整ってて、拘りのお店とかも有るし、通勤も今と同じですし・・・で、ここで探しました。
で、たまたま、あのマンションの管理会社に友人が居て、物件を紹介して貰えたんです」
「 そうなのね。
でも、話が進む時って、こういうものよね。
神様が後押ししてくれてるって思える程、トントン拍子に事が運ぶのよ。
ぜひ、その話、実現させてね。
そうしたら、毎週末、待ってるからね」
「 はい、頑張ります。
そうなったら、今以上にお世話になると思うので、宜しくです」
って、私の前で二人で話に華が咲いていました。
お店が混みだした事もあって、花さんが厨房へと戻って行って、また二人になりました。
「 一つ、気掛かりな事が有るんだけど」
「 うん?何?」
「 コウは、この先、転勤とか無いの?」
「 あ~それね、もう海外赴任したからね。
これからは日本で、海外相手の窓口的な仕事がメインなんだよ、出張はあっても向こうに転勤とかは無いと思うよ。
それに、もしそうなっても、本当に気に入ってる物件なら、そのまま売らずに帰って来た時の為に残して行く人も居るみたい。
当然、売る人も居るけどね。
その時は、その時に考えたら良い事だと思ってる」
「 そう・・・コウはもう、あの部屋で私と住むって決めてるのね?」
「 ああ、そう思ってる。
将来は、あの部屋で君と暮らしたいって思ってるよ。
そして、俺達の子供を育てて行きたいって思ってる」
「 そう・・・うん・・・分かった」
私は、それだけ答えて、残りの御飯を食べ始めました。(つづく)
朝、起きてすぐに彼は
「 ミユ、今日はお出掛けするから、カジュアルで良いんだけど、少しフォーマルでお願い出来るかな?」
って、言われて、その通りに少しフォーマルな服装に、少々アクセサリーに凝ったファッションにして、髪の毛も盛り髪系に纏めて、メイクもいつもは出来ないキラキラメイクにしました。
「 結構、歩いたりするの?」
「 いや、仕事に行くよりも歩かないと思うよ」
と言われて、7センチヒールの靴を選んびました。
そして、彼の部屋に立ち寄って、彼の身支度を整えました。
彼も私の服装に合わせて、ベージュのスーツにカジュアル系の白いワイシャツにノーネクタイで、二人とも、何処かの高級レストランにでも行くような出で立ちでした。
で、私は
「 で、何処に行くの?」
と、幸志郎に聞きました。
「 部屋探し」
「 えっ?」
「 俺の友人に会う前に、他の物件も見ときたいから」
って、彼は答えると、駅から歩いて20分程の所にある、出来たばかりの分譲マンションのショールームへとやって来ました。
朝の10時頃なのに、結構な人が居ます。
年配の御夫婦や、子供連れの中年夫婦等々。
その中に、爆音を響かせて車で乗り入れると、少し驚いたような表情を見せて、40代ぐらいの男性担当者が近寄ってきて、私達を案内してくれました。
間取りは、3LDKがメインで最新のセキュリティを備えた新築マンションです。
お値段は・・・で、私は
(今の私達には異次元だよ)
って、思いました。
で、彼も
「 今日は、ちょっと見に来ただけだから」
って、担当者には言っていて、それなりに部屋を見て、資料を貰って出て来ました。
次に、駅前の不動産屋さんに入って、色々と物件を探してもらって、担当者に案内して貰って、二つの物件を見に行きました。
一つは、賃貸のマンションで、築10年ほどで、家賃もソコソコと言う感じで、物件もソコソコです。
二つ目は、売り物件で築5年で、綺麗ですが、10回建ての2階の部屋で、お値段は高めで、先程の賃貸物件よりも月の支払いが1・3倍になります。
その二つを見て、とりあえず不動産屋さんを後にして、近くのお蕎麦屋さんでお昼御飯を食べました。
そして、そこで二人で見てきた物件の感想などを話し合いました。
正直、私は賃貸の物件で良いと思っていました。
新築マンションは、それは凄い装備もあって、キッチンも広くて綺麗で収納も沢山あるけれど・・・お値段が・・・納得出来るレベルではありません。
それが、相場だと言われればそうなのでしょうが、どうしても、そこまでして住みたいとは思えないのです。
最後に見た中古マンションは、10階建ての2階で中は綺麗なのですが、北向きの角部屋で日当たりが悪くて、何となく部屋が暗く感じて・・・その割にお値段が高いと思ったので、私的には却下でした。
それ等の話をすると、幸志郎も同じような感想を持っていて、ほとんどの点で意見が一致して、それに二人で笑ってしまって、同じような価値観を持ってる事にお互いに安心していました。
で、彼が
「 で、実は、この後が本題なんだ。
昨日に話してた物件を、今から見に行きます。
向こうで、友人が待ってくれてるから」
「 やっぱり、そうなんだ」
「 え~?気付いてた???」
「 だって、普通に不動産屋さんを回るのに、こんな服を指定するんだもん、コレは何か有るなって、バレバレですよ」
「 マジか?ミユは、ホントよく見てるよな」
「 何時に約束してるの?」
「 15時」
時計を見ると14時を少し過ぎてて
私は、店のトイレでメイク治しをして、鏡でチェックして、彼に恥をかかせないようにと気を使いました。
車に乗る迄に、彼の姿もチェックして、服に付いている目立つホコリ等を取りました。
そこから10分程で、物件のマンションに到着しました。
そのマンションは、いつも乗る電車から見えていた建物で、高台に建てられてて、それほど大きく無く高さも高層とは言えない建物が三棟、肩を寄せ合うように建てられています。
住宅地の真ん中に、なぜかポツンとマンション群が建っている感じで、電車からは遠くに見えますが、コンパクトなのに目立つ建物で、私の記憶に残っていました。
間近で見ると、築三年なので、とても新しい建物でした。
車から降りると、幸志郎よりも歳上だと分かる男性が手を上げて近付いて来ました。
その男性は、幸志郎の大学時代の先輩で、河村さんと言う方です。
ある大手ゼネコン関係の会社に務めておられて、このマンションの管理もその会社で請け負っている為に、他よりも早く今回の物件の情報が入ったのだそうです。
ただ、この時はまだ正式には売り出されておらず、売り物として売主との契約がまだ完了して無い物だと説明されました。
そして、部屋に通されました。
7階建ての最上階、東南の角部屋で、日当たりが良くて、大きなバルコニーからの眺めも良くて、4LDKで間取りにも余裕があって・・・広くて
(これは・・・凄く素敵な部屋だわ)
って、絶句する程でした。
多分、総ての人がそう思うはずです。
数点の高級そうな家具やカーテン等も残されていて、数日前まで実際に生活されていたような感じを受けました。
所々の壁に絵画等も飾られています。
でも、凄く綺麗に使われていて、何処も手直しする必要が無い感じでした。
私は、今まで、自分で部屋探しをして来ていたので、色々な物件を見て来ていて、普通ならば先住者が出た後は、何かとリフォームが必要な事は知っていました。
けれど、この部屋は、その必要を全く感じませんでした。
(丁寧に使って来られてたんだ)
って、私は直感しました。
ただ、リビングダイニング以外の部屋の中で、一番大きな部屋には、セミダブルベッドが一つ残されていて、その隣にシングルベッドと思しき物が置かれていた痕跡がカーベットには有りました。
そして、その部屋の壁に、たぶんルージュだと思われる物で、『 馬鹿野郎 』と大きく殴り書きされていて、そこだけはクリーニングか壁紙を貼り直す必要がありました。
でも、問題はそれだけ。
食器棚や他の収納の中にも、ホコリ一つ有りません。
「 このお部屋は、私達に見せる前に、入念にお掃除されたんですか?」
って、私が河村さんに聞くと
「 いいえ、まったく触ってません。
出て行かれたのも五日前でして、三日前に私達、担当者が数人で連れ立って物件確認をしに来ただけです」
と、答えられたのを聞いて
(やっぱり、相当、大切にして来られてたのね)
と、思いました。
それと同時に
(あなた達も悲しかったよね・・・残念だったよね。
大切に使ってもらってたのに・・・)
って、部屋に向かって、部屋の中に有る残された物達に向かって、問いかけてしまいました。
後で幸志郎から聞いたのですが、この時の私が、部屋に入って直ぐに驚いた表情をして、時間を掛けて隅々まで丁寧に見て廻って、色々と思いを巡らせてる姿を見て、私がこの物件を相当に気に入った事が分かったそうで、この段階で彼はコレを買うと決めたのだそうです。
私に「 僕を、よく見てる」なんて言うけれど、幸志郎だって私をよく見てますよねぇ?
でも、そう言われても仕方ない程、この時の私は、この部屋を気に入ってしまったのです。
でも・・・金額の事が気になっていました。
そんな私達に河村さんが、この部屋の説明をされて、なぜ売りに出るのか?と言う売主の事情も話してくれました。
この部屋を売らなければならない理由は、売主は大企業の元重役の奥様で、この部屋はその元重役の持ち物だったのです。
そして、愛人を囲う為の部屋として購入されて、愛人の方が住んで居られたのです。
その元重役の方は、半年ほど前に急死されて、で、この部屋は会社のお金を不正に流用して購入していた事が判明して、その企業は、そのお金を返済してくれれば事を大きくしないと元重役の奥様に条件を出した事で、この部屋から愛人の方には退去してもらって、売却したお金で返済する事になったのだそうです。
ただ、この愛人の方が、ここを出て行く事になかなか応じずに、売却が遅れてしまい、企業から提示されていた返済期限が過ぎてしまって、売り急いで居られるとの事でした。
なので、金額はかなりの割安で、ただ、現状渡しと言う条件でした。
そんな説明をされる河村さんは最後に
「 正直、現状渡しでも、この立地条件で、この間取りで築浅でこの金額だったら、売りに出したら翌日には売れちゃうかもってシロモノですね。
一つ問題が有るとすれば、少し、ここへのアクセス道路の道幅が狭くて・・・あ、普通車は普通に通れますが、それが消防の規制に引っかかるのと、地域住民の反対運動等もあって、7階建てになったんですね。
問題と言ったら、それだけです。
後は、まぁ、残っている物をどうされるか?と、あの・・・落書き・・・は、買主様で何とかして貰って・・・」
と、苦笑いをされました。
私は、それを聞いて、あの落書きをしたと思われる主の気持ちに思いを巡らせていました。
(愛人って言うけれど、本気で御相手を愛して居られたはず・・・こんなに綺麗に部屋を使って来られた事がその証よね。
裏切られたって最後には思ったのかな?
いい思いをして来た罰だって言う人も居るかもだけど、悲しすぎる結末よね)
って、思わず涙ぐんでしまいました。
幸志郎の先輩なのに、主に私に説明されているような河村さんに
「 先輩、返事はいつまでに?」
と、幸志郎が聞きました。
「 まだ、専売契約が整って無くてな・・・でも、来週の半ばにはイケると思う。
けど、それからウチの会社の事務処理を経て・・・だから、再来週の月曜日には売り出すと思うから、それまでに返事をくれたら、表には出さないよ」
「 諸経費とか、総額で幾らになります???」
「 あぁ、それはココに総て記載してる」
って、言いながら河村さんは幸志郎に封筒を渡しました。
それの中を開いて確認した幸志郎は
「 ふ~ん・・・即断は出来ないけど、ちょっと持ち帰って考えさせて下さい」
「 ああ、当然、そうだよな。
俺も、即答して貰えるなんて思ってないから、ゼンゼン大丈夫だよ」
って、二人とも笑顔になって、そこから二人で談笑し始めました。
私は、その間も部屋の中を歩き回って、隅々まで見て回りました。
何か、男二人で小声でコソコソと喋ったりして、ちょっと男の嫌な所を見た気分になりました。
そして、部屋を後にして、河村さんとも別れて・・・その足で『 槌の子』へ行って、早めの夕御飯にしながら、今日に見た物件の話をしました。
当然、その殆どが最後に見た部屋の話に終始しました。
「 コウは、あの物件を欲しいと思ってるのよね???」
「 ・・・どう見える?」
「 欲しいと思ってるように見える」
「 それは・・・君が気に入ってるからだけどね」
「 私、いい部屋だとは思うけど・・・でも、気に入ったなんて言ってないでしょ?」
「 態度で分かるよ。それに、顔にも書いてある」
「 いい部屋だとは思ったよ・・・でも、お値段、高いんでしょう?
私に見せないのは、見せられない金額なんでしょ?」
そう言うと、幸志郎は胸ポケットから、河村さんから受け取った封筒をテーブルに出して、私の前に起きました。
「 ・・・見ても良いの?」
って、私が聞くと
「 ああ・・・君が知らないのも変だろ?」
その答えを聞いて、恐る恐る、中の見積りが記載された紙を見ました。
(・・・!!!)
「 ダメじゃん!最初の新築と、殆ど同じじゃん・・・無理よ!!!」
「 でも、最初の新築より、間取りも環境も、ゼンゼンこっちの方が良いのに、築三年ってだけで、あんなに綺麗に使って来てる部屋だしね。
アレの新築分譲時の値段を聞いたら、ぶっ飛ぶぜ。
だから、アレはこれだけの金額を出しても、凄くお買い得な物件なんだ。
管理会社も先輩の所がしてるから、しっかりしてるし、販売時に入居者の身元等もキッチリ調査されてて、ややこしいのは入れないって言ってたから、そう言う点も大丈夫だし、掘り出し物なんだよ」
「 で、でも・・・異次元よ」
「 まぁ、それは俺と親父で話してみて・・・そこで決まる事だから、それよりミユは、あの部屋、凄く気に入ったんだよね???」
「 そ、そりゃあ・・・あの部屋は言う事ない部屋だけど・・・お値段が・・・」
「 気に入ったんだな?」
「 う・・・うん」
「 じゃ、明日、親父に話してみるわ」
「 え~・・・でも・・・私達が住むのに・・・コウのお父さんに助けて貰うのは気が引けるよ・・・金額も半端無く高額過ぎるもん」
「 それも、俺と親父の中の話だから、ミユは気にするな」
「 そ、そんな事を言われても、そう簡単には割り切れません!」
って、言いながら私は、細かく身体全体が震えていました。
カチャカチャと、ナイフやフォークを持つ手も震えて音を立てます。
「 ・・・どうしたの?」
って、彼に聞かれた時には、瞳にいっぱいの泪が零れそうになっていました。
「 食事中に、ご、ごめんなさい・・・なんか・・・こんな私の為に・・・こんなにも前を向いてくれて・・・嬉しくて、感動してて・・・その責任も感じて・・・気持ちが昂ってしまって・・・震えが止まらない」
って、最後は、ナイフとフォークを置いて、自分で自分の両腕に手を置いて、抱きしめるようにして、震えが治まるのを待つしかありませんでした。
その間も、俯いた私の瞳からは、ポタポタと泪が零れ落ちて、膝に置いたナプキンを濡らしていました。
この時の『槌の子』は、時間が早かった事もあってか、最近にしては空いていて、窓際の二人席に私達は座っていて、厨房からは一番遠い席の一つです。
でも、私達二人の雰囲気がオカシイ事に、女将さんの花さんは直ぐに気が付いて、席へとやって来ました。
私は、この時の花さんの表情を見てはいませんでしたが、かなり怒ている顔をしていたそうです。
「 余計なお世話かもしれないけど、瀬田くんが泣かせたの???」
って、花さんの声色がいつもよりも1オクターブ低く聞こえました。
それに幸志郎が
「 えー!いや・・・え~あの、その、そうなんの?
僕が泣かせたのかな?そうなのかも・・・」
って、答えました。
「 何をしたの!?」
「 いえ・・・実は、もう二人で一緒に住もうと思ってて、今日、その為の部屋探しをしてたんです。
で、すごく良い部屋に出会えて、彼女も凄く気に入ったと思うので・・・ちょっと高級で御値段が・・・なんですが、僕はそれを買う方向で考えてて、その話をしてたら・・・泣いちゃって」
「 あら・・・前向きな良いお話なのに?」
って、花さんの声がいつものトーンに戻りました。
「 いきなりで、彼女をちょっと驚かせ過ぎたのかも知れませんね」
何も返せないで居る私を労わるように会話する二人。
「 ・・・そっか、嬉しすぎたのかな?」
「 悪い事してないのに泣かれちゃって・・・どうしたら泣き止んでくれるのか分からなくて」
って、戸惑っている彼。
やっと、喋るぐらいに落ち着けた私は
「 両親を失ってから今日まで、こんなにも優しさと愛情を明確な形で見せられた事が無くて・・・それと私が思ってたよりもゼンゼン重大な事になって、その責任を痛感してしまって・・・私なんかがこんなにして貰って良いのかな?って気持ちと、もう逃げられないぞってプレッシャーの両方がグルグルと頭の中を回ってて、気持ちが昂ってしまったんです。
花さん、心配させて、ごめんなさい。
でも、彼が悪いわけじゃ無いから、私が戸惑ってるだけなんです」
「 そうだったのね・・・美幸ちゃん、彼はもう本気なんだよ。
美幸ちゃんも、彼を本気で愛してるなら、怖がらずにピタッと寄り添ってあげないとね。
それが出来るのは、女だけなのよ。
男を生かすも殺すも、女次第なの。
だから、彼を愛してるなら、信じて着いて行かなくちゃ。
そして、しっかりと支えてあげなくちゃね。
それが出来ないと、二人の本当の幸せは無いのよ。
分かるわよね?」
私、花さんのその言葉に、無言だったけど何度も頷いて返しました。
私の中でも、それは分かっていたのです。
けど、いきなりだったのと、甘え過ぎって気持ちが、彼に寄り添う事に二の足を踏ませていたのです。
「 瀬田くんも、彼女の気持ちは分かってあげてね。
いきなりで・・・気持ちの整理がつかないのよ」
「 ええ、分かってるつもりです。
ちょっと、刺激が強過ぎたと思います。
僕だって、今日の最後に見た部屋には興奮しましたからね。
まだ買うって決めた訳じゃ無いし、そもそも買えるのか?が、まだ不透明なので、これからですから」
「 でも、寂しくなるわね」
「 何がですか?」
「 だって、引越しちゃうんでしょう?」
「 引越しはしますけど・・・その部屋って、そこのマンションですよ」
「 えっ?」
「 だから、そこの丘の上のマンションです」
「 え~!あのマンションなの?
今より近いじゃないの?凄い~」
「 あはは・・・まだ、決まった訳じゃ無いんで、また、正式に決まったら言いますから、喜ぶのはまだ早いですよ」
「 この辺で探したの?」
「 ええ、この駅の周辺で探したんです。
僕は、海外から帰ったばかりで、まだこっちに生活基盤が出来て無いので、何処ででも暮らせますけど、彼女は、この駅周辺に生活環境が整ってて、拘りのお店とかも有るし、通勤も今と同じですし・・・で、ここで探しました。
で、たまたま、あのマンションの管理会社に友人が居て、物件を紹介して貰えたんです」
「 そうなのね。
でも、話が進む時って、こういうものよね。
神様が後押ししてくれてるって思える程、トントン拍子に事が運ぶのよ。
ぜひ、その話、実現させてね。
そうしたら、毎週末、待ってるからね」
「 はい、頑張ります。
そうなったら、今以上にお世話になると思うので、宜しくです」
って、私の前で二人で話に華が咲いていました。
お店が混みだした事もあって、花さんが厨房へと戻って行って、また二人になりました。
「 一つ、気掛かりな事が有るんだけど」
「 うん?何?」
「 コウは、この先、転勤とか無いの?」
「 あ~それね、もう海外赴任したからね。
これからは日本で、海外相手の窓口的な仕事がメインなんだよ、出張はあっても向こうに転勤とかは無いと思うよ。
それに、もしそうなっても、本当に気に入ってる物件なら、そのまま売らずに帰って来た時の為に残して行く人も居るみたい。
当然、売る人も居るけどね。
その時は、その時に考えたら良い事だと思ってる」
「 そう・・・コウはもう、あの部屋で私と住むって決めてるのね?」
「 ああ、そう思ってる。
将来は、あの部屋で君と暮らしたいって思ってるよ。
そして、俺達の子供を育てて行きたいって思ってる」
「 そう・・・うん・・・分かった」
私は、それだけ答えて、残りの御飯を食べ始めました。(つづく)
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