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幕間
とある公爵夫人の夢
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「なんですって!?」
雷に打たれたかのような衝撃が走り、思わず大きな声を出してしまった。
「……ごめんなさい、もう一度言ってくれるかしら?」
「スタングロム侯爵家のアドリアーナ嬢と結婚したいと思っておりますと父上に報告したところ、会わせるようにと言われまして」
なんてこと。聞き間違いじゃなかったみたい。愛してやまない夫に瓜二つの可愛い息子だけれど、どうやら令嬢受けは悪いようで、優良物件にも関わらず浮いた話が全く無いというところまで似てしまって、どうしましょうと思っていたら。なんと自分で見つけてきたようだ。
「アドリアーナ嬢を招待する理由など私には思い浮かばないので、母上にアドバイスをいただけたらと」
「分かったわ。考えてみるわね」
にっこり笑って返事をする。これは夫と打ち合わせが必要な案件ね。
どうやらアドリアーナ嬢は、次男のウィリアムと同い年らしく、最近ダンスのレッスンを始めたらしいという情報だ。
そのダンスレッスンの教師をしている夫人に声を掛けて、アドリアーナ嬢とウィリアムにペアを組ませ、今後は公爵邸でレッスンをさせようということになった。
定期的に公爵邸までアドリアーナ嬢が来てくれることになったら、アレキサンダーと接する機会を増やしてあげられるし、何より私と仲良くしてくれるかもしれないし、それに将来嫁いでくる公爵邸に慣れられる。
夫と一緒に企んだ計画は完璧である。全力で外堀から埋めていくわよ。
とまぁそんなこんなで始まった関係だったのだけれど、実際に会ったアドリアーナ嬢は、外堀を埋めてくださるんですか!? 私も手伝います! というくらいの勢いでアレキサンダーに一直線。10年も待たせたら逃げられちゃうんじゃ? という私達の心配なんて何のその。めちゃくちゃ押せ押せタイプの女の子だった。
かつての私も、そんな感じで夫を捕まえたなぁと思うと懐かしく、なんだかすぐにアドリアーナ嬢を好きになってしまって、10年近い付き合いになる今では義理の親子だなんて感じないくらいに仲良しだ。
「もうすぐアドリアーナも貴族学校に入っちゃうのね。寂しくなるわ」
「私も週に一度はお義母様とお会いできるのがすっごく楽しかったので寂しいです」
「月に一度はいらっしゃいね」
「えぇ。そうします」
「ウィリアムのことも、よろしくね?」
「はい! 私が守りますわ!」
「うるせーよ。女に守られなくとも大丈夫だっつの」
アドリアーナとウィリアムと私の3人でお茶をすることもいつもの事となっていた。毎週のようにダンスのレッスンを受けては、3人でお茶をしてたくさん話した。アレキサンダーが帰宅するまではアドリアーナを帰すわけにいかず、というよりアドリアーナ自身もアレキサンダーに会わずして帰る気などなく、そのまま夕食も一緒に食べて、アレキサンダーを待つのが当たり前になった。
おかげで当のアレキサンダーよりウィリアムとの方が砕けた仲になり、まるでアドリアーナは姉のように接している。
アレキサンダーがかなりヤキモキしていることも、ウィリアムが複雑な思いを抱いていることも、私は気付かない振り。息子達は弁えていると分かっているしね。
「ウィリアム。あなたね、そんな天使みたいな顔をしていつもツンツンツンツン、そんなことをしても余計に可愛いってことを自覚なさい」
「俺が可愛い顔なことは分かってんだよ。お前より100倍可愛いわ」
「その態度だったらご令嬢方からは引かれるわね。大丈夫そう」
「うるせーっての」
ウィリアムとアドリアーナの軽口を聞きながら、ウィリアムがこんな風に接するのはアドリアーナだけなのよねぇ……と気が遠くなる。
他の令嬢にはものすごく冷たいのだ。氷の貴公子とかって呼ばれそうなくらい。学校でアドリアーナをアニーなんて呼んだりしないかしら。特別扱いだってアドリアーナが虐められたり……やだ、反撃して火に油を注ぎそう。
さっさとアレキサンダーと婚約して、婚約者の弟だから仲が良いってことに……いえ、弟まで誑し込んでる女だとか言われそう。
大丈夫かしら。アドリアーナの学校生活が心配になってきたわ……。
とにかく、早く婚約して、成人したらすぐにでも結婚して、アドリアーナがこの邸で一緒に住むようになること。思い描くだけで楽しそう。
何事もなくそうなって欲しい。
これが今の私の夢。
雷に打たれたかのような衝撃が走り、思わず大きな声を出してしまった。
「……ごめんなさい、もう一度言ってくれるかしら?」
「スタングロム侯爵家のアドリアーナ嬢と結婚したいと思っておりますと父上に報告したところ、会わせるようにと言われまして」
なんてこと。聞き間違いじゃなかったみたい。愛してやまない夫に瓜二つの可愛い息子だけれど、どうやら令嬢受けは悪いようで、優良物件にも関わらず浮いた話が全く無いというところまで似てしまって、どうしましょうと思っていたら。なんと自分で見つけてきたようだ。
「アドリアーナ嬢を招待する理由など私には思い浮かばないので、母上にアドバイスをいただけたらと」
「分かったわ。考えてみるわね」
にっこり笑って返事をする。これは夫と打ち合わせが必要な案件ね。
どうやらアドリアーナ嬢は、次男のウィリアムと同い年らしく、最近ダンスのレッスンを始めたらしいという情報だ。
そのダンスレッスンの教師をしている夫人に声を掛けて、アドリアーナ嬢とウィリアムにペアを組ませ、今後は公爵邸でレッスンをさせようということになった。
定期的に公爵邸までアドリアーナ嬢が来てくれることになったら、アレキサンダーと接する機会を増やしてあげられるし、何より私と仲良くしてくれるかもしれないし、それに将来嫁いでくる公爵邸に慣れられる。
夫と一緒に企んだ計画は完璧である。全力で外堀から埋めていくわよ。
とまぁそんなこんなで始まった関係だったのだけれど、実際に会ったアドリアーナ嬢は、外堀を埋めてくださるんですか!? 私も手伝います! というくらいの勢いでアレキサンダーに一直線。10年も待たせたら逃げられちゃうんじゃ? という私達の心配なんて何のその。めちゃくちゃ押せ押せタイプの女の子だった。
かつての私も、そんな感じで夫を捕まえたなぁと思うと懐かしく、なんだかすぐにアドリアーナ嬢を好きになってしまって、10年近い付き合いになる今では義理の親子だなんて感じないくらいに仲良しだ。
「もうすぐアドリアーナも貴族学校に入っちゃうのね。寂しくなるわ」
「私も週に一度はお義母様とお会いできるのがすっごく楽しかったので寂しいです」
「月に一度はいらっしゃいね」
「えぇ。そうします」
「ウィリアムのことも、よろしくね?」
「はい! 私が守りますわ!」
「うるせーよ。女に守られなくとも大丈夫だっつの」
アドリアーナとウィリアムと私の3人でお茶をすることもいつもの事となっていた。毎週のようにダンスのレッスンを受けては、3人でお茶をしてたくさん話した。アレキサンダーが帰宅するまではアドリアーナを帰すわけにいかず、というよりアドリアーナ自身もアレキサンダーに会わずして帰る気などなく、そのまま夕食も一緒に食べて、アレキサンダーを待つのが当たり前になった。
おかげで当のアレキサンダーよりウィリアムとの方が砕けた仲になり、まるでアドリアーナは姉のように接している。
アレキサンダーがかなりヤキモキしていることも、ウィリアムが複雑な思いを抱いていることも、私は気付かない振り。息子達は弁えていると分かっているしね。
「ウィリアム。あなたね、そんな天使みたいな顔をしていつもツンツンツンツン、そんなことをしても余計に可愛いってことを自覚なさい」
「俺が可愛い顔なことは分かってんだよ。お前より100倍可愛いわ」
「その態度だったらご令嬢方からは引かれるわね。大丈夫そう」
「うるせーっての」
ウィリアムとアドリアーナの軽口を聞きながら、ウィリアムがこんな風に接するのはアドリアーナだけなのよねぇ……と気が遠くなる。
他の令嬢にはものすごく冷たいのだ。氷の貴公子とかって呼ばれそうなくらい。学校でアドリアーナをアニーなんて呼んだりしないかしら。特別扱いだってアドリアーナが虐められたり……やだ、反撃して火に油を注ぎそう。
さっさとアレキサンダーと婚約して、婚約者の弟だから仲が良いってことに……いえ、弟まで誑し込んでる女だとか言われそう。
大丈夫かしら。アドリアーナの学校生活が心配になってきたわ……。
とにかく、早く婚約して、成人したらすぐにでも結婚して、アドリアーナがこの邸で一緒に住むようになること。思い描くだけで楽しそう。
何事もなくそうなって欲しい。
これが今の私の夢。
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