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第二部(アレク編)
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※sideアレク
茶会当日は、本来ならばオスカー殿と訓練をする日だった。1日分、アニーと出会う機会を損したことはかなり惜しい。アズール殿下の専属騎士になればこういうことが増えるのだ。気が進まない……。
アズール殿下とオーキッド殿下の後ろに立ち、その身をお守りしながら、茶会の様子を窺う。
先日言っていた通り、フォーサイス公爵令嬢とモンティアナ嬢にしか興味はないようで、他の令嬢とは軽く話すだけで席を移動している。オーキッド殿下に至っては微笑んでいるだけに近い。
ようやく件の二人のいる席に着くと、ここで初めてお茶をメイドに頼んでいた。しっかり話をするつもりのようだ。
アズール殿下がフォーサイス公爵令嬢と、オーキッド殿下がモンティアナ嬢と話していると、オーキッド殿下から私に対して話が振られ、私がスタングロム侯爵家の方々と面識がある旨などをお話しした。
「アレキサンダーとモンティアナ嬢はよく話すような仲なのかな?」
「よく話す……というほどでは。アレキサンダー卿がお越しになった日には夕食をご一緒するので、皆で話す際に私も参加するというくらいでしょうか」
「夕食!?」
モンティアナ嬢の言葉に驚いたオーキッド殿下が勢いよくこちらを振り返る。なかなかリラックスしてお話をされているようだ。
「妹君のご厚意で、訓練後に夕食をいただいております」
「アレキサンダー卿のために妹が毎週手料理を作っているので皆楽しみにしているのです」
「私のため!?」
あれは俺のためにしてくれていたのか!? てっきり、普段から手料理を作っていて、俺はついでに誘ってくれているものだと。
「えっ、違うのですか?」
「アドリアーナ嬢が料理を好んでしておられるのかと」
「ですが、アレキサンダー卿がいらっしゃる日のために練習をして、当日振る舞ってくれているので、アレキサンダー卿のためだと思いますよ?」
わざわざ練習までして、俺が行く日に合わせて振る舞ってくれていたなんて。
「私の、ため……」
嬉しい。もしやアニーも再び俺と、と思ってくれているのだろうか? いやいや、前の人生では出来なかった料理を覚えて、俺に食べさせるという叶わなかった行為をしてみているだけかもしれない。
どうしても期待してしまう自分をなんとか落ち着ける。だけど、アニーと過ごした日々は、本当に幸せだったから。アニーもそう思っていてくれたらと、願う自分は止められない。
茶会の席に王妃陛下がお越しになられ、両殿下は退席した。王妃陛下とオーキッド殿下があまり接することの無いようにとのアズール殿下の配慮なのだが、オーキッド殿下は王妃陛下に対しても終始微笑んでいられる胆力のあるお方なので、それはあまり必要はないかと思われる。
「兄さん、私はスタングロム侯爵令嬢と婚約してもいいかな?」
「あぁ、僕はフォーサイス公爵令嬢と、と思っていた」
「じゃあ、ちょうどよかったね。アレキサンダーも、護衛ありがとう。楽しかったよ」
「光栄です」
「それじゃあね」
去って行くオーキッド殿下の背を眺めながら、アズール殿下が呟いた言葉がその場に切実に響いた。
「僕も、恋にうつつを抜かしてみたい」
誰も、何も言えなかった。
茶会当日は、本来ならばオスカー殿と訓練をする日だった。1日分、アニーと出会う機会を損したことはかなり惜しい。アズール殿下の専属騎士になればこういうことが増えるのだ。気が進まない……。
アズール殿下とオーキッド殿下の後ろに立ち、その身をお守りしながら、茶会の様子を窺う。
先日言っていた通り、フォーサイス公爵令嬢とモンティアナ嬢にしか興味はないようで、他の令嬢とは軽く話すだけで席を移動している。オーキッド殿下に至っては微笑んでいるだけに近い。
ようやく件の二人のいる席に着くと、ここで初めてお茶をメイドに頼んでいた。しっかり話をするつもりのようだ。
アズール殿下がフォーサイス公爵令嬢と、オーキッド殿下がモンティアナ嬢と話していると、オーキッド殿下から私に対して話が振られ、私がスタングロム侯爵家の方々と面識がある旨などをお話しした。
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「よく話す……というほどでは。アレキサンダー卿がお越しになった日には夕食をご一緒するので、皆で話す際に私も参加するというくらいでしょうか」
「夕食!?」
モンティアナ嬢の言葉に驚いたオーキッド殿下が勢いよくこちらを振り返る。なかなかリラックスしてお話をされているようだ。
「妹君のご厚意で、訓練後に夕食をいただいております」
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「私のため!?」
あれは俺のためにしてくれていたのか!? てっきり、普段から手料理を作っていて、俺はついでに誘ってくれているものだと。
「えっ、違うのですか?」
「アドリアーナ嬢が料理を好んでしておられるのかと」
「ですが、アレキサンダー卿がいらっしゃる日のために練習をして、当日振る舞ってくれているので、アレキサンダー卿のためだと思いますよ?」
わざわざ練習までして、俺が行く日に合わせて振る舞ってくれていたなんて。
「私の、ため……」
嬉しい。もしやアニーも再び俺と、と思ってくれているのだろうか? いやいや、前の人生では出来なかった料理を覚えて、俺に食べさせるという叶わなかった行為をしてみているだけかもしれない。
どうしても期待してしまう自分をなんとか落ち着ける。だけど、アニーと過ごした日々は、本当に幸せだったから。アニーもそう思っていてくれたらと、願う自分は止められない。
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「あぁ、僕はフォーサイス公爵令嬢と、と思っていた」
「じゃあ、ちょうどよかったね。アレキサンダーも、護衛ありがとう。楽しかったよ」
「光栄です」
「それじゃあね」
去って行くオーキッド殿下の背を眺めながら、アズール殿下が呟いた言葉がその場に切実に響いた。
「僕も、恋にうつつを抜かしてみたい」
誰も、何も言えなかった。
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