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第三部(貴族学校入学編)
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※sideユウカ
「ユウカ嬢」
昼休みにジェイデンのところへ向かおうとしたら呼び止められた。名前がすぐに出てこないくらいのモブ。誰だっけ?
「……あ、バーンズ子爵令息。ごきげんよう」
「そんな他人行儀な挨拶はやめてくれ」
「えっと、何か私に?」
「あぁ、ダンスパーティーの日に僕のパートナーになってくれないかと思って」
「えっ……」
はいはい、やっぱり私に優しくされて落ちない男なんていないわよね。ヒロインだからすっごく顔が可愛いし、それに中身が私になったことでさらに頭も良くなってるし、所作も綺麗だし。
「でも、バーンズ子爵令息はメイジー嬢の婚約者なのに」
「メイジーなんてどうでもいいさ。君の方が素敵な女性だ」
メイジーくっそざまぁ!! あの女、私のことを貧乏令嬢だとか男に媚を売ってるとかって陰口叩いてたからムカついてたんだよね。同じ男爵令嬢のくせして、しかもブスで頭も私より悪いくせに。調子に乗ってるからこういうことになんのよ。
「ううん、メイジー嬢に悪いわ。私は婚約者のいないクラスメイトとパートナーを組むから、あなたはメイジー嬢とパートナーになってあげて?」
「君はなんて奥ゆかしいんだ……。分かったよ。でも是非、パーティーでは僕とも踊って欲しい」
「えぇ、もちろん」
そうそう、私って奥ゆかしいのよね。本当はセレストにパートナーを申し込みたいけど、そんなことはしないし。大体セレストだって本当はあの皇女じゃなくて私とパートナーになりたいはず。だって私とセレストは初恋同士で運命の相手なんだから。あんな女、お呼びじゃないのよね。アドリアーナでもないくせにしゃしゃり出てきて、ほんと邪魔。
何人かパートナーにって声を掛けてきた中から婚約者がいない男を選ばなくちゃ。誰が一番マシかなぁ? 顔でいったらブラウン男爵令息なんだけど、身分がいいのはライト伯爵令息よね。といってもたかが伯爵令息なんだけど。
私に相応しいのは最低でも侯爵令息じゃない? 本当はウィリアムか、ルーカスがいいんだけどなぁ。ウィリアムはアドリアーナなんかとパートナーだし、ルーカスに至ってはアドリアーナの侍女よ? はぁ? 意味分かんない。アドリアーナに脅されでもしたの? アドリアーナの侍女なんてアドリアーナの家のお金で学校に通ってるらしいじゃない。そんなのうち以下の貧乏ってことでしょ? なんでそんな女がルーカスのパートナーになれて、この私がクラスメイトのモブなんかと組まなきゃいけないわけ? 私がヒロインなのよ? 私のための世界なのよ!?
「絶対に私の方がいいに決まってるのに」
そうよ。私の方がいいに決まってる。私の方が可愛いし。ルーカスだって私と組みたいはず。だって私がヒロインなんだから。みんな私のことを好きになるんだから。
思い切ってルーカスにパートナーになって欲しいって言ってみよう。きっと喜んでくれるはず。
私はすぐに教室に戻って、ルーカスのそばへ行った。隣に座っているウィリアムも私を見てる。ごめんね、今日はあなたじゃなくてルーカスに用があるの。また今度話しましょうねという気持ちを込めてにっこりと微笑んだ。そしてルーカスに視線を戻す。
「あの、ルーカス様。少しいいかしら?」
「何か用事?」
「ここじゃ、ちょっと」
「ここで話せないようなことがあるほど、俺は君と関わってないけど?」
何それ、ちょっと冷たくない? まだ好感度が低いから? 確かにルーカスはお金にしか興味が無くて、利用価値の無いヒロインに最初は冷たく接するキャラだけど。
「じゃあ、ここで。私、今度のパーティーであなたのパートナーになりたいの」
そう言うと、クラスの女子が騒ついた。『あの子まだ知らないの?』という声が多く聞こえる。知ってるわよ、アドリアーナの侍女がルーカスのパートナーだってことくらい。でも見てみなさいよ。その侍女は自分のパートナーが取られそうだっていうのにこっちを見ることもしないわ。私には勝てないって分かってるんでしょ。だから私を見れないんでしょ。
「俺のパートナーはリリー嬢に決まってる」
「知っているけれど、でも、チャンスが欲しくて。私のことも考えてみて欲しいの」
不安げな顔を作る。男ってこういうの好きでしょ? 守ってあげたいって思うんじゃない? 素知らぬ顔でいる侍女なんかより、私の方がいいでしょう?
「ユウカ嬢」
昼休みにジェイデンのところへ向かおうとしたら呼び止められた。名前がすぐに出てこないくらいのモブ。誰だっけ?
「……あ、バーンズ子爵令息。ごきげんよう」
「そんな他人行儀な挨拶はやめてくれ」
「えっと、何か私に?」
「あぁ、ダンスパーティーの日に僕のパートナーになってくれないかと思って」
「えっ……」
はいはい、やっぱり私に優しくされて落ちない男なんていないわよね。ヒロインだからすっごく顔が可愛いし、それに中身が私になったことでさらに頭も良くなってるし、所作も綺麗だし。
「でも、バーンズ子爵令息はメイジー嬢の婚約者なのに」
「メイジーなんてどうでもいいさ。君の方が素敵な女性だ」
メイジーくっそざまぁ!! あの女、私のことを貧乏令嬢だとか男に媚を売ってるとかって陰口叩いてたからムカついてたんだよね。同じ男爵令嬢のくせして、しかもブスで頭も私より悪いくせに。調子に乗ってるからこういうことになんのよ。
「ううん、メイジー嬢に悪いわ。私は婚約者のいないクラスメイトとパートナーを組むから、あなたはメイジー嬢とパートナーになってあげて?」
「君はなんて奥ゆかしいんだ……。分かったよ。でも是非、パーティーでは僕とも踊って欲しい」
「えぇ、もちろん」
そうそう、私って奥ゆかしいのよね。本当はセレストにパートナーを申し込みたいけど、そんなことはしないし。大体セレストだって本当はあの皇女じゃなくて私とパートナーになりたいはず。だって私とセレストは初恋同士で運命の相手なんだから。あんな女、お呼びじゃないのよね。アドリアーナでもないくせにしゃしゃり出てきて、ほんと邪魔。
何人かパートナーにって声を掛けてきた中から婚約者がいない男を選ばなくちゃ。誰が一番マシかなぁ? 顔でいったらブラウン男爵令息なんだけど、身分がいいのはライト伯爵令息よね。といってもたかが伯爵令息なんだけど。
私に相応しいのは最低でも侯爵令息じゃない? 本当はウィリアムか、ルーカスがいいんだけどなぁ。ウィリアムはアドリアーナなんかとパートナーだし、ルーカスに至ってはアドリアーナの侍女よ? はぁ? 意味分かんない。アドリアーナに脅されでもしたの? アドリアーナの侍女なんてアドリアーナの家のお金で学校に通ってるらしいじゃない。そんなのうち以下の貧乏ってことでしょ? なんでそんな女がルーカスのパートナーになれて、この私がクラスメイトのモブなんかと組まなきゃいけないわけ? 私がヒロインなのよ? 私のための世界なのよ!?
「絶対に私の方がいいに決まってるのに」
そうよ。私の方がいいに決まってる。私の方が可愛いし。ルーカスだって私と組みたいはず。だって私がヒロインなんだから。みんな私のことを好きになるんだから。
思い切ってルーカスにパートナーになって欲しいって言ってみよう。きっと喜んでくれるはず。
私はすぐに教室に戻って、ルーカスのそばへ行った。隣に座っているウィリアムも私を見てる。ごめんね、今日はあなたじゃなくてルーカスに用があるの。また今度話しましょうねという気持ちを込めてにっこりと微笑んだ。そしてルーカスに視線を戻す。
「あの、ルーカス様。少しいいかしら?」
「何か用事?」
「ここじゃ、ちょっと」
「ここで話せないようなことがあるほど、俺は君と関わってないけど?」
何それ、ちょっと冷たくない? まだ好感度が低いから? 確かにルーカスはお金にしか興味が無くて、利用価値の無いヒロインに最初は冷たく接するキャラだけど。
「じゃあ、ここで。私、今度のパーティーであなたのパートナーになりたいの」
そう言うと、クラスの女子が騒ついた。『あの子まだ知らないの?』という声が多く聞こえる。知ってるわよ、アドリアーナの侍女がルーカスのパートナーだってことくらい。でも見てみなさいよ。その侍女は自分のパートナーが取られそうだっていうのにこっちを見ることもしないわ。私には勝てないって分かってるんでしょ。だから私を見れないんでしょ。
「俺のパートナーはリリー嬢に決まってる」
「知っているけれど、でも、チャンスが欲しくて。私のことも考えてみて欲しいの」
不安げな顔を作る。男ってこういうの好きでしょ? 守ってあげたいって思うんじゃない? 素知らぬ顔でいる侍女なんかより、私の方がいいでしょう?
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