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第三部(貴族学校入学編)
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入学式。二度目である。
前回の人生では、入学試験がトップだった者がする新入生代表挨拶を任されたのがセレスト第三王子殿下で、その婚約者だった私は鼻高々だった。別に私が優秀なわけじゃないのに。在校生の令嬢の中でスタングロム侯爵家が一番力のある家門であることも私が増長する要因の一つだった。そもそも庶子のくせに。
とにかく今回の人生では穏やかに、波風を立てず、変に目立たない生徒として過ごす。しかしながら将来ノヴァック公爵夫人になることを考えると、優秀に、華やかに、良い意味で目立ちたいと思う。
そう。良い塩梅で頑張ろう。
そんな目標を掲げる私が選んだ本日の戦闘服(ドレス)は、紺と赤を基調としたものである。前回の人生では真っ赤なドレスで入学式に挑んだ。
前回はただ単に、私に似合う色が赤だと思っていたから。今回は、アレクの瞳の色と私の瞳の色を意識して仕立てた一張羅だからである。
ドレスも宝石もアレクの瞳の色であるルビーのような紫がかった赤色を使った物が多い。前回の人生では紅色を好んでいたので同じ赤でも印象は違う……はず。そう思いたい。過激令嬢にはならないぞ。
そんなことをつらつらと考えていると新入生代表が呼ばれた。『セレスト・マウリス・ヘンリー・ヒュリゴ殿下』と長々とそして恭しく。婚約者であったにも関わらず、フルネームなんて忘れてたなぁとぼんやり思う。
今回の人生では、セレスト第三王子殿下とはそれぞれの姉と兄が夫婦というだけの関係なので、面識があるわけでもなく、今後も関わっていきたいわけでもない。その程度の存在だ。
私はとにかく、この夏にアレクと無事に婚約して、学校を優秀な成績で卒業して、すぐにアレクと結婚する。それだけ叶えば学校生活には他に何も望まない。
「アドリアーナ様、式が終わりましたので教室へ移動しましょう」
ぼーっと考え事している内に入学式は終わったらしい。リリーと一緒にホールから出て教室までの道のりを歩いている時だった。
「キャ!」
という悲鳴と共に、ドンッと肩に衝撃が走った。そして目の前で倒れる女子生徒。
……男爵令嬢だ。セレスト第三王子殿下の想い人で、私が虐げていた、あの男爵令嬢の姿がそこにあった。
「大丈夫ですか!?」
最初に動いたのは私の身を案じたリリーだった。
「……えぇ、問題ないわ」
「まさかぶつかってくるとは思わず。お守りできなくて申し訳ありません」
「大丈夫よ、気にしないで。あなたは大丈夫かしら?」
倒れて尻もちをついた状態のままでいる男爵令嬢に声を掛ける。名前が全く思い出せないので『あなた』と言う他ない。
足を止めて様子を窺っている生徒が、私とリリーと男爵令嬢の3人の周りを取り囲むように少しずつ増えてきている。男爵令嬢は何も言わず、俯いて座り込んだままである。
「どうしたんだ」
生徒が多くいるこの場でもよく通る声が響き、私達を取り囲んでいた人垣が割れた合間を縫って現れたのはセレスト第三王子殿下だった。
「アドリアーナ嬢と……君は、まさか……」
男爵令嬢を見て驚いたセレスト第三王子殿下の顔を見て、既視感を覚える。既視感というより、この出来事がまさに前回の人生で起こったことと同じであると今更になって気付く。
そうだ。前回の入学式のあとも男爵令嬢とぶつかって、倒れて座り込んだままの彼女に私は怒鳴ったのだ。『この私にぶつかっておいて謝罪の言葉も無いの!?』と大声で責め立てた。そこにセレスト第三王子殿下が現れて、怪我をしている女性を責めるなんてと非難されて私の立場が悪くなったのだ。
……ちょっと待って。まずいわ。今回もそうなるのかもしれないわ。
前回の人生では、入学試験がトップだった者がする新入生代表挨拶を任されたのがセレスト第三王子殿下で、その婚約者だった私は鼻高々だった。別に私が優秀なわけじゃないのに。在校生の令嬢の中でスタングロム侯爵家が一番力のある家門であることも私が増長する要因の一つだった。そもそも庶子のくせに。
とにかく今回の人生では穏やかに、波風を立てず、変に目立たない生徒として過ごす。しかしながら将来ノヴァック公爵夫人になることを考えると、優秀に、華やかに、良い意味で目立ちたいと思う。
そう。良い塩梅で頑張ろう。
そんな目標を掲げる私が選んだ本日の戦闘服(ドレス)は、紺と赤を基調としたものである。前回の人生では真っ赤なドレスで入学式に挑んだ。
前回はただ単に、私に似合う色が赤だと思っていたから。今回は、アレクの瞳の色と私の瞳の色を意識して仕立てた一張羅だからである。
ドレスも宝石もアレクの瞳の色であるルビーのような紫がかった赤色を使った物が多い。前回の人生では紅色を好んでいたので同じ赤でも印象は違う……はず。そう思いたい。過激令嬢にはならないぞ。
そんなことをつらつらと考えていると新入生代表が呼ばれた。『セレスト・マウリス・ヘンリー・ヒュリゴ殿下』と長々とそして恭しく。婚約者であったにも関わらず、フルネームなんて忘れてたなぁとぼんやり思う。
今回の人生では、セレスト第三王子殿下とはそれぞれの姉と兄が夫婦というだけの関係なので、面識があるわけでもなく、今後も関わっていきたいわけでもない。その程度の存在だ。
私はとにかく、この夏にアレクと無事に婚約して、学校を優秀な成績で卒業して、すぐにアレクと結婚する。それだけ叶えば学校生活には他に何も望まない。
「アドリアーナ様、式が終わりましたので教室へ移動しましょう」
ぼーっと考え事している内に入学式は終わったらしい。リリーと一緒にホールから出て教室までの道のりを歩いている時だった。
「キャ!」
という悲鳴と共に、ドンッと肩に衝撃が走った。そして目の前で倒れる女子生徒。
……男爵令嬢だ。セレスト第三王子殿下の想い人で、私が虐げていた、あの男爵令嬢の姿がそこにあった。
「大丈夫ですか!?」
最初に動いたのは私の身を案じたリリーだった。
「……えぇ、問題ないわ」
「まさかぶつかってくるとは思わず。お守りできなくて申し訳ありません」
「大丈夫よ、気にしないで。あなたは大丈夫かしら?」
倒れて尻もちをついた状態のままでいる男爵令嬢に声を掛ける。名前が全く思い出せないので『あなた』と言う他ない。
足を止めて様子を窺っている生徒が、私とリリーと男爵令嬢の3人の周りを取り囲むように少しずつ増えてきている。男爵令嬢は何も言わず、俯いて座り込んだままである。
「どうしたんだ」
生徒が多くいるこの場でもよく通る声が響き、私達を取り囲んでいた人垣が割れた合間を縫って現れたのはセレスト第三王子殿下だった。
「アドリアーナ嬢と……君は、まさか……」
男爵令嬢を見て驚いたセレスト第三王子殿下の顔を見て、既視感を覚える。既視感というより、この出来事がまさに前回の人生で起こったことと同じであると今更になって気付く。
そうだ。前回の入学式のあとも男爵令嬢とぶつかって、倒れて座り込んだままの彼女に私は怒鳴ったのだ。『この私にぶつかっておいて謝罪の言葉も無いの!?』と大声で責め立てた。そこにセレスト第三王子殿下が現れて、怪我をしている女性を責めるなんてと非難されて私の立場が悪くなったのだ。
……ちょっと待って。まずいわ。今回もそうなるのかもしれないわ。
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