御主人様は痴漢で変態です!

TUCHINOKO

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一年目 春

③ 嫉妬

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目が覚めると、まだ外は暗いけど朝の5時、三分前です。

スマホのアラームが鳴る、ほんの少し前に勝手に目が覚めました。

人間って凄いと思うんです。
毎日の習慣で、その時間になると勝手に目が覚めるのに、休日には、遅くまで寝てたりしてて、不思議ですよね。

彼の様子を伺うと、昨夜よりも熱はマシになってるみたいですが、まだまだ熱い感じでした。

パジャマが汗でビッショリと濡れています。

(汗が出始めたのね・・・いい傾向だけど)

着替えさせようかと思ったのですが、この状態で起こして着替えさせると、物凄く寒がる気がして、そのままにして置く事にしました。

私は、色々と思いを巡らせて、彼の寝室に行って、彼の三日ほどの着替えを揃えて、中型の旅行カバンがあったので、それに入れて、小旅行のような用意を整えました。

そして、そのまま自分の身支度を整えて、近くのコンビニまで行ってパン等の朝御飯を買って来て、それを食しながら、彼のお粥を作りました。

そして、リビングの片付けをしていると、小さな手紙が添えられた花柄の包みと、可愛らしい小さな紙袋を見つけました。

どう見ても、最近の物で・・・誰かからのプレゼント?です。

(これは・・・中は見たら駄目だよね)

って、見たくなる衝動をグッと堪えたけど、少し紙袋の中が見えて、これにも手紙が入ってるみたいで・・・捨てるわけにも行かず・・・仕方ないので、二つ共テーブルの上に置きました。

時間は7時を過ぎて、彼を起こして、熱を測ると38.8°でした。

汗にまみれたパジャマを着替えさせて、お粥を食べさせました。

「 この後、病院に行くよね?」

「 うん・・・行った方が良いよね?」

「 昨夜、死にそうだったじゃない。私も心配で泣きそうだったんだから。
朝は、熱が下がる傾向だから、午後になると、また昨日ぐらいになるかも知れないし、咳き込むのを見てると、このままだと肺炎になるかもしれないから、嫌だと言われても連れて行きます!」

「 はい、素直に君に従いますよ」

「 車、運転出来るの?」

「 なんとかするよ、美幸、仕事は?」

って、時計を見ながら彼は言います。

「 今日は、休ませて貰って、貴方に付き添います」

「 えっ!それは、悪いよ。僕の事は良いから、行ってよ」

「 もう、今からじゃ、間に合わないわよ。
一日ぐらいなら大丈夫よ。今の貴方を一人にしておけないもん」

「 ゴメンな・・・本当にゴメン」

「 気にしないで・・・で、運転は出来るの?」

「 ・・・美幸、運転してくれる???」

「 えっ!アレを私が?」

「 教えるし・・・MT免許持ってるなら、運転出来るよ」

「 本当に~?でも・・・やるしか無いよね」

「 何から何まで、ゴメンね」

「幸志郎、 謝ってばかりね」

「 面倒ばかり掛けてるからね」

「 ねぇ・・・じゃぁ、今回のお詫びに、幸志郎の事、私の好きな呼び方で呼ばせてよ?」

「 えっ!・・・幸志郎じゃぁ、ダメなの」

「 他に幸志郎って呼ぶ人って居ないの?」

「 いや・・・両親と和樹はそう呼ぶかな」

「じゃ、 私だけの呼び方にしたいの」

「 そうなの?何か決めてるの有るの???」

「 『コウ』って呼んだらダメかな?他に『コウ』って呼ぶ人は居る???」

「 いや、それは居ないけど・・・『コウ』か、良い響だね。
うん、それで良いよ」

「 ありがとう、じゃぁ、これから『コウ』って呼ぶね」

「 あぁ・・・じゃあさ、美幸の事『ミユ』って呼んでも良い?」

「 『 ミユ』ね・・・うん、コウがそう呼びたいなら、それで良いよ」

「 じゃ、『コウ』と『ミユ』だね。よろしく」

って、彼は笑いました。

昨日に比べて、少しは元気なようです。

「 あのね、病院の後、貴方を連れて私の部屋に帰ろうと思ってて、その方が看病し易いの。
だから、実は、もう貴方の着替えとか用意してあるんだけど、それでも良い???」

「 えっ!・・・そこまで甘えていいの?」

「 私は、そうしてくれた方が安心なの」

「 そっか・・・じゃぁ、もう総てミユに任せるよ」

「 うん、ありがとう」

「 宜しく」

そして、8時を待って、私の会社に欠勤の連絡を入れました。

彼も、昨日に引き続き、欠勤の連絡をしました。

私は、用意した彼の荷物を、彼の車のトランクへと運びました。

トランクを開けると、洗車用具が入っている蓋付きのバケツと、またもや中ぐらいのダンボール箱がありました。

(まだ引越しの荷物、残ってるじゃない)

って思って、蓋を開けると、彼の仕事のファイル等が入っていました。

(なんだ、仕事の物なのね・・・あれ???)

その中に、白銀に光る、大きな二つ折りのアルバムのような物があります。

凄く目立っていて、嫌でも目に付きました。

(えっ!お見合い写真?・・・だよね)

私、それを手に取って、暫く見詰めていました。

それを開くと、綺麗な女性が振袖姿で、胸から上が写ってる物と、全身が写ってる物の二枚がありました。

それを見て、私、涙が出て、手が震えていました。

先程の二つのプレゼントだけなら

(そんな事もあるよね)

って、思えていたのに、コレは・・・正直、ショックが大きくて・・・冷静で居れるはずは無くて・・・頭の中を整理出来ずに、真っ白になっていました。

でも、今は、彼を病院へ連れて行かなければなりません。

グッと気持ちを抑え込んで、部屋に戻りました。

彼も、病院へ行く為の用意を終えていたので、そのまま部屋を出ました。

車へ乗って、彼に教えて貰って、車を走らせました。

最初は、発進が難しくてエンストを何回かしましたが、ちょっと慣れてくるとコツが掴めて普通に走れました。

この時も、ずっと心の奥底に、先程見つけたプレゼントや見合い写真の事があって、初めての車なのに、緊張する事無く運転する事が出来ました。

「 そうそう、そうやってアクセルを少しだけフォンフォンって煽るの繰り返しながらクラッチを合わせて、半クラは少なめにしてあげてね」

「 うん」

「 クラッチ、重いかな?」

「 うん」

「 上手い上手い、ミユ、上手いなぁ」

「 うん」

「 ハンドル、重くない?」

「 うん」

「 前、見難いんじゃない?」

「 うん」

「 バック、見えてる?」

「 うん」

私、ほとんど幸志郎の言う事を聞いて無くて・・・運転は、ちゃんとしてたけど、心はそこに無くて・・・彼の言う通りに車を走らせて、気が付くと病院に到着していました。

病院は、流行りも終わりかけてた事もあって、空いていて、すぐに診てもらう事が出来て、インフルの検査は陽性で、特効薬を処方してもらって、私の部屋に帰って来ました。

部屋に入って、彼を私のベッドに寝かせて・・・車に荷物を取りに戻りました。

そこには、彼の着替えの他に、二つのプレゼントも持って来てて、見合い写真もあって・・・暫く考えたんですけど、彼にそれを確かめられるか分からなかったけど、それ等を一つの紙袋に入れて部屋に持って上がりました。

お昼ご飯には、冷蔵庫に有った材料で鍋焼きうどんを作りました。

はっきり言って、味の保証は・・・出来ませんでした。

彼は、少し不思議そうな顔で食べていました。

「 ミユは、御飯、食べないの?」

「 食欲無いから」

「 あの・・・何か有った?」

「 ・・・べつに・・・」

そう言って、彼に薬を飲ませて、寝かして・・・食事の片付けをして、彼の今朝までの汚れ物を洗濯して、夜御飯の買い物に出掛けました。

歩いて10分程の所にある小さなスーパーで、食材を買って部屋に戻りました。

部屋に入って、彼の様子を見に行くと・・・隠すようにして置いてあった、二つのプレゼントとお見合い写真が入った紙袋が、ベットの横にありました。

(あ、あれ?なんで???)

すると、彼が目を覚まして

「 ミユ・・・様子がオカシイと思ったら、これを見つけたんだな」

「 べつに・・・それが原因って訳じゃない・・・ただ、疲れただけ・・・」

って、言いながら、私、涙が止まらなくなって、その場に座り込んで、項垂れてしまいました。

彼は、まだ熱があってシンドイはずなのに、私の背中を抱き締めて

「 そんなにショック受けてるのに、なんで平気を装うの?・・・一つ一つ、説明させてくれないかな?」

「 ・・・どうぞ」

そう答えたけど、私の涙は止まらなくて、すすり泣いていました。

「 まず、この見合い写真なんだけど・・・実は、今回、帰国して一旦、実家に戻ってたんだけど・・・帰国前から、その時に見合いをって親から言われてて、お見合いしたんだよ。

親の仕事関係のお嬢さんだったんだけど、僕は、親がどうしてもって言うから、仕方なくて・・・まぁ、親の事もあって無下に断り難かったんだけど・・・でも、あんまり好きになれなくて、悩んでた時に君と再会したんだ。

で、君への想いを貫くって決めて、断りの連絡を入れたら、僕以上に母親が気に入らなかったみたいで、勝手に破談にしてたんだよね。

最初、君と再会しても、すぐに声を掛けれなかったのは、振られたって思ってたのと、この見合い話にケリが着いてなかったからなんだよ」

「 じゃぁ・・・もう、この縁談は破談になったって言うの?」

「 そうだよ」

「 じゃぁ・・・この、二つのプレゼントは何?
つい最近にもらったんじゃ無いの?
彼女からじゃ無いの???」

「 えっ?・・・このプレゼントは、まったく別の相手からだけど」

「 別の相手???」

「 ああ・・・こっちの包みは、大学の後輩で、社交ダンスサークルで一緒だった子で、僕が海外赴任中に入社してて、今回、僕が帰国したのを知って、帰国祝いって事でくれたんだよ」

「 じゃぁ、こっちの小さな紙袋は?」

「 コレは、同期入社の子で、新入社員の研修の時に仲良くなって、今回、同じ部署に配属されて、自分で焼いたクッキーで、良かったら食べてってくれたんだ」

「 手紙が添えられてるのは知ってるの?」

「 えっ!?」

「 ・・・よく見た方がいいわよ」

彼、慌てて、それぞれのプレゼントを手に取って、手紙を見つけて、それを読んで、そして、それを私に渡しました。

「 私に読ませても良いの?」

「 ああ、相手がどう思ってても、僕には関係ないから。それに、ミユに隠し事はしないって決めたからね」

私、それを聞いて、その二枚の手紙を読みました。

『 瀬田先輩、お帰りなさい。

先輩が帰って来られると聞いて、嬉しくて、こんなプレゼントを用意してしまいました。

甘い物、嫌いじゃ無かったですよね?

良かったら、食べて下さい。

今度、お食事でも誘って頂けたら光栄です。

では、またです』

この手紙は、包みの方のです。

次が、紙袋の方。

『 海外赴任、お疲れ様でした。

趣味で焼いたクッキーです。

良かったら食べて下さい。

本社勤務は、久し振りでしょう?

分からない事とか、遠慮せずに聞いて下さい。

一度、食事にでも行きましょう。

では、今後も、宜しくです』

二つ共、それぞれに表現は違っていても、幸志郎への好意に満ち溢れていました。

私、まだ涙目でした。

「 モテモテね・・・コウが付き合いたいなら、私、邪魔しないから・・・でも、その時は、隠さずに話してね」

「 ミユ、それ本気で言ってんのか?」

「 貴方の邪魔をしたくないから・・・それで、嫌われたく無いの」

「 オマエなぁ・・・俺を馬鹿にしてんのか?
俺が、そんな人間だと思ってんの?」

「 男の人って、一人じゃ満足出来ないって・・・」

「 俺は、そんなんじゃ無い!
俺は・・・一人で良いから・・・一人、俺を愛してくれる、理想の人が居てくれたら、それで良いから。
やっと、出逢えたんだぜ。
・・・もっと俺の彼女だって自信持ってよ」

「 本当に・・・私で良いの?」

「 ミユが良いの!ミユが、俺の理想の人なの!最愛の人なの。
だから、肝心な所で俺を手放すなんてのは止めてくれよ」

「 ・・・うん・・・ごめんなさい」

「 まぁ、俺も見合いの事は話さなくて悪かったよ。
もう、終わった事だったし、知らなくても良いかなって思ってたし、それと、プレゼントは貰ったけど・・・実は忘れてた・・・だから手紙の事も知らなかっただろ。
さっきも言ったけど、俺は相手に仕事上の付き合いって言うだけで、特別な感情は一切ないからね」

「 じゃぁ・・・一緒に食べちゃって良い?」

「 あぁ・・・ミユがそうしたいなら、食べたら良いよ」

「 うん・・・その包み、有名なチョコレートの専門店ので、前から気になってたし、手作りクッキーの出来栄えも気になるから」

「 じゃぁ、全部、あげるよ」

「 それは、ダメよ。
貴方へのプレゼントなんだし、貴方も甘い物、嫌いじゃ無いでしょう?」

「 まぁ、メチャクチャ好きって程でも無いけど・・・じゃ、少し食べるかな」

って、彼はプレゼントを開封して、どちらも一つずつ食べました。

「 私、凄く不安になっちゃった・・・ゴメンね」

「 まぁ、もし反対の立場だったら、俺も普通じゃ居られなかったと思うから、当然だと思うし・・・君にちゃんと話さなかったのも悪かったと思ってるから、謝らないでよ。
でも、俺を嫌いにならない限りは、絶対に手放さないって強い想いを持ってて欲しい。
俺、もう全身全霊でミユを愛して、一緒に生きて行きたいって思ってるから、その俺を一人にしないで欲しい」

「 うん・・・うん、ありがとう」

「 ふぅ~・・・誤解が解けてホッとした・・・けど・・・今の体調でする話なのかぁ?
また、高熱出そうな気分やわ。

ちょっと寝るからね」

「 うん・・・ゴメンね、おやすみなさい」

「 おやすみ」

彼は、そう言うと、死んだように眠り始めました。

私は、物音を立てないように気を使いながら、部屋を片付けたりしてました。

そして・・・彼へのプレゼントは・・・やっぱり捨ててやろうかと思ったんですけど・・・やっぱり勿体ないので、時々、摘みながら彼の目覚めを待っていました。

彼の寝顔を見詰めながら

(貴方は、女に興味無いとか言ってても、目立つし女性を引き付けるのよね。
爽やかな顔立ちしてて、少年のような眼をしてて・・・それに不釣り合いな程、立派な体格してて、スーツなんか着たら、似合い過ぎて格好いいもの、女なら誰でも惹かれるわよ。
私だって、ほとんど一目惚れだったんだから・・・本当に一生、私一人で満足出来るの?
もし、他に好きな人が出来ても、その人と付き合うってなっても、私の事も忘れずに愛し続けてね)

なんて、考えていました。(つづく)
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