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一年目 春
⑧ 彼の荷物と遺伝子
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彼の部屋に上がって、まずは寝室のダンボール箱から片付ける事にしました。
主に彼の衣類で、備え付けの収納棚があったので、普段着と仕事着とに分けて、日常で使い易いように工夫して・・・寝室の片付けは簡単に終わりました。
次に、リビングのダンボール箱に取り掛かろうとしたら
「 ちょっと休憩しようか、お茶入れるから、休んどいて」
って、彼がキッチンへ
「 私がやるわよ」
って、言ってキッチンへ向かおうとすると
「 休んどきなって、さっきから動きっぱなしだろ、俺に任せといて」
って、言うので、任せる事にしました。
リビングのテレビ台は、本棚が一緒になっているデザインです。
が、その棚には、一冊の本も並んでいません。
そのすぐ横に『 本』って大きく書かれたダンボール箱が置いてあります。
私、彼がお茶を入れる間に、これぐらいなら整理出来ると思って、そのダンボール箱を開封しました。
車の本にバイクの本、魚釣りの本、パソコンの本、等々があって、期待した怪しい本は出て来ません。
(なんだ・・・普通の本ばかりじゃない)
と、少し期待外れだと思っていたら
『 ピアッシング』
と、題された本を見つけました。
中を開くと、全裸の女性の写真でした。
でも、それは、ポルノ写真では無く、女性の身体の色々な部位にピアスが着けられている写真でした。
(これは・・・ボディーピアスの専門誌)
鼻や唇はもちろん、身体の至る所に入れたピアスの写真、それも女性の秘部も普通に有るし、男性の物もあります。
私、少し戸惑ったけど・・・その本を見ているうちに、芸術的にも美しいと思える物もあって・・・アクセサリーの究極形かも・・・って思ったりして、その本を持って彼の所へ
「 幸志郎・・・こういうの好きなの???」
って、テーブルにその本を置くと
「 えっ!・・・いや、それは人から貰った物で、自分で買ったんじゃないんだよ」
「 でも、必要だから捨てずに持ってるのよね?」
「 いや、なんか貴重な本らしくて」
「 でも、なぜその人は、幸志郎にこの本をくれたの?」
「 さ、さぁ・・・」
「 興味、あるんでしょう???」
「 ・・・い、イギリスに居る時、向こうで友達になった同僚が、あるバーに連れて行ってくれたんだけど、そこは・・・そのSMバーでね、店員さんは皆、そういう格好をして給仕して歩いてて、その中に、ボディーピアスをしてる女性が何人かいて、それが
凄く似合ってて綺麗だなって思って、その話をその同僚にしたら、暫くして、その本をくれたんだ」
「 やっぱり、興味あるんだ・・・」
「 いや、興味って程じゃ無いよ、ただ、その時は綺麗だなと思っただけだから」
「 ふ~ん・・・」
私は、その本を手に本棚に戻ると、そこに並べました。
「 そこに並べんの???」
「 駄目なの?」
「 人に堂々と見せれる物じゃないよね?」
「 滅多に客は来ないって、言ってたじゃない」
「 そりゃ、そうだけど」
「 ここで良いの!」
「 マジか?」
「 マジよ」
って、私は彼に冷ややかな流し目を送りながら言って、本の整理を再開しました。
ほとんどの本の整理が終わって、ダンボール箱の一番下になっている本を取り出しました。
そこそこ厚みがあって、紙質も良い本で、同じシリーズと思われる物も含めて三冊ありました。
私、その中の一冊の背表紙を見て
「 えっ?」
って、声を出してしまいました。
二冊目と三冊目も、チェックしました。
そして、その三冊をテーブルに置きました。
彼は、お茶とお茶菓子の用意が出来て、テーブルで待っていました。
彼は、私が置いたそれ等の本を見て
「 あっ!」
っと、声をあげました。
「 これって・・・?」
「 う~んと・・・君が表紙の本・・・です」
「 レディースファッションの月刊誌なのに、なぜ幸志郎が???」
「 言ったでしょ、親友が君を雑誌で見つけたって、そいつ三浦和樹っていうんだけど、その和樹の姉さんが、アパレルメーカーでデザイナーやってて、この本を定期購読してるんだって、その本を和樹が帰省した時に見て、そこに君がたまたま載ってたんだよ。
それで、君の事を俺に知らせてくれて、その姉さんに聞いたら、この本の専属モデルって事が分かって、それで君が表紙になってる号だけ、送ってもらったんだよ。
海外赴任中、時々、この本を開いて、君の事を想ったりしてたんだ。
あれ?・・・三冊しかなかった?」
「 うん・・・三冊だけよ。
そうなんだ・・・幸志郎って少し・・・ストーカー入ってない?
怖いんだけど・・・」
「 なんでやねん!
好きな女の写真を見たらアカンのか???」
「 あはは!・・・冗談よ冗談!
本当は・・・嬉しいんだよ。
ありがとう」
って、言って椅子に座っている彼に近付いて、彼の両頬に両手を添えて上向きに向かせて・・・私から長く熱いキスをしました。
私から人にキスをしたのは初めてでした。
思いっきり、気持ちを込めて・・・彼もそれに応えてくれて・・・お茶が冷めてしまう程、長いキスを交わしました。
そして、彼の頭部に腕を回して、胸の谷間に押し付けるように抱き締めました。
「 えっ!お、おい・・・」
「 動かないで!
ずっと、こうしたかったの。
私も一目惚れだったのよ。
三年も遅れたね。
ごめんね。。。
やっと今日になって、幸志郎と付き合ってるって実感が湧いてきた・・・幸志郎・・・大好き」
「 お互い、一目惚れで、三年間も想いを引き摺って・・・再会は神様が引き合わせてくれたのかもね。
美幸、俺、もう好きを通り越してる。
こんな感情、初めての経験で・・・なんて言えば良いのか分からない・・・これが愛してるって事なのかな?」
「 ずるい、先にそれ言うんだ?
それだったら私だって愛してるもん」
「 あははっ!そんな所で競わなくても・・・。
でも、こうしてると君の香りが一際強くなって、身体の力が抜けてリラックス出来て、癒される気分だよ」
「 えっ!それって私が臭うって事?」
って、私、慌てて彼を抱き締めるのを止めて、彼を突き放していました。
「 臭うって・・・汗の匂いとかじゃ無くて・・・とても、いい香りなんだけど。。。
君と初めて出逢った時に、気付いたんだ。
さっきも香水とか着けてるの?って聞いたろ?
そういう香りが、君からするんだよ。
淡くだけど・・・でも、凄く魅力的な香りで・・・僕は・・・その香りがたまらなく好きなんだ。
この香りを嗅ぐと、凄く落ち着くんだ。
だから、君の部屋も、その香りに満ちていて・・・落ち着くし・・・君に包まれているような気持ちになれるから、凄く好きだよ」
と、少し照れ臭そうに彼は話ます。
「 私は・・・幸志郎の香りが好き・・・真夏の太陽の下で乾かした、洗いたてのシャツのような香り・・・」
「 えー、俺って、そんな匂いがするの?」
「 うん、ダンスを踊ってる時に・・・貴方の香りに気付いたの。
安心出来て、温かみを感じる香りで・・・私のお気に入り」
「 以前、どこかで読んだ医学的な記事に、人間は相手の匂いに無意識に反応してて、惹かれるのはその匂いが、遺伝子の中に記憶されいて、遺伝子的にその匂いを持つ相手を選ぶようになっているからだって、その匂いがフェロモンの正体だって書いてた。
ひょっとして・・・君と俺は、お互いに遺伝子レベルで惹かれあってるのかもしれないね」
「 それって・・・凄い・・・よね?」
「 たしか、その匂いにまったく気付かない人もいて、それはその人の遺伝子がその匂いを求めて無いからって書いてた。
だから、俺は君の香りに気付いたけど、気付かない人も居るって事なんだよ」
「 本当???」
「 いや、あくまでも何処かで読んだ記事の話だから、絶対とは言えないし、記事の全部を覚えてる訳じゃないけど・・・でも、そういう記事を読んだのは間違いないよ」
「それが正しいなら、貴方と私は、もう離れられないって事じゃない???」
私は、悪戯っぽく笑って、また彼をギュッ!て抱きしめてしまいました。
「 ・・・それ、スイッチ入る・・・」
彼は、そう言いながらも、私が解放するまで、そのまま私の胸に顔を埋めていました。
「 美幸って、何カップなの?」
って、おもむろに彼が聞きます。
「 え?そんなの普通、聞く???」
「 いや、気になって・・・」
「 巨乳が好き?」
「 いや、別に・・・モデル系が好みだから、大きさに拘りは無いよ」
「 もう・・・ブラはEカップ・・・けど、本当はDとEの中間ぐらい」
「 そうなのか、これぐらいがDとEの中間ぐらいなんだ」
って言う彼の姿が
「 胸に顔埋めて・・・おっかし~!」
「 えっ?」
「 幸志郎、顔で胸の大きさ測ってるみたい」
って、大爆笑してしまって、それまでの雰囲気がぶち壊しになってしまいました。
私、なかなか笑いが止まらなくて・・・腹筋が痛くなるし、涙まで浮かんで来て、今でも思い出すと笑えてしまうほど、ツボにハマりました。
何とか笑いが収まって
「 さ、さぁ、残りも片付けちゃいましょう!」
って、言うと
「 そんなに大爆笑しなくても・・・」
と、彼は愚痴っていました。
片付けがほとんど終わって、部屋を見渡していると、部屋の隅にキャスター付きの大きなスーツケースがあります。
「 あれは、押し入れに入れないの?」
って、私が聞くと
「 あっ!」
と、彼が思い付いたような声をあげて、そのスーツケースの蓋を開けました。
そして、そこから、行方不明だった私が表紙のファッション誌の一冊を出して
「 そうそう、移動中も見ようと思って、一冊だけここに入れたんだった」
って、言って、それを本棚の他の三冊と一緒に並べました。
けど、私は、それよりも開け放たれたスーツケースに目が行ってました。
なんと、その中は洗濯物が詰め込まれていたのです。
それも、かなり日数が経ってる感じで、流石に少し臭いました。
私、その中の一枚をつまみ上げて
「 幸志郎???」
って、彼に冷たい視線を向けてました。
彼は、バツの悪そうな顔で
「 あ~、向こう出る時、バタバタしてて、洗濯物が溜まってて、それ、とりあえず詰め込んだんだよね・・・」
「 それ、帰って来てから、開けてなかったんだ???」
「 いや、色々、忙しかったから・・・忘れてた」
「 ほう~・・・最もらしい言い訳ね」
って、私、呆れ顔になってたと思います。
洗濯は、近くのコインランドリーでする事にしていると彼が言うので、私の部屋に持って帰って洗濯する事にしました。
そして、もう夕方の17時近くになっていたので、彼の部屋を出て、私の部屋に向かう途中でスーパーに寄って、二人でお買い物をしました。
二人で買い物。
スーパーのカートを彼が押して、私が食材を選んで、カゴに入れて行きます。
時々、彼に好き嫌いが無いか、好きな物は何か等を聞いたりして・・・。
(新婚みたいに見えるかな?)
って、思いながら、それが嬉しくて幸せな気分に浸っていました。(つづく)
主に彼の衣類で、備え付けの収納棚があったので、普段着と仕事着とに分けて、日常で使い易いように工夫して・・・寝室の片付けは簡単に終わりました。
次に、リビングのダンボール箱に取り掛かろうとしたら
「 ちょっと休憩しようか、お茶入れるから、休んどいて」
って、彼がキッチンへ
「 私がやるわよ」
って、言ってキッチンへ向かおうとすると
「 休んどきなって、さっきから動きっぱなしだろ、俺に任せといて」
って、言うので、任せる事にしました。
リビングのテレビ台は、本棚が一緒になっているデザインです。
が、その棚には、一冊の本も並んでいません。
そのすぐ横に『 本』って大きく書かれたダンボール箱が置いてあります。
私、彼がお茶を入れる間に、これぐらいなら整理出来ると思って、そのダンボール箱を開封しました。
車の本にバイクの本、魚釣りの本、パソコンの本、等々があって、期待した怪しい本は出て来ません。
(なんだ・・・普通の本ばかりじゃない)
と、少し期待外れだと思っていたら
『 ピアッシング』
と、題された本を見つけました。
中を開くと、全裸の女性の写真でした。
でも、それは、ポルノ写真では無く、女性の身体の色々な部位にピアスが着けられている写真でした。
(これは・・・ボディーピアスの専門誌)
鼻や唇はもちろん、身体の至る所に入れたピアスの写真、それも女性の秘部も普通に有るし、男性の物もあります。
私、少し戸惑ったけど・・・その本を見ているうちに、芸術的にも美しいと思える物もあって・・・アクセサリーの究極形かも・・・って思ったりして、その本を持って彼の所へ
「 幸志郎・・・こういうの好きなの???」
って、テーブルにその本を置くと
「 えっ!・・・いや、それは人から貰った物で、自分で買ったんじゃないんだよ」
「 でも、必要だから捨てずに持ってるのよね?」
「 いや、なんか貴重な本らしくて」
「 でも、なぜその人は、幸志郎にこの本をくれたの?」
「 さ、さぁ・・・」
「 興味、あるんでしょう???」
「 ・・・い、イギリスに居る時、向こうで友達になった同僚が、あるバーに連れて行ってくれたんだけど、そこは・・・そのSMバーでね、店員さんは皆、そういう格好をして給仕して歩いてて、その中に、ボディーピアスをしてる女性が何人かいて、それが
凄く似合ってて綺麗だなって思って、その話をその同僚にしたら、暫くして、その本をくれたんだ」
「 やっぱり、興味あるんだ・・・」
「 いや、興味って程じゃ無いよ、ただ、その時は綺麗だなと思っただけだから」
「 ふ~ん・・・」
私は、その本を手に本棚に戻ると、そこに並べました。
「 そこに並べんの???」
「 駄目なの?」
「 人に堂々と見せれる物じゃないよね?」
「 滅多に客は来ないって、言ってたじゃない」
「 そりゃ、そうだけど」
「 ここで良いの!」
「 マジか?」
「 マジよ」
って、私は彼に冷ややかな流し目を送りながら言って、本の整理を再開しました。
ほとんどの本の整理が終わって、ダンボール箱の一番下になっている本を取り出しました。
そこそこ厚みがあって、紙質も良い本で、同じシリーズと思われる物も含めて三冊ありました。
私、その中の一冊の背表紙を見て
「 えっ?」
って、声を出してしまいました。
二冊目と三冊目も、チェックしました。
そして、その三冊をテーブルに置きました。
彼は、お茶とお茶菓子の用意が出来て、テーブルで待っていました。
彼は、私が置いたそれ等の本を見て
「 あっ!」
っと、声をあげました。
「 これって・・・?」
「 う~んと・・・君が表紙の本・・・です」
「 レディースファッションの月刊誌なのに、なぜ幸志郎が???」
「 言ったでしょ、親友が君を雑誌で見つけたって、そいつ三浦和樹っていうんだけど、その和樹の姉さんが、アパレルメーカーでデザイナーやってて、この本を定期購読してるんだって、その本を和樹が帰省した時に見て、そこに君がたまたま載ってたんだよ。
それで、君の事を俺に知らせてくれて、その姉さんに聞いたら、この本の専属モデルって事が分かって、それで君が表紙になってる号だけ、送ってもらったんだよ。
海外赴任中、時々、この本を開いて、君の事を想ったりしてたんだ。
あれ?・・・三冊しかなかった?」
「 うん・・・三冊だけよ。
そうなんだ・・・幸志郎って少し・・・ストーカー入ってない?
怖いんだけど・・・」
「 なんでやねん!
好きな女の写真を見たらアカンのか???」
「 あはは!・・・冗談よ冗談!
本当は・・・嬉しいんだよ。
ありがとう」
って、言って椅子に座っている彼に近付いて、彼の両頬に両手を添えて上向きに向かせて・・・私から長く熱いキスをしました。
私から人にキスをしたのは初めてでした。
思いっきり、気持ちを込めて・・・彼もそれに応えてくれて・・・お茶が冷めてしまう程、長いキスを交わしました。
そして、彼の頭部に腕を回して、胸の谷間に押し付けるように抱き締めました。
「 えっ!お、おい・・・」
「 動かないで!
ずっと、こうしたかったの。
私も一目惚れだったのよ。
三年も遅れたね。
ごめんね。。。
やっと今日になって、幸志郎と付き合ってるって実感が湧いてきた・・・幸志郎・・・大好き」
「 お互い、一目惚れで、三年間も想いを引き摺って・・・再会は神様が引き合わせてくれたのかもね。
美幸、俺、もう好きを通り越してる。
こんな感情、初めての経験で・・・なんて言えば良いのか分からない・・・これが愛してるって事なのかな?」
「 ずるい、先にそれ言うんだ?
それだったら私だって愛してるもん」
「 あははっ!そんな所で競わなくても・・・。
でも、こうしてると君の香りが一際強くなって、身体の力が抜けてリラックス出来て、癒される気分だよ」
「 えっ!それって私が臭うって事?」
って、私、慌てて彼を抱き締めるのを止めて、彼を突き放していました。
「 臭うって・・・汗の匂いとかじゃ無くて・・・とても、いい香りなんだけど。。。
君と初めて出逢った時に、気付いたんだ。
さっきも香水とか着けてるの?って聞いたろ?
そういう香りが、君からするんだよ。
淡くだけど・・・でも、凄く魅力的な香りで・・・僕は・・・その香りがたまらなく好きなんだ。
この香りを嗅ぐと、凄く落ち着くんだ。
だから、君の部屋も、その香りに満ちていて・・・落ち着くし・・・君に包まれているような気持ちになれるから、凄く好きだよ」
と、少し照れ臭そうに彼は話ます。
「 私は・・・幸志郎の香りが好き・・・真夏の太陽の下で乾かした、洗いたてのシャツのような香り・・・」
「 えー、俺って、そんな匂いがするの?」
「 うん、ダンスを踊ってる時に・・・貴方の香りに気付いたの。
安心出来て、温かみを感じる香りで・・・私のお気に入り」
「 以前、どこかで読んだ医学的な記事に、人間は相手の匂いに無意識に反応してて、惹かれるのはその匂いが、遺伝子の中に記憶されいて、遺伝子的にその匂いを持つ相手を選ぶようになっているからだって、その匂いがフェロモンの正体だって書いてた。
ひょっとして・・・君と俺は、お互いに遺伝子レベルで惹かれあってるのかもしれないね」
「 それって・・・凄い・・・よね?」
「 たしか、その匂いにまったく気付かない人もいて、それはその人の遺伝子がその匂いを求めて無いからって書いてた。
だから、俺は君の香りに気付いたけど、気付かない人も居るって事なんだよ」
「 本当???」
「 いや、あくまでも何処かで読んだ記事の話だから、絶対とは言えないし、記事の全部を覚えてる訳じゃないけど・・・でも、そういう記事を読んだのは間違いないよ」
「それが正しいなら、貴方と私は、もう離れられないって事じゃない???」
私は、悪戯っぽく笑って、また彼をギュッ!て抱きしめてしまいました。
「 ・・・それ、スイッチ入る・・・」
彼は、そう言いながらも、私が解放するまで、そのまま私の胸に顔を埋めていました。
「 美幸って、何カップなの?」
って、おもむろに彼が聞きます。
「 え?そんなの普通、聞く???」
「 いや、気になって・・・」
「 巨乳が好き?」
「 いや、別に・・・モデル系が好みだから、大きさに拘りは無いよ」
「 もう・・・ブラはEカップ・・・けど、本当はDとEの中間ぐらい」
「 そうなのか、これぐらいがDとEの中間ぐらいなんだ」
って言う彼の姿が
「 胸に顔埋めて・・・おっかし~!」
「 えっ?」
「 幸志郎、顔で胸の大きさ測ってるみたい」
って、大爆笑してしまって、それまでの雰囲気がぶち壊しになってしまいました。
私、なかなか笑いが止まらなくて・・・腹筋が痛くなるし、涙まで浮かんで来て、今でも思い出すと笑えてしまうほど、ツボにハマりました。
何とか笑いが収まって
「 さ、さぁ、残りも片付けちゃいましょう!」
って、言うと
「 そんなに大爆笑しなくても・・・」
と、彼は愚痴っていました。
片付けがほとんど終わって、部屋を見渡していると、部屋の隅にキャスター付きの大きなスーツケースがあります。
「 あれは、押し入れに入れないの?」
って、私が聞くと
「 あっ!」
と、彼が思い付いたような声をあげて、そのスーツケースの蓋を開けました。
そして、そこから、行方不明だった私が表紙のファッション誌の一冊を出して
「 そうそう、移動中も見ようと思って、一冊だけここに入れたんだった」
って、言って、それを本棚の他の三冊と一緒に並べました。
けど、私は、それよりも開け放たれたスーツケースに目が行ってました。
なんと、その中は洗濯物が詰め込まれていたのです。
それも、かなり日数が経ってる感じで、流石に少し臭いました。
私、その中の一枚をつまみ上げて
「 幸志郎???」
って、彼に冷たい視線を向けてました。
彼は、バツの悪そうな顔で
「 あ~、向こう出る時、バタバタしてて、洗濯物が溜まってて、それ、とりあえず詰め込んだんだよね・・・」
「 それ、帰って来てから、開けてなかったんだ???」
「 いや、色々、忙しかったから・・・忘れてた」
「 ほう~・・・最もらしい言い訳ね」
って、私、呆れ顔になってたと思います。
洗濯は、近くのコインランドリーでする事にしていると彼が言うので、私の部屋に持って帰って洗濯する事にしました。
そして、もう夕方の17時近くになっていたので、彼の部屋を出て、私の部屋に向かう途中でスーパーに寄って、二人でお買い物をしました。
二人で買い物。
スーパーのカートを彼が押して、私が食材を選んで、カゴに入れて行きます。
時々、彼に好き嫌いが無いか、好きな物は何か等を聞いたりして・・・。
(新婚みたいに見えるかな?)
って、思いながら、それが嬉しくて幸せな気分に浸っていました。(つづく)
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