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第三部(貴族学校入学編)
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そんなこんなで週末の休息日。ノヴァック公爵邸へ向かう馬車にはリリーとウィリアムも同乗している。ウィリアムまで一緒なのは当然リリーとの婚約についてご両親に話すためだ。もちろん事前に手紙で伝えているのだが……胃が痛む。
「なんでアニーが緊張してるんだよ」
「むしろなぜあなた達は緊張していないのよ」
「相手がリリーで反対される理由はないし、緊張する理由もない」
あっけらかんとしたウィリアムといつも通りのすました顔のリリー。
「私は別にウィリアム様と結婚したい訳ではなく、ただアドリアーナ様の侍女でいるのに好条件だったいうだけなので緊張する必要がありません。反対されたならそれはそれでいいですし。でも、ウィリアム様と結婚したら、将来はアドリアーナ様が私のお義姉様になるということで……それはとても魅力的だなと……」
途中から俯いてモゴモゴと口の中で言っていてよく聞き取れなかったが、とにかく二人とも反対されないだろうし、反対されたらまぁいっか。みたいな軽い気持ちらしい。仮にも公爵令息なのにそれでいいの?
「俺とリリーが婚約したら、学内でリリーの立場は良くなるし、そうなるよう俺も動くから。アニーは何も心配しなくていい」
「だけど、何だかこれでいいのか……私が言うことじゃないのかもしれないけど」
「俺は元々リリーのことを気に入ってるぞ? そうじゃなきゃこんな提案はしない。任せろ、不自由ない生活は保証する」
「有り難いです。お金に困らないというだけでも私は十分です。私にとってウィリアム様以上の嫁ぎ先はないでしょう」
「あなた達がいいのなら、私は何も言えないけれど」
「よく考えりゃ俺達って結構良いパートナーになれそうだよな?」
「そうですね。ライバルだと思っていましたが、よく考えてみれば同類でした」
「何言ってるの?」
「こっちの話」
ウィリアムが『な』と言い、リリーが『はい』と頷く。二人にしか分からない会話のようだ。
そういえば以前から、この二人はよく会話していたし、私に見せるのとは違う顔をリリーに見せていたようにも思う。つんとすました顔をして、ボソボソと言い合っている様は仲良しと言えなくもないのかもしれない。この二人ならではのコミュニケーションだったのだろうか。
それ以降全く喋らなくなった二人を眺めながら馬車に揺られ、公爵邸に到着した。馬車から降りると目に飛び込んでくるアレクの姿。私は途端に嬉しくなって早足でアレクのもとへ向かった。
「アレク様!」
「久しぶりだな、アニー。学校はどうだ? 困ったことはないか?」
「リリーもウィリアムもいてくれますから、大丈夫ですわ。アレク様こそお怪我などされてませんか?」
「俺は何も問題ない。さぁ、中へ入ろう。父上も母上も待っている」
「はい!」
「ウィリアムとリリーも、行こう。何をしてる。今日はお前達が主役だろう」
「脇役の気持ちにさせたのは兄上達なんだけど」
「久しぶりに会えたからな。許せ」
「……たったの二週間だろ」
ウィリアムのぼやきは聞こえなかったことにした。
公爵邸のサロンに向かい、お義父様とお義母様にご挨拶する。今まではそばに控えていただけのリリーも、自己紹介とともに淑女の礼をとった。
「アドリアーナ、別に私達はリリーを取って食いやしないわよ? 反対する気も無いわ」
「ハロルドがアドリアーナの侍女にと選んだ令嬢だからな。どんな娘さんかも知ってるし、そんな不安な顔をするな」
お二人の優しいお言葉にホッと一息つくと、隣に座ったアレクが紅茶と菓子を勧めてくれる。その紅茶を飲もうとしたその時、お義母様がまた口を開いた。
「どこぞの厚かましい男爵令嬢じゃあるまいし、リリーなら私達は大歓迎よ」
「ぅぐッ!」
「大丈夫か、アニー」
背中を優しくさすってくれるアレクに咽せながら礼を言う。厚かましい男爵令嬢って、ユウカ嬢のことよね?
どうして、お義母様が知っているのかしら?
「なんでアニーが緊張してるんだよ」
「むしろなぜあなた達は緊張していないのよ」
「相手がリリーで反対される理由はないし、緊張する理由もない」
あっけらかんとしたウィリアムといつも通りのすました顔のリリー。
「私は別にウィリアム様と結婚したい訳ではなく、ただアドリアーナ様の侍女でいるのに好条件だったいうだけなので緊張する必要がありません。反対されたならそれはそれでいいですし。でも、ウィリアム様と結婚したら、将来はアドリアーナ様が私のお義姉様になるということで……それはとても魅力的だなと……」
途中から俯いてモゴモゴと口の中で言っていてよく聞き取れなかったが、とにかく二人とも反対されないだろうし、反対されたらまぁいっか。みたいな軽い気持ちらしい。仮にも公爵令息なのにそれでいいの?
「俺とリリーが婚約したら、学内でリリーの立場は良くなるし、そうなるよう俺も動くから。アニーは何も心配しなくていい」
「だけど、何だかこれでいいのか……私が言うことじゃないのかもしれないけど」
「俺は元々リリーのことを気に入ってるぞ? そうじゃなきゃこんな提案はしない。任せろ、不自由ない生活は保証する」
「有り難いです。お金に困らないというだけでも私は十分です。私にとってウィリアム様以上の嫁ぎ先はないでしょう」
「あなた達がいいのなら、私は何も言えないけれど」
「よく考えりゃ俺達って結構良いパートナーになれそうだよな?」
「そうですね。ライバルだと思っていましたが、よく考えてみれば同類でした」
「何言ってるの?」
「こっちの話」
ウィリアムが『な』と言い、リリーが『はい』と頷く。二人にしか分からない会話のようだ。
そういえば以前から、この二人はよく会話していたし、私に見せるのとは違う顔をリリーに見せていたようにも思う。つんとすました顔をして、ボソボソと言い合っている様は仲良しと言えなくもないのかもしれない。この二人ならではのコミュニケーションだったのだろうか。
それ以降全く喋らなくなった二人を眺めながら馬車に揺られ、公爵邸に到着した。馬車から降りると目に飛び込んでくるアレクの姿。私は途端に嬉しくなって早足でアレクのもとへ向かった。
「アレク様!」
「久しぶりだな、アニー。学校はどうだ? 困ったことはないか?」
「リリーもウィリアムもいてくれますから、大丈夫ですわ。アレク様こそお怪我などされてませんか?」
「俺は何も問題ない。さぁ、中へ入ろう。父上も母上も待っている」
「はい!」
「ウィリアムとリリーも、行こう。何をしてる。今日はお前達が主役だろう」
「脇役の気持ちにさせたのは兄上達なんだけど」
「久しぶりに会えたからな。許せ」
「……たったの二週間だろ」
ウィリアムのぼやきは聞こえなかったことにした。
公爵邸のサロンに向かい、お義父様とお義母様にご挨拶する。今まではそばに控えていただけのリリーも、自己紹介とともに淑女の礼をとった。
「アドリアーナ、別に私達はリリーを取って食いやしないわよ? 反対する気も無いわ」
「ハロルドがアドリアーナの侍女にと選んだ令嬢だからな。どんな娘さんかも知ってるし、そんな不安な顔をするな」
お二人の優しいお言葉にホッと一息つくと、隣に座ったアレクが紅茶と菓子を勧めてくれる。その紅茶を飲もうとしたその時、お義母様がまた口を開いた。
「どこぞの厚かましい男爵令嬢じゃあるまいし、リリーなら私達は大歓迎よ」
「ぅぐッ!」
「大丈夫か、アニー」
背中を優しくさすってくれるアレクに咽せながら礼を言う。厚かましい男爵令嬢って、ユウカ嬢のことよね?
どうして、お義母様が知っているのかしら?
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